女の子を自分好みに変更したら寿命が延びるって本当ですか?〜寿命2年の男は能力『編集者』を使って助かる道を探す〜

トリノ

第1話筋肉質の神と出会って告げられたのは……

 

 今までの人生の中で、


「この性格がなければこいつ最高なのに」

「貧乳なのがなぁ」

「顔はイケメンなのに身長がなぁ」


 などなど……

 ここが違えばもっと好きなのにと思ったことはないだろうか。

 俺は無論ある。


 小学校のころ好きだった女の子は、男勝りな性格がなければもっと好きだったろうし、中学のころ憧れた先輩は、当時俺よりも10センチは高い身長に圧倒されていた。


 と、そんな感じで俺は今までにこう言った理由で恋を諦めてきた。

 今それはお前が妥協すればいいじゃないかと思った人もいるだろうが、別に俺は選りすぐっているつもりはない。


 無論その相手のことは好きだったし、付き合いたいとも思っていた。

 ……そうだよ。俺がその子たちと付き合ってないのは俺がへたれなだけだよ。悪いか!!


 ともあれ、そこがもし変えれるとしたらおそらく俺は躊躇なく変えていたと思う。

 そして間違いなく告白して付き合っていたと思う。


 ではなぜ俺がいきなりこんなことを語っているかというと、


「新庄 明。君に『編集者エディッター』の能力を与えよう」


 今俺の目の前に突如現れた自称神によってその能力を与えられようとしているからだ。


「『編集者』……?いや、それ以前にあなたは誰ですか?不審者ですか?通報しましょうか?」


「ふむ、君は人の話を聞くということができないのか?だが良いであろう。もう一度名乗ってやる。私はこの日本という国で恋愛を司る神として君臨するエルディである。君を助けるためにここに来た」


 半裸の筋肉質の男が最初現れた時と同じことを言った。

 なるほど、この自称神は俺を助けに来てくれたのか。

 そうかそうか……


 俺はスッとポケットに手を突っ込み、スマホを取り出して……110っと


『もしもし……「あ、すみません。不審者です。助けてください」……だから言っているであろう。私が君を助けに来たと』


 ってうわぁ!!

 なんで電話口からエルディの声が聞こえるんだよ!!

 俺は国家権力に向けて電話をしたはずだ!!


「酷いではないか。神である私を通報しようとするなど。私は君を助けに来たと言っているではないか。何度言わせるんだ。あんまりしつこいと能力返してもらうぞ」


 少しだけ冷静になろう。

 神、能力、携帯への干渉。

 ……ああ、そうか。これは夢だ。

 現実でそんなことがあるはずがない。

 全く、最近オタクな友達に借りたライトノベルの読み過ぎでついに夢にまで出てくるようになるとは……


「ちなみに言っておくが今君が考えていることは的外れなものだぞ。これは夢ではなく、現実だ」


 ほほう、ついに思考まで読んでくるとは。

 さすがは神様だ。


「……ここまでやっても信じないとは、君は相当なバカだな!!よし、ならば最終手段だ。古来この世界では現実と分からせるために痛みを与えるのが主流と聞く。明よ、歯を食いしばるといい!!」


 目の前にいる筋肉質の男からの見事なパンチを顔面に喰らった俺は綺麗な弧を描きながら空を舞い、地面に落下。

 意識を失ってしまった。


 ーーーー

 ーーー

 ーー

 ー


「はっ!!ここは!?」


 自称神に殴られた気を失い、そして目を覚ましたのは見覚えのある保健室の光景だった。

 俺はいつ学校に……いや、もしかすれば学校の授業中に倒れてあんな変な夢を見てしまっていたのでは……いや、あれは夢じゃない。

 なぜならば右頬に痛みを感じている。

 そして治療の後と見えるガーゼが貼ってある。

 じゃああれは本当に現実だったということか。


「君も本当にしつこい男だな。そんなにしつこいと女にはもてんぞ?」


 横からした声の方に首を向けると、そこにはエルディがいた。


「いや、もう流石に認めますよ……で、聞いてもいいですか?」


 流石にここまでされて認めないのは逆に現実が見えてないと思われても仕方がないので、エルディの存在を認め、目が覚めたときから見えるようになったある事についてエルディに聞くことにした。


「今俺の額の斜め前くらいに数字の『2』が浮かんでいるんですが、これはなんでしょうか?」


 目が覚めたときから額の前に数字の2が浮かんでいるのだ。

 それに触れようとするがすり抜けてしまう。

 3Dゴーグルをかけたときのそれに似ている。


「ああ、それか。それは君に与えた能力『編集者』に付随するものだ。まずはそこについて説明をしなければならないだろう」


 そう言って立ち上がったエルディは保健室のホワイトボードをコロコロと転がしながら持ってきた。

 そういえば保健室の先生はどこに行ったのだろうか。

 こんな不審者がいたらすぐにでも通報したいそうなものだが。


「ではまず初めに『編集者』についての話だが、これは最初に君が語っていた通り、相手の容姿、性格、特徴などなど好きな場所を一ヶ所だけ自分好みに変換することができると言った能力だ。例えば……この保健室の先生で試してみると……」


 あ、小保方先生がいた。

 保健室の床で目を回して倒れている。

 おそらくエルディの姿を見て気絶でもしたのだろうか。

 そんな先生に向かってエルディが


「ふむ、この女は相当な巨乳だな。私は慎ましやかな胸の方が好みだ。『編集エディット』」


 そう言うと、私立英立学園高等学校全男子生徒の憧れ小保方先生の巨乳がみるみるうちに収縮を開始し、膨れているのは胸の大きさ?それともブラの形?くらいの大きさになってしまった。


「というように、自分が好きなように改変することができるのだ」


 ……控えめに言って素晴らしい能力である。

 え、じゃあ俺は今まで諦めてきた、あの子やあの先輩にこの能力を使えば……


「しかしこの能力には、欠点がある。他人の性格や容姿を変えるのだ。それ相応の対価が必要になる」


 それはそうだろう。

 こんなすごい能力をなんの対価もなしに利用できるのは虫のいい話だ。

 その辺りは俺も予測はしていた。


「対価は己の寿命1年分だ。己の寿命1年を神に差し出すことによってその恩恵を授かれるというわけだ」


 寿命1年分……

 なるほど、なかなかに厳しい条件だ。

 変えるにしても自分の寿命が後どれくらいあるかなんて分からないから慎重に使わなければならないということか。

 だが身体が欠損するとかじゃなくて良かったと思う。


「そして先程君が言った質問の答えだが、今明の額の上のある数字は君の残りの寿命だ」


 …………え?

 残りの寿命?

 じゃあ……俺は後2年しか生きられないということなのか?


「その通り。君は本来であればあと2年しか生きることができない。理由は簡単。今からちょうど2年後、君はこの学校の女子生徒の手によって殺されることになっているからね」


 ……………。

 あまりの衝撃的な事実に俺は頭を抱えた。

 この能力を手に入れてぬか喜びしていた自分がバカみたいじゃないか。

 2年で死んでしまう男がこんな能力を手に入れてなんの役に立つというのだ。

 自分の好きな女の子の性格を変えて、1年一緒に過ごしたらそこで死んでしまう。

 その行為になんの意味があるのだろうか。

 それならば普通に残りの2年間を上手く立ち回って、自分が2年後に死なないようにすればいい話ではないのか?


「ちなみにこの死は君の力だけでは回避することができない。君がどんなに上手く立ち回ったとしても全てがその死という結果に導かれてしまう。要はいろんな分岐ルートがあったとしてもゴールは全て同じということだ」


 は、はは……

 俺は顔を引きつらせることしかできなかった。

 じゃあどうしろっていうんだ……


「その負のルートから君を助けるために私はきた。私は誰にでも優しい君のような人間を放っておくことができない。だから君には運命を変える力を与えたのだ。上手くいけば君の寿命を伸ばすことができる。私が君に与えた能力ならばそれができる!!」


 エルディは俯く俺の方に手を置き、


「君を殺す相手は誰か分からない。様々なルートが混ざる君の運命を神である私たちですら、予測することができない。ただ君に近しい人間ということは間違いない。だから君を殺すであろう人間の性格、容姿をピンポイントで変えることで君の死というルートを回避することができる。つまり寿命を延ばせるということだ!!だから明、チャンスは2回しかない。しかし、何もしないで殺されるよりも、君の手でそのルートを回避方にかけてみないか?」


 そう言った。

 何もしなければ2年で死ぬ。

 しかしこの能力を使えば……相手が俺を殺さないようにできるのであれば……


「……俺は自分の手で生き残る道を掴む」


 俺はそう決意した。

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