第4話 タイタンを脱出

僕も直ぐに軍本部を出ると、基地のドーム外に在るEast Portの建物に走り込んだ。ここにはTAVが予備も含め四機配備されており、いつでも発進出来る様に整備されていた。このTAV一機で五十名をタイタンの軌道上に輸送出来る。


僕はTAV-2の格納庫に到着し、そこに並んでいる人々を見渡した。相棒バディのマリーを探していたんだ。

その時、僕の右肩を誰かが叩いた。


「何を探しているの?」

そこには笑顔で微笑むマリーの姿が有った。


「あっ、マリー、間に合ったんだね?」


マリーが大きく頷く。

「うん、軍本部の閉鎖の直前に建物に走り込んだの。危なかったわ」


そう言うマリーを僕は抱きしめていた。

「良かった、間に合って……」


僕の腕の中で彼女は何回も頷いていた。


結局、八十二名が時間までにTAV-1とTAV-2に搭乗することが出来た。ハビガー准将はTAV-1に搭乗された。僕とマリーはTAV-2だ。


軍属全員がTAVの操縦資格を持っていたが、今日は僕とマリーがTAV-2の操縦を担当する事となった。


コックピットの外部モニターにTAV-2の搭乗橋が格納されて行くのが映っている。

しかし僕はその映像を見て衝撃を受けていた。


TAVに乗り遅れた人々が搭乗橋のたもとに群がっている。しかしその人々の後ろから黒いウィルスが迫っているのが見える。

僕には分かっていた。

(もうあの人達は助からない……)


無線にTAV-1からの緊急通信が入る。ハビガー准将からだ。

「TAV-2、全ての段取りを飛ばし、最速での離床リフトオフを許可する! 急げ!」


「了解です! マリー! チェックリストはそこまでだ。格納庫のドアが開放したら緊急発進するぞ!」


「分かったわ。ドア開放まで五秒!」


格納庫の天井ドアが開いて行く。ドアの完全開放を待つ事なく僕は発射のカウントダウンを始めた。


「Tマイナス、3、2、1、マーク」


センタークラスターのスラスターボタンを押すと、TAV-2の六機のロケットエンジンが点火し機体が離床リフトオフした。

後部モニターにダイダロス基地の丸い透明ドーム内の様子が映されている。基地内の地面には黒いウィルスが大量に見える。あの中に残った全員の命が失われたのだろう……。


その時だった。TAV-1から通信が入った。ハビガー准将の声だ。

「TAV-2へ一方通信。TAV-1内にウィルスが侵入した。パスファインダーや地球へのウィルス拡散防止の為、TAV-1はここで自爆する。君達が無事、パスファインダーに到着する事を祈っている」


その瞬間、後部モニターに映っていたダイダロス基地の東側に在るEast Portが爆発した。それにより、ダイダロス基地のドームも損傷し、基地の与圧も破壊された様だ。


僕達はこれにより黒色ウィルスも完全に死滅したと考えていた。

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