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第512話 F級の僕は、レヴィアタンとの“再戦”に向かう
第512話 F級の僕は、レヴィアタンとの“再戦”に向かう
6月20日 土曜日6
届けられたルームサービスの料理を楽しみながら、『ティーナの無線機』を介して参加した
「私は良いと思うけどな~」
小さく切ったステーキを口に放り込みつつ、井上さんがそう切り出した。
「今後も富士第一の攻略進めるなら、ある意味、均衡調整課のお墨付き貰っておいた方が、やりやすくなると思わない? それに特別室に展示してある武器や装備も無制限に使わせてもらえるんだったら、お得だと思うけど」
僕は自分の中の懸念を口にした。
「だけどそれ、同時に均衡調整課の“監視”も受け入れる事とセットだよね?」
ティーナさんからの囁きに気を取られて僕が聞き逃していた、四方木さんの話。
ちゃんと聞いていた井上さんと関谷さんによれば、均衡調整課は
まあ、“サポート”と言えば聞こえはいいけれど、これは
と、それまで黙って僕達の話に耳を傾けていたティーナさんが囁きを送って来た。
『基本的ニハ、そのお話を受ケル方向で良いのデハ?』
「でも、均衡調整課の職員達が一緒だと、行動が制限されるのがな~。ほら、僕は時々、
少なくとも今ここにいる仲間達は、僕のそうした事情を知っている。
だけど均衡調整課から派遣されてくるという職員達に、今の所説明するつもりのない僕としては、【異世界転移】をするたびに気を使わないといけない事態は好ましくない。
『それナラ簡単な解決方法が有りマスよ』
「どんな方法?」
『均衡調整課が富士山頂で提供してくレルというチームの専用棟内ニハ、当然、中村サン専用の個室が与えラレるはずデス。あらカジめ均衡調整課には、中村サンの個室は、許可を得た者以外は入室しナイように誓約してオイてもらエバ、私達の“密談”も【異世界転移】もやりタイ放題になりマスよ』
結局、僕達は均衡調整課からの話を受ける事になった。
ただし、実際に“受ける”と伝えるのは、北極海での“試し撃ち”が終わった後にした方が良い、とティーナさんが提案してきた。
『もし北極海でスタンピードを起こしテイる
こういう事が言えてしまうのは、彼女がアメリカ、というより僕達の世界全体で見ても、トップクラスの
均衡調整課からの提案について、一応の結論を見た所で、僕は話題を切り替えた。
「それじゃあ北極海での試し撃ち、いつにしようか?」
『そうデスね……』
少しの間をおいて、ティーナさんが囁きを続けた。
『今日、午後3時以降ナラ、私も自由に動けそうデス』
日本時間の午後3時は、ハワイ時間だと……午後8時。
つまりその時間以降なら、ティーナさんは独りになれるって事だろう。
僕自身は、トゥマには今日の夕食――向こうの時間で午後7時――に間に合うように帰ればいいから、
時間的余裕は十分にあるし、なんなら、北極海の件が片付けば、その後、ティーナさんが紹介したいって話していた人物に会う事も出来るかもしれない。
「それじゃあ午後3時にもう一度連絡するよ。それで……」
僕は関谷さんと井上さんに視線を向けながら言葉を続けた。
「もし北極海の
井上さんが口を開いた。
「ねえ、その海棲モンスターを中村君がイスディフイ側から攻撃する時。私達もその様子を見せてもらったりって出来ないかな? しおりんも興味あるでしょ?」
「私はどっちでもいいかな」
二人の会話に、ティーナさんが参加してきた。
『北極海とその部屋とをワームホールで繋げば可能カモ』
「つまり、中村君のあの秘密道具を使って?」
『そうデス』
「ちょっと待って!」
僕は口を挟んだ。
「それって危なくないかな?」
井上さんが不思議そうな顔になった。
「どう危ないの?」
「いやだって……」
僕はチラっとオベロンに視線を向けた。
ちなみに彼女は、自分の身体より大きいメロンにむしゃぶりついている最中だ。
「もしかしたら、巻き込まれちゃうかもしれないし」
「つまり、イスディフイからの中村君の攻撃にって事?」
「そうそう」
オベロンは目標を正確に狙い撃ち出来ると安請け合いしていた。
しかし神サマでも無い限り、何事も100%は有り得ない……はず。
だから僕としては攻撃を実施する時、対象地域周辺に僕の大切な仲間達が
『心配いりマセんよ。ワームホールを設置しテモ、そこを通り抜けるノハ、生身の人間である必要はありまセンから』
「どういう事?」
『カメラを搭載した自律飛行型のドローンを複数台送り込ンデ、映像を記録すレバいいのデス』
井上さんがティーナさんに問い掛けた。
「もしかしてエマさん、そういうのも用意出来るって事?」
『はい。任せて下サイ。ついでに
「その時の名義は当然、“地球防衛軍X”で!」
……まあいいや。
どうせ匿名投稿なんだから、ネーミングセンスはこの際、目を
――午後3時過ぎ
予定通り、謎の留学生エマに扮したティーナさんがワームホールを潜り抜け、僕達の部屋へとやって来た。
彼女はジュラルミン製のかなり大きなキャリーバッグを1個、持参していた。
キャリーバッグの中には、組み立て式のドローンが3機、そしてノートパソコンが1台収められていた。
彼女は手慣れた手つきでドローンを組み立て、ノートパソコンを立ち上げると、僕に声を掛けて来た。
「では中村サン、ワームホールの接続先を変更して下サイ。接続先は、ノヴォシビルスク諸島のベリコフスキー島西岸でお願いしマス」
つまりその地点が、
僕は手の中の『ティーナの重力波発生装置』にMP10を込めてみた。
装置が発光し、それに応じるかのように、銀色に隠蔽されていたワームホールの向こう側に変化が現れた。
そしていかにも寒々しい雰囲気の荒涼とした海岸線が、魚眼レンズを通したかのように、
ワームホールに近寄った井上さんが、興味深そうに向こう側の景色に視線を向けた。
「この向こう側って、北極海に浮かぶ島の海岸って事よね?」
「そういう事になるのかな」
「中村君、凄いじゃない! これなら世界中、どこへでも行き放題じゃ無いの?」
いや
「まあ、色々条件が揃わないとダメだから、簡単にどこへでも行けるってわけじゃないよ」
言葉を返しながら、ティーナさんに視線を向けた。
「そろそろ始めようか?」
床に敷かれた絨毯の上に並べられていた3機のドローンが、ブーンというやや甲高いプロペラ音を響かせながら、一斉に浮き上がった。
そしてそのまま、次々とワームホールを
それを見届けたティーナさんが、僕達に告げてきた。
「制限時間は40分デス。時間が来レバ、ドローンは自律的にこチラに戻ってきマス」
「了解。それじゃあ、早速行って来るよ」
「はい。お気を付ケテ」
「頑張れ~。愛しのしおりんが応援しているぞ!」
「ちょ、ちょっと、美亜ちゃん! あ、でも中村君、気を付けてね」
皆の声援に見送られながら、僕は【異世界転移】のスキルを発動した。
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