セックスワーカー

結論から述べます。

途中に書いた通り、私はその日から風俗店で働きました。


初めてのそういうお仕事はイメージクラブと呼ばれるもので、店舗型の学園系のヘルス店でした。


ヘルスと呼ばれるジャンルは、お口の方を使ってお客様の性的欲求を満たすお店のことを言います。


店舗型というのは、繁華街でどうやったらこんな店名思いつくんだよと言ったようなネーミングセンスが問われるような、なんとなく見るからにエッチな雰囲気を醸し出しているお店を一度はきっと見かけたことがあるかと思います。それが店舗型と呼ばれるものです。


イメージクラブというのはシチュエーションに沿ったイメージプレイというものです。

私が初めて働いたお店は制服を身に纏い、痴漢や学校をテーマにし、お客様の事を「先生」と呼ぶ、俗に言うロリコンが集まるお店でした。




面接した後に講習をし、入店の意志を決める前にお客様が決まったので、ぶっつけ本番といった感じでした。仮の源氏名も30秒で決めました。好きなバンドのボーカルの名前から取った“まお”という名前で働きました。


私の初めてのお客様というのは、しょうもない事ではありますが今でも覚えています。

郵便局で働いていると言っていた清潔感のあるごく普通のおじさんでした。

本当にしょうもない事だけど覚えてます。一度もお会いすることはありませんでしたが。




そんなこんなで4時間で4万円くらい稼ぎました。4万円を受け取った後に、スタッフさんに入店に関して聞かれました。

実際4万円を目の前にすると揺らぎました、凄く。

数時間で稼いだ4万円でたくさんのことが出来ます。


カメラのちょっとした備品は間違いなく買えます。

奨学金の返済も出来ます。

1ヶ月分の食費分にもなります。

趣味にもお洋服にも充分お金を使えます。

いずれかは買わなきゃならないPhotoshop、Illustratorのソフトを買うのも痛くありません。


そして数時間で稼げる分、待機の時間も含めたら、課題の時間に当てることだってたくさん出来る。



揺らぎながらもメリットの面が多いと思った私は、入店することにしました。

前日まであんなに抵抗していたのにね。

そして、自ら落ちるのが好きなんですかね。



その日から“まお”ちゃんで、正式に働くことになりました。




送迎車の中で、お父さんが昔言っていた教訓を守りながら携帯をいじらずに窓から景色をずっと見てました。

頭の中で考えている事は、大きなお金が手に入ったことによる興奮、どうしようも無い事をしてしまった罪悪感と虚無感に駆られながらもただただ変わりゆく景色を見てました。

しかし自宅に近づくにつれて興奮は消え、私は風俗嬢になったんだ。と我に返りました。

汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い。



家に帰ったら洗面所に駆け込み、すぐに口の中に指を突っ込みました。

口内発射で口の中に入ったおじさん達の精液が、自分の身体に残ってるかもしれないと思うと嫌で仕方なくて。ですが、その日は緊張と罪悪感で食欲というものも無く、あまり食べていなかった私は吐くことが出来ませんでした。

目は血走り、鼻水を出し、右手の中指と人差し指を突っ込んで、左手でお腹を思いっきり押しますが、唾液しか出てこない自分に腹が立ちました。


ゲロが吐けない。ゲロを吐くことに対して諦めた私は中学生の頃と同じように、うがい薬でうがいをしました。ゴロゴロと。

その後はシャワーを浴びることにしました。何度もおじさんに舐められたおっぱいと耳の裏と首筋を自分自身に色んな意味でムカつきながら、そして泣きながら洗いました。


泣きながらシャワーを終えて落ち着いた後に、自分の部屋でお父さんがニコニコと笑っている遺影が目に入りました。

そのままお父さんの遺影を伏せて、再度泣きました。

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