第6話 国際宇宙ステーション4
土星圏を出て二十日後、パスファインダーは地球の高度四百キロ、軌道傾斜角40.1度の衛星軌道上を周回している国際宇宙ステーション4にランデブーしていた。
このステーションは三年前に軌道上で建設され、長さ五キロ、直径一キロの巨大な円筒の内壁を人々が暮らす大地にしており、五万人以上の人口を有していた。
僕はパスファインダーを国際宇宙ステーション4のドッキングポートに進入させた。固縛装置がパスファインダーを固定しステーション側から搭乗橋がパスファインダーに取付けられた。
「準備が出来た者からステーションに降りてくれ。その後は医療関係スタッフの指示に従うこと」
僕は船内放送で指示を流して、シャットダウンチェックリストをマリーと一緒に確認していた。
暫くすると、コックピットのモニターに搭乗ドアが開いた事を示す表示が現れた。
「翔、乗員が降り始めたわ」
そのマリーの声に僕が搭乗口のモニターを見ると、二名の乗員がドアを抜けて搭乗橋に向かっているのが見える。その時だった。
「えっ?」僕はモニターに映った光景に唖然とした。
その二名の身体から黒い何かが飛び出したんだ。
「あれはウィルスか? 何故?」
その黒いウィルスは搭乗橋の先で待っていた医療関係者をあっという間に呑み込んだ。そしてパスファインダーの船内にも一部が移動している。
「マリー! まずい。脱出するぞ!」
僕はそう云うとコックピットのシートベルトを外し、シートから浮かび上がった。そしてシートの背を蹴って、コックピットの後ろのドアに向かう。振り返るとマリーも着いて来ている。
「マリー、後部のシャトルへ行くぞ!」
「ええ、それしかないわね」
僕達はコックピットを出ると後部格納庫に向かった。そこには地球帰還用の二機のシャトルが格納されている。幸いなことに僕達は黒いウィルスに襲われること無くシャトルの格納庫に到達できた。
直ぐにシャトル1に乗り込み、コックピットに入るとシャトルを緊急起動シーケンスに入れた。
コックピットの窓の外を見ると、三名の他の乗員がシャトル2に乗り込もうとしていた。しかし彼らはシャトル2に到達する前に追い掛けて来た黒いウィルスに呑み込まれてしまった。その黒い奴らはシャトル1の僕達に気付いた様だ。
壁伝いに、シャトル1の方へ向かっている。
「マリー、緊急事態だ! 格納庫のドアを開放するんだ!」
「えっ? でもまだ減圧してないけど」
「いいんだ! やってくれ!」
「分かったわ」
その瞬間、パスファインダーの後部ハッチが外側へ開いた。それにより格納庫内は急減圧され、大量の空気と一緒に黒いウィルスは宇宙空間に放り出された。
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