ローゼンメイデンの雛苺になりたかった。

あれから、私は繁華街に行くことも減りました。

なんだか気が滅入ってました。携帯の受信フォルダには友達から数件の心配メール。

返信もせずに、ただただ大好きだったローゼンメイデンを家でまた見てました。



雛苺ちゃんみたいになりたいなのー!って。

大きな花丸ハンバーグ食べたいなのー!って。



そのまま新学期に入りました。

横わけくらいまであった前髪を綺麗にぱっつんに戻し、黒染めをして何食わぬ顔して普通の高校一年生に戻りました。

新学期のテストを終えたその日、私はテスト中に色々と考えました。

このまま私の中で秘めておくのも無性に腹が立つ。警察に相談しよう。と警察に相談することを決めました。



受信フォルダの中にはさやかちゃんからの心配メールもありました。

『今から会える?』と送信したところ、さやかちゃんからは『あいよ!』といつも同じような返信が来ました。


待ち合わせ場所にいたさやかちゃんは軽くプリンになった金髪をし、最後に会った日と同じプーさんの着ぐるみを着てました。


そんなプーさんの着ぐるみを着た彼女に私はあの日あった出来事を全て伝えました。

さやかちゃんは基本的に適当人間で、何を考えてるか今でもさっぱり分からないヘラヘラしてる子なんですが、プーさんの着ぐるみを着たさやかちゃんはその日は真剣な表情をして「とりあえず警察署行こう。」それだけ彼女は言いました。

本物のプーさんなら『そんな事より、はちみつ食べたいなぁ』と言うでしょうね。言わないか。



繁華街の中にある小さな交番に、私たちはそのまま出向かいましたが、プーさんの着ぐるみを着た女の子と普通の格好をした女の子が交番に駆け込みました。

警察官の方も落し物なのかな?といった軽い感じでやってきましたが「相談したいことがあるんですけど」の一言で顔つきも変わり、警察官の方に全ての事柄をお話した結果、交番ではなく警察署にそのまま行くことになりました。


警察署に着いてからそのまま、警察のドラマに出てくるような灰色の配色が多すぎるのではないかと言うような典型的な絵に書いたような取調室に案内され、二人の警察官に全ての事柄をお話しました。

一日に二度説明するのは正直やはり疲れました。

説明の時点でさやかちゃんには帰ってもらい、とりあえず緊急性という事でその日そのまま警察官の付き添いで産婦人科に行きましたが、アフターピルも効かないくらい時間が経ってたので妊娠の恐れはないかの子宮の中の検査をしました。しかし、今思えば単なる気休めでしかない。


二日目は実際に行った所に行った場所から出向き、警察官の方に何枚か写真を撮ってもらいました。恐らく、二時間くらいは撮ったと思います。

その後に警察署に戻り、過去に捕まった犯人の写真リストを見せられました。

しかし写真がモノクロな事と会ったのも夜の時間、テキーラで意識は飛んでいる為、顔の記憶が定かではなかったのでその人らしきものは見つける事はできませんでした。


三日目は、事件としては成り立つのだが訴えるとしたら民事になる。そして訴えたところで犯人が刑務所から出てきた後に逆恨みされる可能性が大いにある。と警察の方に説明されました。民事についても私にもわかりやすく説明してくださいましたが訴える場合、親御さんに説明をしなければならないことを警察官に渋い顔で言われました。今思えば当時未成年なので、当たり前の事なんですがそこまで考えていなかった私はここでちょっと躊躇いが出てしまいました。

ニコニコ笑顔でほわほわしてる優しいお母さんの笑顔を崩してしまうのか、基本的には怒ってばかりだけど変なところは甘いお父さんはなんて思うのか(下手したら殺人起こしそうだし…)と思うと、その日は考えさせてください。と保留にさせてもらいました。


四日目は、あらためて事柄の振り返りとその時の心境や具体的事を細かく述べながら振り返りました。この時が一番ゲロ吐きそうなくらいドキドキしたのを覚えてます。

今までオブラートに伝えていた警察官二人の前で「正常位でいれられました」と伝えると真面目な顔して『その時の心境は?』等と聞かれるわけで。

なんだこのよくあるAVの冒頭部分の質問部分のようなものは。私も学校の制服姿で話しているから尚更です。

『男性のアレ』と説明するも『ヴァギナにペニスを挿入され〜』と警察官がまた訂正するからこれまた息苦しかったです。

そして説明を終えた後、やはり両親にはお話をちゃんとしよう。と話は進みました。


その日の夜、警察官から電話をかけてもらい、お母さんに警察署に来てもらいました。警察署でお母さんと対面するとは思わなかったよ…シャバの空気を吸いたいぜ…というのは冗談で、警察署に来たお母さんは『何があったの?!』と言わんばかりのお顔で私と警察官の顔を交互に見ていました。


全ての事柄を警察官と私を交え、話を聞き終わったあとにはお母さんの顔は蒼白していました。あーあ、やっぱり勿論こうなるよね、こんな顔させたくなかった。と思いました。

愛情込めて育てた良い子だった娘が勝手にグレてこうなって、お母さんと年齢も対して変わらないおじさんとこうなってさ。



その日の帰り道は、お母さんも私も無言でした。

いつも見慣れている帰り道が、知らない場所を歩いてるような気持ちになりました。

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