第3話 ウィルスの拡散
翌日の朝、僕は大きな音に目を覚ました。よく見ると昨日解析していたタブレットに電源が入り、映像と音声が繰り返し流れている。
それは驚愕の内容だった。僕はその内容を見て宇宙船内から異星人が消えた理由を理解した。
そこには僕達とよく似た姿をした異星人が映っており、彼等はある惑星での調査で“あの魚”を捕獲していた。その魚は何かのウィルスに侵されており、そのウィルスが人に感染すると人間の身体を消化しながら爆発的に増殖していく。ウィルスに感染した異星人の映像を見ると身体の内部から黒いシミが現れ、それが身体を侵食しながら増殖していき、数分で異星人の身体は喰いつくされ大量の黒色ウィルスが残される。それが次の生物を目指して宇宙船の中を高速で移動していくのだ。
「これは……。異星人は全てあれに食べられたのか……? ちょっと待て……。ウィルスの侵入経路があの魚だとすると……。まずい!」
僕は急いで部屋の通信端末から西地区に在るラボを呼び出した。ラボには昨日、あの魚の解析を依頼していたからだ。
しかしラボは全く応答してくれない。僕はその端末を操作しラボの監視カメラの映像を呼び出した。しかし、そこにはいくつかの白衣が転がっているだけで人の姿が見えない。
「まさか、既に、ウィルスに……?」
その時だった。突如、基地全体に警報が流れた。
「
僕は急いで制服に身を包むと、タブレットを持ってドーム内へ飛び出した。僕達の宿舎がある東地区から西地区を見渡すと、遮蔽システムが西地区との間を閉鎖しているのが見える。僕は踵を返して宿舎の隣の軍本部の建物に飛び込んだ。
既に軍本部内も蜂の巣を突いた様な大混乱だった。
僕は三階にある軍司令室に飛びこんだ。混乱の中、そこでは緊迫した状況に対処する為、基地司令のハビガー准将以下のメンバーが作業していた
「西地区の管理室も全滅した。ダイダロス基地の管理は軍司令室に移管する」
准将の声が響く。
僕はタブレットを持って准将の席の前に走り込み、敬礼をした。
「少佐。どうした?」
「准将、このタブレットの映像をご覧下さい。私は昨日の宇宙船調査で同じ魚を発見し、”西地区“のラボに解析をお願いしました」
そう言いながら僕はタブレットの映像を准将に見せた。
あっという間に彼の顔色が変わる。
「これは……? これと同じことが西地区で起きているのか……?」
彼が信じられないと声を上げる。
「そうだと思います。西地区を遮断した決定は正しかったと思いますが、この黒色ウィルスが他の地区に飛散していないかを精査する必要があります」
僕の声に准将が深く頷く。その時だった。
「北地区、作業員宿舎で異常発生!」
「南地区、総合病院も緊急事態!」
その報告に准将は自分の席から立ち上がり驚いた様に各地区のモニターを見つめた。両地区でも黒色ウィルスが人を襲っている映像が見える。
准将が肩を落とし、自分の席に深く腰掛けた。
「北地区及び南地区を緊急閉鎖だ! 急げ!」
その声を受けて、各地区との間の遮蔽システムが作動していく。だが、その遮蔽の直前、北地区から数名の男性が東地区に侵入したのが確認された。その男性達は東地区に入って直ぐに黒色ウィルスを身体から放出した。
そのモニター映像を見てハビガー准将が叫んだ。
「今よりダイダロス基地を放棄する。East Portに在る国連軍のTAV(Titan Ascent Vehicle)を緊急発進させる。軍本部は建物の入口を閉鎖。TAVは十五分後にEast Portから
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