32. だいさんのめびーむ!

「痛い……」


 ヒリヒリとした痛みにベバムは起こされる。


「……朝か」


 窓の外は既に明るかった。

 おかしいな、ショーの脚本を書いていた気がするんだが、途中で寝てしまったのだろうか。ベバムはぼんやりとした頭を回転させて、何が起こったのかを思い出す。

 浮かび上がって来たのは、怪しい薬を飲ませようするイシャの姿だった。


 ***


 ほわほわほわほわーん。


『さあ、飲みましょう!一緒に幸せになりましょうよ!!」


『おい!止めろ!俺に近づくな!』


 ***


「ああ、思い出したくない……」


 嫌な記憶を思い出してしまった。次のショーの脚本を書いていたら、イシャが”絶対に病気にならない薬”とか言う変な薬を飲ませようとしてきたのだ。イシャが作った薬なんて、恐ろし過ぎて飲めるわけがない。


「ふぅ……」


 痛みがようやく落ち着いてくる。しかし、ナイフでチクチクと突き刺すような小刻みの痛みが続いている。フナには大丈夫だと伝えたが、中々厳しいかもしれない。

 腰をさすりながら、ベバムは再びベッドで横になる。


 ***


 ほわほわほわほわーん。


「ベバムは大丈夫じゃ無いよ!ならどうして今日動けなくなったの!!今までずっと無理をし続けてたからでしょ!!」


 ***


 フナの言葉が頭の中で響き渡った。まあ、長い事空飛ぶ芸人として、ショーをやって来たが、確かに無理をしていた部分もあったかもしれない。ハイスピードモードを連発したのが決定的だっただろうか。

 まあ、後悔しても仕方ない。大切なのは今とこれからなのだから。


 さて、何をやろうか。イシャからは安静にしているよう言われているし、ベッドから離れる事は出来ない。


「ショーの脚本の続きを書くか。どこまで書いたっけな……」


 次のショーのタイトルは、”覚醒!第三の目!放て!目からビーム!!”だ。


「ふぇ!?さっすが、ベバム!”第三の目”か何かで敵が見えたんだね!すっごい!」


 フナのこの発言がきっかけで、この物語を生み出す事が出来た。


「人々の笑顔を招く為には、常に人々がどう喜ぶかを考える必要がある。どんな時でもネタをつくる事が、世界平和に繋がるんだ」


 こんな話をフナにしたが、どんな経験や体験だって、創作に活かす事が大切なのだ。”覚醒!第三の目!放て!目からビーム!!”の次は、オヌルラの脱出劇を元にした、”逃げろ!絶望と死が渦巻く恐怖の村!少年は自由を願う!”なんて良いかもしれない。今度はシソに協力して貰って、三人でショーをやるのも面白そうだ。


「まあ、今は続きを書くか」


 ベバムは脚本の内容を再確認する。


 旅を続けるベバムとフナの二人。そんなある日、ベバムの頭の後ろに突如”第三の目”が出現する。


 ***


 フナ: え!?頭が痛くて熱い!?たいへん!やっぱりお熱があるんだよ!!すっごく冷えたタオルを持ってきてあげるね!!


 ベバム: ふ、フナ違う!!違うんだ!!


 フナ:え!?何が違うの??


 ベバム:う、うわぁぁぁぁぁ!??


 ***


 良いところでイシャに邪魔されてしまった。さて、この後の展開はどうしようか。

 ベバムはしばらく考えた後に、脚本の続きを執筆する。


 ***


 ベバム:う、うわぁぁぁぁぁ!??


 フナ:ベバムぅぅぅぅぅ!!??


 ベバム:うぎゃぁぁぁぁ!?うおおお

 おおおおお!?


 フナ: ベバムぅぅぅぅぅ!!??


 ベバム:く、くぅぅぅ!!熱い!熱いぞぉぉぉ!!ぐあああああああああ!?!?


 フナ: ベバムぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!????溜めが長いよ!?


 ベバム:あ、すまん。じゃあ、出すわ。ぐあああああああああっ!!!?


 ※ベバムの”第三の目”から眩い光が放たれる。


 フナ:こ、これは……!!ビームだぁぁぁ!!ベバム!ビームだよ!!ビームがでたよ!!!


 ベバム:ビ、ビームだと!?どうして俺の”第三の目”からビームが放たれるんだ?


 フナ:ふふふっ、それはね!ベバムが”選ばれた才能の持ち主”だからだよ!


 ベバム: ”選ばれた才能の持ち主”ら。オーバーリアクションで子供たちを喜ばせれる才能か?


 フナ:何言ってるの!?ベバム!?全然違うよ!!


 ベバム:それとも、他人の神経を逆撫でするような煽りが出来る才能か?


 フナ:だから全然違うって!?さっきから何言ってるの!?ベバム!!おかしいよ!!


 ベバム:それとも他人の不幸を堂々と喜べる才能の事か?


 フナ:どんどん酷くなってるよ!?大丈夫なの!?ベバム!?


 ベバム:そうか、”第三の目”からビームを出せる才能か!


 フナ:そう!それだよ!!私が言いたかったのはその才能だよ!!


 ベバム: あはははっ!そうかそうか、俺は第三の目からビームを出せるという、選ばれた才能の持ち主だったんだな!


 フナ:そうそう!その通りだよ!!


 ベバム:なるほどなぁ!ビームが出せるのか……ただ、熱いし、痛いし、疲れるし、身体中のエネルギーを持って行かれた気がするし、何か寿命が縮んだ気がするし、もう出したく無いなぁ


 フナ:え?凄い!どうして寿命が縮むって分かったの!?


 ベバム:え?何を言って……!?


 フナ:ベバムの第三の目ビームはね!ベバムの生命エネルギーを使ってるから、ベバムの寿命はゴリゴリ削られていたんだよ!!


 ベバム:は……?え……!?


 フナ:第三の目覚醒にも沢山の生命エネルギーを使ったからね!第三の目覚醒に10年分の寿命、ビーム一発に1年分の寿命かな!


 ベバム:ちょ!?え!?フナ!?何を言っているんだ!?


 フナ:あはははっ!ずっとベバムには黙ってたんだけどね!実はね、私はビームの妖精なんだよ!!


 ベバム:ええええ!?ビームの妖精!?


 フナ:うん!まもなくこの世界に65体の悪魔が現れるんだよ!!ベバムは第三の目ビームを使って、65体の悪魔を倒さないといけないの!ベバムと私で世界を救うんだよ!!


 ベバム:まっ、待ってくれ!65体の悪魔って……仮に一体一発で倒せたとして、俺の寿命が全部で80年だとするぞ!第三の目覚醒に10年、さっきの一発に1年使ったとして、そこから65年引いたら、俺15年しか生きれないぞ!?


 フナ:でも世界は救えるよ?


 ベバム:いや、でも俺死んじゃうよ!?


 フナ:でも世界滅んじゃうよ?


 ベバム:ま、マジかよ……!?どうして……!!ああ……!!


 つづく!

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