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第472話 F級の僕は、オベロンとは考え方が違う事を認識する
第472話 F級の僕は、オベロンとは考え方が違う事を認識する
6月18日 木曜日23
「そ、それはおぬしの思い違いじゃ。おぬしと
オベロンが慌てた様子で反論するが、エレンはじっと何かを考え込んだまま動かない。
「そ、それにほれ、
「契約?」
エレンの目が細くなった。
彼女が僕に視線を向けて来た。
「タカシ、契約って?」
「実は……」
説明を試みた僕の言葉に、オベロンが自分の言葉を
「
「タカシ……」
エレンと繋がったパスを通じて、彼女の機嫌が急降下していくのが伝わってきた。
「まさか“富士第一”で、“また”ゲートキーパーと戦ったの?」
「え~と……」
どう“言い訳”しようか考えていると、オベロンが口を挟んできた。
「その話は後にせぬか? そこなダークエルフは死んだが、周囲に
エレンが周囲に視線を向けた。
そしてじっと何かに集中する素振りを見せながら口を開いた。
「封晶の中……光の巫女……クリス……ターリ・ナハ……それと、ここから数百m程離れた場所に200名程のダークエルフ達……2名の魔族……」
!
ここへ
だとすれば……
「エレン、黒い負の感情を
エレンは再び何かに集中する素振りを見せた。
「この階層には……いない……さらに下層……1万人以上の……恐らくこの街の住人達……」
「それだ!」
「な、なんじゃ? 急に大声を出しおって」
オベロンが驚いたような声を上げた。
僕は彼女を無視してエレンに声を掛けた。
「クリスさん達を救出した後、その人達も救い出せないかな?」
「クリスと光の巫女に封晶の影響が残っていなければ、恐らく可能」
「こりゃ、タカシ!」
話に置いてけぼりを食らった感が強かったのだろう。
オベロンがやや不満そうな声を上げた。
「なんでそんな見ず知らずの者どもまで助けようとしておるのじゃ? こんな所でグズグズしておると、思わぬ所で足元を
僕は思わずオベロンの顔をまじまじと見返してしまった。
彼女の、あどけなささえ感じられる“可愛らしい”顔には、僕の取ろうとしている行動が、心底理解出来無いといった表情が浮かんでいた。
この自称“精霊王”と僕とでは、根本的な考え方が違うのかもしれない。
それはともかく、僕の単純な倫理観を別にしても、僕にはどうしても彼等を救い出さなければいけない強い動機が存在する。
彼女は死の間際、巻き込んだ全ての人々への謝罪を口にしていた。
であれば、彼女が巻き込んだ全ての人々を救い出し、元の生活を送れるようにしてあげる事は、約束を果たせず、彼女を救えなかった僕が引き継ぐべき責務だ。
「それじゃあエレン、まずは封晶に封じ込められている皆を助け出してもらってもいいかな?」
「任せて」
エレンは床に描かれている五角形の魔法陣の中心部に立った。
彼女が何かを唱え、それと同期するように、彼女の身体を柔らかい光がゆっくりと包み込んで行く。
やおら彼女が右手を上げた。
瞬間、彼女からそれぞれ、五角形の残りの頂点の位置に浮遊する三つの封晶に向けて光が放射された。
三つの封晶全てが同時に砕け散った。
そして三つの封晶に閉じ込められていたノエミちゃん、クリスさん、そしてターリ・ナハが床に崩れ落ちた。
幸い、三人ともすぐに意識を取り戻した。
見た感じ、そしてエレンの見立てでも、封晶に封じ込められていた時の影響は、三人から完全に消え去っているようであった。
僕は皆に、改めて事の経緯を簡単に説明した。
ただし、
ちなみにオベロンは、僕が彼女について説明しようとするのを
「ごめんよ。僕が油断していたばっかりに……」
「それを
「すみません。役に立てなかったばかりか、無銘刀まで奪われてしまいまして……」
「とにかく
「待って!」
僕が今からさらに下層に
彼女は闇の向こうに険しい視線を向けていた。
「どうしました?」
問い掛けの言葉を口にしてから。僕はある事に気が付いた。
つい先程まで地鳴りのように響いていた大勢の詠唱の声が、今は全く聞こえなくなっていた。
クリスさん同様、闇の向こうに視線を向けていたエレンが
「向こうも私達の様子に気付いたみたい」
皆を封晶から救い出す直前、エレンは闇の向こう、僕等が今居る場所から数百m先にダークエルフ200名と魔族2名が
「だから申したであろう? 今は急いでこの地を離れるべきじゃ!」
オベロンがなぜか勝ち誇ったようにそう主張した。
エレンはオベロンにチラッと視線を向けた後、クリスさんとノエミちゃんに声を掛けた。
「ここよりさらに下層に、万を超えるこの街の住民達が禁呪の
「本当かい?」
クリスさんは一瞬驚いたような表情になった。
「もちろん僕で良ければ手伝うよ」
ノエミちゃんも微笑んだ。
「救いを必要としている人々に手を差し伸べるのは、当然の行いです」
「【
僕から無銘刀を受け取ったターリ・ナハも、
皆の心の温かさが、今の僕にはとても
「こりゃ!」
ほっこりしかけた僕の気持ちに水を差すかのように、オベロンが声を上げた。
「おぬしら、封晶の影響で頭がちゃんと働いておらぬのではないか?」
「それはどういう意味ですか?」
怪訝そうに尋ねるノエミちゃんに、オベロンが言葉を返した。
「おぬしらがその住民達を助けに行くのを、闇の向こうに
「オベロンさん」
ノエミちゃんが優しく諭すように問いかけた。
「オベロンさんは、『精霊の鏡』に封じられていたんですよね?」
「その通りじゃ」
「解放された時は、嬉しく無かったですか?」
「そりゃあもちろん……」
言いかけてオベロンがフンっと鼻を鳴らした。
「そう言えばおぬし、あのイシュタルの眷属であったな。物言いが、あの女とそっくりじゃ。とにかく! 問題をすりかえようとしても、
オベロンは、そうじゃろ? とでも言いたげな雰囲気で僕に視線を向けて来た。
僕はその視線を敢えて無視する形で、仲間達に声を掛けた。
「とにかく、下層に向かおう」
そして僕は、床に横たえていた
エレンが皆に声を掛けた。
「私が皆を転移させる。私の傍に集まって」
エレンは、僕等が彼女を取り囲むように立った事を確認してから、短く何かを
「こりゃ! おぬしら!
オベロンがなおも何か騒ぐ中、僕等の視界は切り替わった。
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