第5話 地球への帰還の日々

タイタンの軌道上でTAV-2は地球往還船パスファインダーにランデブーしていた。


しかし僕の判断でパスファインダーへの移乗は四十八時間後と決めた。もし仮にTAV-2に乗る三十八名の中にウィルスに感染している者が居たら、パスファインダーも汚染してしまうからだ。


幸いのことに四十八時間後、TAV-2の乗員は誰も発症すること無く全員がパスファインダーに移乗することが出来た。


また全乗員の中で僕の階級が一番上だった為、パスファインダーの船長は僕が、副官はマリーが担い、地球の統合作戦本部の指令でタイタンから地球へ帰還する事となった。

パスファインダーは全長二百メートル。核パルスエンジンを備え、土星圏から地球までを約三週間で移動出来る俊足だった。また、地球への降下の為、後部格納庫に二機のシャトルを搭載している。


結局、ダイダロス基地の千五百名で生き残ったのは僕達三十八名に過ぎなかった。地球に向かう三週間は生き残った者にとっても、最愛の人や知人を失って心に大きな傷を負ったり、僕の様に異星人の船を調査しなければと云う後悔に苛まれる『日々』だった。


僕は今回の事件の顛末を報告書にまとめ、ダイダロス基地で記録された映像と異星人から入手したタブレットの情報を含め、地球の統合作戦本部に送っていた。

その結果、僕達は地球へ帰還する前に地球の衛星軌道上の国際宇宙ステーション4に寄港し、そこの医療施設でのメディカルチェックを受けることになった


もちろん、これは当然の判断だと僕達は考えていた。

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