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第150話 僕は、光の盾と鎧を手に入れる
第150話 僕は、光の盾と鎧を手に入れる
5月28日 木曜日3
第2日目――3
―――キェェェェ!
咆哮する空王フェニックスを眺めながら僕は少し混乱していた。
さっき確かに消滅させたはずの空王フェニックスが、なぜか復活した。
まさか不死身……なんて事はないとは思うけれど、一体、どうなってる?
ノルン様が話しかけて来た。
「勇者様、空王フェニックスは、
「
「はい。強力なモンスターの中には、HPを凝集させた
「空王フェニックスの
ノルン様の表情が曇った。
「もう少し近付くことが出来れば、或いは“視える”かもしれませんが……」
フェニックスまでの距離は数百m。
幸い、旋回している空王フェニックスは、僕等の居場所をまだ特定できずにいるようであったが、近付けば気付かれるだろう。
どうしよう?
連続して攻撃し続ければ、その内、
と、“エレン”が話し掛けてきた。
『【隠密】と{察知}を使用しながら{浮遊}で近付いてもらえれば、私も“視える”かもしれない』
僕は、ノルン様に囁いた。
「しばらくここでお待ち下さい」
「勇者様……?」
僕は【隠密】状態になると、{察知}を発動しながら{浮遊}した。
ノルン様の精霊の加護を離れ、身を切るような冷たさの中、空中を滑るように、しかし、慎重に空王フェニックスへ近付いていく。
『エレン、どう? “視える”?』
空王フェニックスまで数十m程の場所で、“エレン”の念話が返ってきた。
『……右の翼の中ほどに“視える”』
僕は再び魔導電磁投射銃を構えた。
『その
『やってみる』
途端に、僕の両手が、僕の意思とは無関係に魔導電磁投射銃の照準を修正した。
そして、僕の口から、これまた僕の意思とは無関係に詠唱の言葉が
『MPを充填して』
エレンの言葉に応じて、僕は再度MP
魔導電磁投射銃が振動と閃光を発し始めた。
それに気付いたらしい空王フェニックスが、僕の方に視線を向けるのが見えた。
―――ドシュ!
不可視の魔法力が、奔流となって空王フェニックスの右の翼を貫いた。
―――ギョェェエエ!
右の翼を失い墜落していく空王フェニックスは、しかしその途中で再び翼が再生した。
エレンが念話で状況を説明してくれた。
『HPを削り切る前に魔石が壊れた。想定した威力が出なかった』
どうやら、内部に嵌め込んだAランクの魔石が、充填したMP
HPを削られ、傷付いてはいるものの、かえって逆上したらしい空王フェニックスが、全身から炎を炸裂させるのが見えた。
地獄の業火のように荒れ狂う炎の壁が、周囲360度を焼き払う勢いで迫ってくる。
まずい!
僕は咄嗟に空王フェニックスに対してスキルを発動した。
「【置換】……」
次の瞬間、僕と空王フェニックスの位置が入れ替わった。
僕と入れ替わり、自身の発した炎の壁に自身が焼かれる形になった空王フェニックスが、混乱した声を発した。
―――ギェギェギェ!?
もちろん、空王
しかし、空王フェニックスが混乱している間に、僕はノルン様が隠れる岩陰へと{転移}する事に成功した。
精霊魔法で炎の壁をやり過ごしたらしいノルン様が、心配そうに顔を寄せて来た。
「勇者様、お怪我は?」
「大丈夫です。ここは寒いんで、逆に温まりましたよ」
軽口を返しながらも、僕は急いで魔導電磁投射銃の持ち手の部分を外して内部を確認した。
竜王の瞳とSランクの魔石には問題無さそうではあったものの、やはりAランクの魔石は2個とも砕けていた。
すぐにインベントリを呼び出して、Aランクの魔石2個を新しい物と交換した。
そして右手を魔石に翳すと、“エレン”に念話で語り掛けた。
『調整、宜しく』
途端に、僕の右手から魔石に光が放たれた。
その様子をじっと見つめていたノルン様が、少し強張った表情でそっと囁いた。
「もしかして、魔石を調整されていますか?」
「はい、そうです」
口ではそう答えたものの、実際調整しているのは、僕の中の“エレン”なんだけど。
「そのような雑事、
「ノルン様の手を煩わせる訳にはいきませんから」
「それにしましても、勇者様は多才なお方でいらっしゃいますね」
空王フェニックスは、先程よりもやや広い範囲を旋回していた。
僕を見失ってしまったのが苛立たしいのか、時々やや甲高い鳴き声を放っている。
僕は再び空王フェニックスに魔導電磁投射銃を向けた。
『エレン、頼んだよ』
途端に、僕の意思を離れた両手が照準を修正し、僕の意思を離れた口が、詠唱の言葉を紡ぎ出す。
僕は、MP
―――ドシュ!
発射された不可視の魔法力に右の翼を瞬時に消滅させられた空王フェニックスが、今度こそ光の粒子となって消えていく。
―――ピロン♪
フェニックスを倒しました。
経験値1,041,971,830,393,960,000,000を獲得しました。
不死鳥の核が1個ドロップしました。
光の盾が1個ドロップしました。
レベルが上がりました。
ステータスが上昇しました。
―――ピロン♪
レベルが上がりました。
ステータスが上昇しました。
どうやら今ので、僕のレベルは103になったようだ。
僕は、『不死鳥の核』と『光の盾』を拾い上げた。
『不死鳥の核』は、『竜王の瞳』同様、魔石の一種のように思われた。
『エレン、これって魔導電磁投射銃の中のAランクの魔石と交換出来るかな?』
『出来る』
『じゃあ、魔導電磁投射銃で、火属性の魔法攻撃も可能になる?』
『多分可能』
僕は、エレンに手伝って貰って、魔導電磁投射銃の内部に配列した魔石を交換した。
今、魔導電磁投射銃の内部には、風属性の『竜王の瞳』、火属性の『不死鳥の核』、Sランクの魔石、Aランクの魔石が収められている。
これでエレンに手伝って貰えば、魔導電磁投射銃を使用して、風属性と火属性の強力な魔法攻撃が可能と言う事になる。
となれば、次に倒すべきは火属性が弱点のはずの地属性の獣王ベヒモスだ。
お昼ご飯まではまだ時間が有るはず。
僕は、ノルン様に声を掛けた。
「次は、嘆きの砂漠に向かいましょう」
{転移}した先は、一切の生命を拒絶するかの如く強烈な太陽に焼かれる不毛の砂漠の一角だった。
ただし、その強烈な熱気は、ノルン様の展開する精霊魔法に阻まれ、僕等にまでは届かない。
そんな僕等の視線のはるか先、500m程の所に、巨大な獣が、こちらに背を向けて横たわっている。
灰白色のその硬質な表皮が、遮るものの無い太陽の光に輝いて見えた。
さて……
魔導電磁投射銃を構えた僕は、MPを充填していった。
100……1,000……10,000……100,000……1,000,000……
この射撃で、内部のAランクの魔石は砕け散るだろう。
まあ、まだインベントリには、Aランクの魔石、50個以上入っているから、砕けたら入れ替えたら済む話だけど。
でも、Aランクの魔石、地球だったら、1個16,000,000円で売れるんだよな……
若干場違いな事を考えながら、僕はエレンに声を掛けた。
『魔法攻撃力の属性変更宜しく』
僕の口を使って、エレンが詠唱を開始した。
これで射出される魔法攻撃力は、火属性に変わったはず。
そして、僕は引き金を引いた。
―――ドシュ!
凄まじいまでの力の奔流が、瞬時に獣王の身体を貫いた。
―――ブモォォォォ!?
獣王の凄まじい絶叫が砂漠の砂を巻き上げた。
事前に聞いていた通り、物理・魔法双方の攻撃に対する耐性が異常に高いためであろう。
計算上、2億を遥かに超える火属性の魔法攻撃を受けた形になったにもかかわらず、獣王はまだ絶命していない。
こちらに気付いたらしい獣王が、ふらつきながらも、全身血だらけのまま、僕等の方に突進してきた。
カバに似た巨体が怒りに震え、鼻の短いゾウに似た頭部に開く巨大な口から咆哮が発せられる。
同時に、足元の地面が轟音と共に崩れ始めた。
獣王ベヒモスが、地属性の魔法を使っているのだろうか?
僕はノルン様を抱え上げると、上空に{浮遊}した。
空中に静止したまま魔導電磁投射銃の持ち手の内部を確認してみると、やはりAランクの魔石は粉々に砕け散っていた。
しかたない……
僕はインベントリから
そして再度、眼下で咆哮を上げる獣王に照準を合わせた。
―――ドシュ!
獣王ベヒモスがゆっくりと光の粒子に変わっていくのと同時に、聞き慣れた効果音が聞こえて来た。
―――ピロン♪
ベヒモスを倒しました。
経験値1,041,971,830,393,960,000,000を獲得しました。
獣王の胆が1個ドロップしました。
光の鎧が1個ドロップしました。
レベルが上がりました。
ステータスが上昇しました。
これでレベル104。
僕は魔導電磁投射銃内部の砕けたAランクの魔石と『獣王の胆』を交換すると、一度、アールヴの王宮に戻る事にした。
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