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第125話 F級の僕は、第82層のゲートキーパーの間を目指す
第125話 F級の僕は、第82層のゲートキーパーの間を目指す
5月25日 月曜日10
【異世界転移】で『暴れる巨人亭』2階の部屋に戻って来ると、誰かに扉がノックされている所だった。
―――コンコン
「タカシ、いる?」
扉を開けるとアリアが立っていた。
「アリア、丁度いいタイミングだね」
「全然いいタイミングじゃないよ。何回も念話で呼びかけてたのに……って、タカシ!」
アリアが、僕の右耳を指差してやや非難するような声を上げた。
「どうしたの?」
「イヤリング、外してるじゃない!」
イヤリング?
あ、『二人の想い (右)』の事かな?
「ごめんごめん。シャワー浴びてたからさ。その時外したっきりだったよ」
「しゃわー?」
アリアが少し首を傾げた。
そう言えば、この世界、風呂場でシャワーに類するものを見た事無かったっけ?
「ちょっと地球に戻って水浴びしてきたって事だよ」
「そうなんだ……」
僕は、アリアを部屋の中に招き入れた。
彼女は、ベッドの縁に腰かけた。
「やっぱりタカシが“チキュウ“にいると、念話届かないのかな?」
「まあ、地球に戻ってすぐにイヤリング外してシャワー浴びたからね。もしかしたら、アリアが念話を送ってくれた時、たまたま僕がイヤリングを付けていないタイミングと重なっちゃったからかもだけど」
「じゃあさ、今試してみない?」
「試すって?」
「タカシが“チキュウ”にいても、私と念話で通じ合えるか」
アリアに促されるまま、僕は右耳に『二人の想い (右)』をつけた。
それを確認したアリアが、早速、念話で呼びかけてきた。
『タカシ……』
『聞こえるよ』
『じゃあ、このまま一回、“チキュウ”に戻ってみて』
僕は、【異世界転移】のスキルを発動した。
瞬時に視界が切り替わった。
地球のボロアパートの部屋に戻って来た僕は、イヤリングに指を触れながら、アリアに呼びかけてみた。
『アリア、今、地球だよ』
…………
……
そのまま数分間、色々念話で呼びかけてみたものの、アリアからの念話が僕に届く気配は無い。
僕は思いついて、エレンにも念話を送ってみた。
が、こちらも返事は無い。
う~ん、やっぱり、世界の壁を越えて念話でやり取りするのは無理なのかな?
僕は再び【異世界転移】のスキルを発動した。
僕が戻って来た瞬間、アリアがせきこむようにたずねてきた。
「タカシには、私の念話届いてた?」
「ううん」
僕が首を振ると、アリアは目に見えて落ち込んだ表情になった。
「やっぱり念話、無理っぽいね」
「もしかしたら、何か工夫すれば可能になるかも、だけど」
「う~ん……」
アリアは、難しい顔をしたまま考え込んでしまった。
その横顔に目をやった僕は、窓から差し込む午後の日差しを受けたアリアの長い銀髪が、きらきら輝いているのに気が付いた。
その美しさに思わず見惚れていると、ふいに声をかけられた。
「どうしたの?」
アリアが怪訝そうな表情を向けてきていた。
「なんでもないよ! そろそろエレン呼んで、ノエミちゃん連れて神樹行こうか?」
「いいよ」
僕はエレンに念話で呼びかけた。
『エレン……』
途端に、目の前の虚空から、黒地に赤の刺繍が施された不思議な素材の服を着たエレンが姿を現した。
「神樹、行く?」
エレンは、転移してきて早々、そう声をかけてきた。
僕は目の前に立つ彼女に念話を送ってみた。
『さっき地球にいた時、エレンに念話送ってみたんだけど、届かなかった……よね?』
『届いていない。念話は、世界の壁を越える事は不可能』
『そうなんだ……』
……あっさり、念話の世界間通話利用の可能性を否定されてしまった。
「とりあえず、ノエミちゃんを迎えに行ってくるからさ。アリアはちょっとこの部屋で待ってて」
10分後、“
ノエミちゃんに、アリアが話しかけた。
「ノエミ、もう『
ノエミちゃんが微笑んだ。
「アリアさんはお優しいですね。ですが、私が失踪したとなると、イシリオンやエルザ達に迷惑をかけてしまいます。それに何より、光の巫女たる私が、長くアールヴを留守にする訳には参りません。」
「そっか……でも、ホント、危なくなったら、いつでもここに逃げてきて良いんだからね。私もマテオもタカシも、あと、多分そこのエレンもきっとノエミの事、全力で護ると思うよ」
「ありがとうございます。もしもの時は、宜しくお願いします」
話が一段落した所で、エレンが口を開いた。
「第81層、行く?」
昨日、僕は第81層のゲートキーパー、アスタロトを撃破した。
ゲートキーパーが倒され、解放された階層へは、エレンの転移魔法で直接移動する事が可能だ。
僕は、少し考えた後、エレンに聞いてみた。
「第82層のゲートキーパーってどんなやつかな?」
アリアが、不思議そうな声を上げた。
「あれ? 確かまだ第81層のゲートキーパー倒されてないよね?」
「昨日、タカシが倒した」
「そうなの?」
エレンの言葉に驚いた声を上げたアリアが僕の顔を見た。
「うん。実は昨日、あれからノエミちゃんを誘って神樹に行ってね。ガーゴイルの彫像も50本持ってたし、腕試しのつもりで挑んでみたら、あっさり勝てちゃった」
「え~~~!?」
アリアの目がこれ以上無い位、大きく見開かれた。
「ゲートキーパー倒したって、それ、大ニュースだよ? 凄いじゃない」
「正確には、召喚したガーゴイル50体が、押し切ってくれたんだけどね」
僕は、昨夜のアスタロト戦を思い浮かべながら苦笑いした。
「で、話を戻すけど、第82層のゲートキーパーについて教えて貰ってもいいかな?」
僕の問い掛けに、ノエミちゃんが答えてくれた。
「第82層のゲートキーパーは、赤い魔界の凶馬に
幻惑?
僕は第62層でエンプーサと戦った時の事を思い出した。
あの時、僕は不覚にもエンプーサの幻惑の檻に閉じ込められ、もう少しで武装を全て解除してしまう所だった。
「とりあえず、今夜はベリトと戦ってみるよ。ノエミちゃんは精霊魔法で、アリアはエセリアルの弓で援護宜しく」
2時間後、僕、アリア、ノエミちゃん、そしてエレンの4人は、荘厳さを感じさせる巨大な門の前に立っていた。
この扉の向こうが、第82層のゲートキーパーの間。
ベリトが拠る広間になっているという。
昨夜同様、エレンが最短経路で僕等をここまで導き、途中の罠はノエミちゃんが全て無力化してくれた。
他のモンスターと一戦も交える事無く、これほど簡単にここまで辿り着いてしまうと、なんだか、『ゲートキーパー討伐ツアー』に参加している気分になってくる。
と、エレンが右側の何もない空間に手を差し込み、細長い袋を取り出した。
そして、その細長い袋を僕に差し出してきた。
「これ、昨日預かってた小剣」
袋を受け取り、中を確認すると、“ヴェノムの小剣”が入っていた。
僕は昨晩、この小剣とアスタロトの翼をエレンに預けていた。
加工してくれるって話しだったけど、見た所、そんなに変化は無さそうな?
僕が少し戸惑っていると、エレンが口を開いた。
「振れば真空の刃を飛ばせる」
「ホントに?」
僕は、その“ヴェノムの小剣”を装備して、ステータスを呼び出してみた。
―――ピロン♪
Lv.82
名前
性別 男性
年齢 20歳
筋力 1 (+81、+16)
知恵 1 (+81、+16)
耐久 1 (+81、+16)
魔防 0 (+81、+16)
会心 0 (+81、+16)
回避 0 (+81、+16)
HP 10 (+810、+162)
MP 0 (+81、+16、+8)
使用可能な魔法 無し
スキル 【異世界転移】【言語変換】【改竄】【剣術】【格闘術】【威圧】【看破】【影分身】【隠密】【スリ】【弓術】【置換】
装備 ヴェノムの小剣 (風) (攻撃+170)
エレンのバンダナ (防御+50)
エレンの衣 (防御+500)
インベントリの指輪
月の指輪
二人の想い (右)
効果 1秒ごとにMP1自動回復 (エレンのバンダナ)
物理ダメージ50%軽減 (エレンの衣)
魔法ダメージ50%軽減 (エレンの衣)
ステータス常に20%上昇 (エレンの加護)
MP10% (月の指輪)
僕は、“ヴェノムの小剣 (風)”と表示されている部分に、そっと指で触れてみた。
この武器についての説明がポップアップした。
【ヴェノムの小剣 (風)】
ヴェノムの小剣とアスタロトの翼を加工して作られた小剣。
この小剣で攻撃すれば、一定の確率で、相手を麻痺させるだけでなく、毒に冒す事ことも出来る。
麻痺や毒の成功確率、持続時間は、自分と相手とのレベルとステータスの差に依存する。
また、念じながら振ると、MP消費無しに真空の刃 (風属性魔法)を前方に飛ばすことが出来る。
射程は100mで、威力は、知恵の数値の1/10。
威力は低い物の、MP消費無しで魔法攻撃できるのは助かる話だ。
塵も積もれば山となるってことわざ通り、相手の射程外から
「エレン、ありがとう」
心なしか、エレンの表情が
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