第六話 大天使とはこの子のことだ

  〜修一side〜

 

 俺は風呂から上がりソファーに座りながらテレビを見ていた。

妹は部活の強い名門私立中学の寮で暮らしているのでいない。

そして親は商談のため海外を飛び回っている。実質一人暮らしだ。

 

そして今日の一連の騒動の事を考えていた。


柑奈咲の行動のカラクリが分かった時


やっぱりか。

それが俺の感想だった。


 柑奈咲の強気な人探しのやり方には違和感を覚えていたのだ。

いくら学園内での知名度、支持があっても所詮1人の学生であって流石に学校で人探しゲームは出来るはずがないと考えた俺は柑奈咲という名前になぜか親しみがあることに気づいた。


調べてみると、日本2大企業の片方である柑奈ホールディングスだとすぐに出てくる。

そして一番の決定打になったのはホームページに載っていた一枚の写真だ。

品のいい笑顔、肩までスルスルと伸ばされた綺麗な髪。

そこには「次期社長 柑奈咲 」と堂々とした文字で記されていた。


そこまで来たら柑奈ホールディングスが我が高校の経営に携わっているのかをグルグル先生に調べてもらったら、やはり予想通りだった。


だからといっても相手は巨大企業の次期社長だ。俺の打てる手は少ない。


今回の馬鹿げたゲームは情報戦である。

嘘の情報を巧みに操れば勝利だ。柑奈咲の言っていた王子様にあわよくばなろうと狙っている男子だっているかもしれない。

だが俺だと情報収集すら満足にできないのが現状だ。


情報屋を仲間に付けたい思い携帯に手を伸ばす。

秀介あたりだな。すまない訂正しよう。秀介だけだな。


するとプルルルルー、プルルルーと俺の携帯が鳴った。

妹かと思い液晶を眺めるとそこには神田紫穂と表示されていた。俺はひどく感動していた。

俺の携帯って妹以外からの電話も受信できるのかと。嬉しく思っているとうっかり電話を出るのを忘れそうになったので急いで指を動かし電話に応答する。


「もしもし 同じクラスの神田です。今話せますか?」

「はい 大丈夫ですけど何かありましたか?」

 今まで喋っているところを見た事ないが、意外とかわいい声をしていて、大丈夫ですと答えたがもうすでに俺の理性は大丈夫じゃなさそうだ。


それでもせっかくかけて来たのだから理由があるのだろう。失礼のないように紳士的に受け答える。

「単刀直入に言わせてもらうわね 柑奈咲さんが探している王子様って修一くんだよね。」

「えっと、、」

えっ 今この子修一くんって言ったよね。

おっと 危ない危ない 危うく死ぬところだった。僕じゃなきゃ対応できなかったね。

 などと神田の声に溶かされて使い物にならない脳で考えていると神田の声が再び聞こえる。


「聞いてるー?」

「あぁ 聞いてるが」

「どっちなの王子様かそうじゃないのか」

「そんな事sh」


 そう言おうとしたその時だった。神田の甘くもあり鋭くもある声が大音量で耳に響く。


「私見ちゃったんだ修一くんが柑奈咲さんを男達から助けているところを」 

「そうだったのか」


 ばれたものはしょうがないので素直に認めておく。

あの時人かげが見えたがあれは神田だったんだな。

そして俺が朝のホームルームで名乗りでないってことは隠したいことがあると推測して、口止め料を取りに来た。

そんなところだろうか。


「いくらだ?」

「へぇっ?」


 なぜか神田は間抜けな声を出した後、クスクスと笑った。


「修一くんって面白いんだね」


 何が面白いのか全くわからないので皮肉を込めて聞いてみる。


「人に口止め料払わせるのがそんなに楽しいか?」

「ううん、でも修一くんと話すのは楽しいかな」


 聞いても答えが返ってこない。よしもう一回だ。


「いくらですか」

「しいて言うならお代は無料だね」

「うん?」


 俺は首をひねる。


「まだ分からないみたいだから言っちゃうね」

 

  

   「私、神田紫穂は修一くんを柑奈咲さんから全力で守ろうと思います!」

    

   

    

     

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