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第316話 F級の僕は、代役を立てる事にする
第316話 F級の僕は、代役を立てる事にする
6月12日金曜日12
気を取り直した僕は、ターリ・ナハとララノアに再び留守を託すと、【異世界転移】でティーナさんの待つ僕のアパートの部屋へと戻って来た。
「で、どうだったの? Takashiの【影】」
僕は、【影】を世界の壁を越えて維持し続けるのはどうやら不可能らしい事と、ついでに、僕が向こうで巻き込まれている“エレシュキガル”
「……そんなわけで、
「Ummm……私がTakashiの代わりに
ティーナさんは、少し考える素振りを見せた後、再び口を開いた。
「Takashiの代役……
「そんな都合よく代役頼めそうな人って、心当たり無いんだけど」
残念ながら、今の僕には、代役頼む以前に、友達と呼べる存在自体が、片手で数えられる程しか存在しない。
ティーナさんが、悪そうな顔になった。
「あら、いるじゃない?
「誰?」
ティーナさんが、僕の耳元に顔を近付けてきて囁いた。
「Se-Ki-Ya-Sa-N。彼女は
「関谷さんが引き受けてくれるかどうか以前に、代役頼むのは、問題が有り過ぎでしょ?」
「問題って?」
「彼女は黒い結晶体はおろか、チベットやミッドウェイで実際に何が起こっているのか、全く予備知識を持ってないよ?」
「予備知識はいらないわ。彼女はあくまでもTakashiの代役。で、私がその付き添い。
なるほど。
ティーナさんが何を考えているのか、大体読めた。
彼女は、握手した相手の記憶を
変装か何かして正体隠して関谷さんについて行って、“初めまして~”とかなんとか理由をつけて、
確かにその方法ならば、数秒の内に、
「それはともかく、
机の上の目覚まし時計は既に日付が変わって、午前0時18分を指している。
「……こんな時間だから、関谷さん、もう寝ているだろうし、関谷さんから確約得られていない状況で、彼女を代役に、
「なら、試しにチャットアプリで関谷さんにメッセージを送ってみて」
「代役頼みますって?」
「いきなり代役
……仕方ない。
確かに、
―――『深夜に突然メッセージ送ってごめん。実は早急に相談したい事があるんだ。このメッセージに気付いたら、急いで連絡下さい』
送信してから気付いた事を、ティーナさんにたずねてみた。
「これ、関谷さんがメッセージに気付くの、明日の朝だったらどうするの?」
「私の予想だと、まだ関谷さんは寝てはいないはず」
「なんでそう言えるの?」
「だって、今日Sekiya-sanは、Takashiと二人っきりでdungeonに潜ったんでしょ?」
正確には、鈴木っていう謎のストーカーがついてきたけれど。
「で、dungeon終わった後、Takashiは、“時間が無いから”って、余韻も何も無しで急いで帰ってしまった。どうせ夕食、食べて帰らない?って誘われて、それも時間無いからって断ったんでしょ?」
なんで
僕の記憶は覗けなくなったって
「そして明日は土曜日、つまり休みの日。愛する彼の心を振り向かせる事に失敗した乙女は、深夜の長電話で友達から
「だ、か、ら、関谷さんはそんなんじゃ……」
―――ピロリン♪
僕のスマホが、チャットアプリに新しいメッセージが届いた事を知らせてくれた。
「Bingo!」
ティーナさんが、ほらねって顔で、僕にメッセージを確認するよう
スマホを立ち上げてみると、はたして関谷さんからの返信だった。
『どうしたの? 今から電話しようか?』
僕はそのメッセージをティーナさんに見せながら聞いてみた。
「で、なんて返事するの?」
「とりあえず、smartphoneをspeakerにしてからSekiya-sanに電話して。彼女になんて話せばいいか、私が横からadviceしてあげるから」
ティーナさんが、自身の右耳に装着している『ティーナの無線機』を指差した。
仕方ない。
ここはティーナさんの“作戦”に乗ってみよう。
僕は関谷さんの電話番号をタップした。
すると、待ち構えていたかのように、関谷さんが電話口に出た。
『もしもし、中村君? 何か困った事になってる?』
彼女の声はスマホのスピーカーを通して、僕から少し離れた場所に移動したティーナさんの耳にも届いている。
僕はチラッとティーナさんに視線を向けた。
ティーナさんの
僕はその通りに復唱してみた。
「……夕方、
『うん。確か明日の朝7時までに返事が欲しいって言っていたわよね?』
「……そう。その件についてなんだけど、実は今、僕は猛烈に忙しくて、彼女と話す時間を作れなさそうなんだ。それで、明日の朝、僕の代わりに君が
復唱しながら僕はティーナさんを軽く
ナンダコレ。
深夜に突然電話して、僕の都合を押し付けているだけじゃないか。
ティーナさんは、どこ吹く風といった感じで、平然としているけれど。
『私一人で? ……大丈夫かな……』
「……実は僕の大学に留学生の女の子がいるんだけど、彼女、結構強いらしいんだ。その人が、君の護衛を買って出てくれているんだけど……」
なんだなんだ?
ティーナさん、もしかして、僕と同じ大学に通う謎の留学生に成りすますつもり?
『……その留学生さんは、中村君と仲いいの?』
「……安心して。同じ学科だから、時々話すだけだよ。それに僕が本当に信頼して心ぅを……」
って、何臭いセリフ言わせるんだ!?
僕は再びティーナさんを睨んだ。
彼女の囁き声が届く。
『ほら、セリフ、噛んじゃってるわよ?』
......
今は電話に集中しよう。
「その……心を許せる相手って、君だけだから」
『えっ? それって、どういう……』
「……言葉通りだよ。留学生のコは、あくまでも君の護衛を頼むだけだ。僕にとって本当の意味で大事な君を
って、復唱しといてこう言うのもなんだけど、なんだ、この歯が浮きそうなセリフ。
関谷さんにヘンに思われたらどうしてくれるんだ?
『……分かった。私、中村君の代わりに
「ありがとう関谷さん。今度、何かお礼をするよ」
僕は思わず自分の言葉で感謝の気持ちを伝えてしまった。
結果的に、“囁き”を無視された形になったティーナさんが僕を睨んできた。
『勝手な発言は許可してないわよ?』
「なんだよ、お礼を言っただけじゃ無いか」
『中村君? 何か言った?』
どうやら、ティーナさんに小声で言い返したのが、関谷さんにも聞こえてしまったらしい。
「なんでもないよ。それで……」
僕はティーナさんの囁きを復唱する“作業”に戻った。
「……今から
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