第7話 地球への帰還

「このまま緊急発進するぞ!」


僕はそう言いながら、シャトルをパスファインダーの格納庫から発進させた。そしてパスファインダーの外に出て、国際ステーション4のドッキングベイを抜けて、完全に宇宙空間に出る。


僕はシャトルのモニターを操作して国際宇宙ステーション内部を確認してみた。それは信じられない光景だった。黒いウィルスは既にステーション内部に入り込み深く侵食していた。多くの人が既にウィルスに喰べられている。多分ステーションの五万人全員が命を落とすことになるだろう。


僕はまたもや、黒いウィルスの繁殖に手を貸してしまったことを知って愕然としていた。それは横に居るマリーも同様だった様で、彼女の瞳には大粒の涙が見える。


でも僕達はまだ生きている。

地球に帰り、黒色ウィルスの情報を伝えて対処方法を研究しなければいけない。それが唯一僕達に出来る希望だ。


僕達はシャトル内に常備されている宇宙服を着て衛星軌道からの離脱計算に入った。

そしてケネディースペースセンターへの着陸許可を得る為に、統合作戦司令室を呼び出す。


「こちらシャトル1。国際宇宙ステーション4を脱出して地球への帰還を計画しています。ケネディスペースセンターへの着陸許可を願います」

マリーが地上へ無線を投げかけた。

しかし返信が帰ってこない。


僕達は何度も通信試みたが地上と連絡をすることは出来なかった。


「翔、大変。このシャトルには酸素が残り二時間分しか搭載されていないわ」


マリーのその声に僕は目を見開いた。

「なんだって?」


僕がEICASの画面を見ると確かに酸素の残量表示が120minと出ている。


「ケネディへのウィンドウは?」


「次が三十分後、その後は二時間後。次のウィンドウを逃したら帰還する迄、酸素が持たないわ」


僕は少し考えてマリーに言った。

「仕方ない。それじゃ三十分後のウィンドウで大気圏突入シーケンスに入ろう」


マリーもゆっくり頷いてくれた。


僕はシャトル1を軌道に対し逆噴射する姿勢へ回転させ、離脱噴射のタイミングを待った。

「離脱噴射、3、2、1、マーク」


マリーのその声に合わせ、僕はシャトルのエンジンを起動させ軌道離脱噴射を行った。約三分の噴射でシャトルは約秒速九十メートル減速され大気圏突入軌道に入った。

この減速後はもうシャトルを軌道へ戻すのは不可能だ。地球に帰還するしか無い。


僕はシャトルを180度ヨー回転させ、機首を30度上向きにした。この姿勢で大気圏突入を行う。

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