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第137話 F級の僕は、ティーナさんから思いがけない事を問いかけられる
第137話 F級の僕は、ティーナさんから思いがけない事を問いかけられる
5月27日 水曜日2
夕方5時前、僕等の前方に、丸く巨大なドーム状の構造物が見えて来た。
陽光を反射して輝くその白い構造物は、どこかあの、アールヴ王宮最奥部の神樹の間を思い起こさせた。
「あれ、何ですか?」
僕の問い掛けに、隣に立つ四方木さんが答えてくれた。
「アレ、元々は内部にゲートキーパーが待ち構えていた場所ですよ。ま、2週間前に伝田様率いるクラン『
それにしても、こんなだだっ
そんな僕の気持ちを見透かしたかのように、四方木さんが言葉を続けた。
「不思議でしょ? アレ、明らかに知性のある誰かさんの手により建てられてますよね? でもその誰かさんは、今の所、正体不明。今回の調査、その誰かさんが誰なのか、少しでもその正体に近付こうって言うのも目的の一つになってます」
話していると、ティーナさん含めたERENの調査官達3人がこちらに近付いて来た。
「Hello, Mr. Yomogi. We want to test our Dimension Interference Device in the Dome……」
四方木さんとティーナさん達が、何かを英語で話しているが、半分以上聞き取れない。
二人のやりとりを聞くとは無しに聞いていると、更科さんが、そっと教えてくれた。
「ERENの調査官達、今回も
「DIDって何ですか?」
「ゲートの接続先を変更出来る装置って事になってます。例えば、本来、91層に繋がっているゲートの接続先を80層に変更したり」
「そんな事出来るんですね」
「もっとも、試作段階なので、今のところ、成功してないみたいですけれど」
やがて話が終わったらしい四方木さんが、僕の方を振り返った。
「中村さん。彼等、あの中でちょっとした実験をしたいそうなんですよ。で、真田君と更科君に立ち会って貰うんですが、中村さんも行きます?」
もし本当にゲートの接続先を変更できるようになれば、それは結構凄い事かもしれない。
「ありがとうございます。是非見学させて下さい」
ERENの3人に加えて、僕、更科さん、真田さんの総勢6名でドームへと向かった。
ドームには、1ヶ所、大きな扉が設置されていた。
その観音開きの扉を向こう側に押し開けると、その先は、野球場がすっぽり収まりそうな位大きな広間になっていた。
壁や天井が燐光を発しており、薄暗いものの、行動に支障をきたす程では無い。
モンスターの気配は無く、僕等が入ってきたのとは反対方向の壁際に、91層に繋がっているのであろう巨大なゲートが、陽炎のように揺らめいているのが霞んで見えた。
そのままゲートに近付いたERENの調査官達に、真田さんと更科さんも加わって、何かの機器のセッティングを開始した。
それをぼーっと見守っていると、ふいに声を掛けられた。
「Hi! You are Takashi Nakamura?」
声の方に顔を向けると、ティーナさんが笑顔で立っていた。
彼女の背中にかかる位の長さのブロンドヘアが、滑らかに輝いている。
「イ、イエス」
なんとか言葉を返した僕に、ティーナさんが再び話しかけてきた。
「I heard you are a special F-rank agent. Right?」
え~と……“アイハード”で、“私は聞きました”だから……
頭の中で、一生懸命英語を日本語に逐語訳試みていると、僕と同年代に見えるティーナさんがクスリと笑った。
「日本語で話しましょうか?」
「えっ?」
流暢な日本語に、思わずティーナさんの顔を二度見してしまった。
「【言語習得】のスキルを持っているので、半日、その国の言語を聞き続ければ、ほぼ習得出来てしまいます」
何それ?
凄く羨ましいんですが。
「それで話を戻しますが、あなたの実際のステータス値と機器を使った計測値との間で
僕の心がさっと緊張した。
つまり、ティーナさんは、僕のステータス値が、測定器で正確に計測出来ない事を知っている?
しかし、それを知っているのは、四方木さんはじめ、N市均衡調整課の限られたメンバーだけなはず。
「すみません。どなたがそのような話を?」
「Mr. Yomogiから教えて貰いました」
やはり、四方木さんが伝えた?
僕は、そこに微かな違和感を抱いた。
なので、無難な言葉を返す事にした。
「……すみません、僕自身はそういうのよく分らなくて……」
ティーナさんは、じっと僕の瞳を見つめて来た。
彼女のどこまでも澄み切った紺碧の瞳に見つめられると、自分自身の奥の奥まで見透かされるような不思議な感覚に襲われた。
「では、右手の手の平を見せて下さい」
「手の平、ですか?」
まさか、こんな所で、いきなり手相占い始めるわけじゃないとは思うけど……
よく分らないまま、僕は彼女の前に右手の手の平を差し出した。
彼女は、僕の手の平にそっと自分の左の手の平を合わせて来た。
「!?」
彼女の行動の意図が読めないまま固まっていると、数秒後、手の平を離した彼女が微笑んだ。
「ありがとうございました」
「えっと……今のは?」
「気にしないで下さい。あなたの事をもっと良く知ろうと……まあ、国際親善みたいなものです」
「国際親善?」
その時、機器類を操作していたERENのメンバーの一人が、こちらに声を掛けてきた。
「Ma’am! Test ended」
「OK……」
ティーナさんが、ERENのメンバー達の方に歩き去るのと入れ替わるように、更科さんと真田さんが、僕の方に歩み寄ってきた。
僕は、二人にたずねてみた。
「どうだったんですか?」
真田さんが、首をすくめた。
「どうやら、今回もうまくいかなかったらしいです」
「今回もって事は、今までも何回か既に実験してるんですね」
「
「そうだったんですね」
“実験”が終了したという事で、僕等は再びドームの外、調査隊の皆が待つ地点へと戻って来た。
僕等の帰還を待っていたかのように、合同ミーティングが始まった。
30分程かけて、今日一日の調査の進捗状況、出現したモンスターの解析、その他の事項が報告され、散会となった。
今夜はここで野営するとの事で、僕も含めた均衡調整課職員達が、テントの設営を開始した。
設営が終わり、周囲に魔法結界が張られたところで、ふと、先程のティーナさんとのやりとりを思い出した。
僕は、近くで設営されたテントの点検を行っている四方木さんに話しかけた。
「四方木さん、今、いいですか?」
「どうしました?」
「ティーナさんの事なんですが……」
「ティーナさん? ああ、サンダース女史の事ですね。彼女、どうかしました?」
僕は、ドーム内部で、ティーナさんが、“四方木さんから聞いた”と話した内容についてたずねてみた。
途端に、四方木さんの顔が険しくなった。
「サンダース女史、中村さんのステータス値と測定値に乖離がある、と確かにそうおっしゃってたんですね?」
「はい」
「……実は、昨日の精密検査の結果、
「それじゃあ……」
ティーナさんは、なぜなんな言い方をしたのだろう?
四方木さんが、険しい表情のまま、周囲の様子を窺う素振りを見せた。
「中村さん、サンダース女史には気を付けて下さい。彼女の能力は、スキル、ステータス値含め、全て
「……分かりました」
設営を終えたテントは、S級達を除いて、数人に1個ずつ割り当てられた。
僕と一緒のテントになったのは、四方木さんと真田さん。
割り当てられたテントに荷物を下ろした後、ようやく夕食の時間がやって来た。
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