31. せかふくにはいろう!
シソとフナは通りで突如現れたマズイと名乗る少女に、料理屋マズイまで案内してもらう事になった。
少女が自己紹介をしてくれる。
「私はマズイマズ。この”ウラミチ”で料理屋マズイという店を営んでいるマズ」
“ウラミチ”とは表通りから外れたこの道の事を言うらしい。
「その言葉、最初に聞きたかったですよ……」
随分と長くかかってしまったが、ようやく少女の名前を知る事が出来た。少女の名前はマズイ。クヴィットの話していた料理屋マズイの店主のようだ。まさかこんな幼い女の子とは思わなかった。
「マズイは名前を教えてあげたマズ。次はあなたたちがマズイに教える番マズ」
この子は語尾にマズを付ける癖があるようだが、料理屋の中でマズマズ言って、影響は無いのだろうかと思ってしまった。まあ、店名が料理屋マズイの時点でもうアレなんだけど。
「私はフナ!よろしくね!」
フナが元気に自己紹介。
「フナは世界征服がしたいマズか?」
いきなりなんて質問をするんだこの子は。
「世界征服かぁ。面白そうだけど、私は世界中の皆が幸せになって欲しいからなぁ」
「ならマズイの敵マズね」
「敵認定されちゃったよ!?悲しいよ!」
フナがマズイに敵認定されてしまい、悲しんでいる。
中々に判定の基準がシビアだな。
「あなたの名前を教えて欲しいマズ」
マズイの質問の矛先は、シソに向けられる。
「僕はシソです。よろしくお願いします」
あんまり余計な情報を話すと、面倒な事になりかねないので、自己紹介は必要最低限の情報だけにしておいた。
「あなたは世界征服したいマズよね?」
「ええ、まあ……それはかとなく、程々に」
「良かったマズ!嬉しいマズ!これであなたも”セカフク”の仲間マズ!」
「セカフク?セカフクって何ですか?」
「セカフクは”世界征服を企む会”の略称マズ!」
世界征服を企む会いう物騒な名前の会に入れられてしまった。
「世界征服を企む会とは何ですか?」
「文字通り世界征服したいなーって思ってる人たちが、どうやったら世界征服出来るのかを一緒に考える会マズよ」
そんな会があるのか……
「へえ!面白そうな会だね!私も入りたいな!」
フナは興味津々のようだ。
「あなたも世界征服するマズカ?」
「うん、するよ!」
「じゃあ、あなたもセカフクの仲間マズ!」
フナはあっさりと受け入れてしまった。さっきの言葉は何だったんだ。
「フナさん、世界中の皆が幸せになって欲しいって言ってましたよね?マズイさんが世界征服なんてしたら、酷いことになりますよ」
「酷い言い方マズね!失礼マズ!」
マズイが何か言っているが無視する。
「うーんでも、私達が世界征服する事によって、皆が幸せになれば大丈夫なんじゃないのかな?」
「皆が幸せになる世界征服ですか。面白い考えです。流石フナさんです」
「えへへっ。褒められた」
フナが嬉しそうに喜ぶ。
「良かったマズ!セカフクに二人も新しいメンバーが入ったマズ!セカフクのメンバーも喜ぶマズ!」
世界征服を企む会、略してセカフクにシソとフナは入る事になった。
「セカフクが世界征服について考える会なのは分かりました。具体的にはどんな活動をしているんですか?」
「セカフクの会員は、料理屋マズイの料理を、定価の一割引で食べれる特典があるマズ!」
うーん、反応に困る特典だ。
「一割引……微妙な特典ですね」
「シソ君、そんな事ないよ!」
フナが真剣な表情でシソに訴える。
「1エンでも安くなれば、私達は幸せになれるんだよ!その1エンを別の幸せに使えるんだよ!!だから全然微妙じゃないんだよ!!」
あまりの迫力に、シソは圧倒されてしまう。
「まあ、確かに安くなるのは嬉しいですけど……」
ちなみに、この世界の共通貨幣単位はエンだ。円じゃなくてエンだ。よろしく。
「フナはよく分かっているマズね!セカフクの基本活動は、料理屋マズイで美味しい料理を食べながら楽しくお喋りする事マズ」
料理屋マズイでマズイの作った美味しい料理を食べる。それがセカフクの活動らしい。シソは、気になった事をマズイに質問する。
「勿論、世界征服について話してるんですよね?」
「違うマズよ」
ーーえ、違うの……?
あっさり否定されてしまった。
「仕事の話とか、好きな食べ物の話とか、思い出話とか楽しい話マズね!」
「世界征服の話はどこにいったんですか!?」
「世界征服の話はみんな真剣になっちゃうマズ。会員同士で対立するのは良くないマズからね。あくまでのんびり楽しくを、モットーに活動してるマズ。世界征服の話は気が向いた時に、する感じマズね」
「よくそれで世界征服したいとか言えましたね!?セカフクとか言いながら、結局飲み食いしてお喋りするだけの会じゃ無いですか!」
「何か問題マズか?」
「問題だらけですよ!」
マズイの話によると、最初は真面目に世界征服について議論していたらしいが、意見が対立してまとまらず、ギスギスした雰囲気になってしまった。世界征服はしたいけど、ギスギスした雰囲気は嫌だし、楽しくないし、ハッピーになれないと思ったマズイは、会の方針を大きく変える事にした。
ちなみに、マズイはセカフクこと、”世界征服を企む会”の会長をしているらしい。世界征服だけじゃ無くて、もっと楽しい話題で盛り上がり、会員同士の親睦を深めようとしたらしい。その結果、会員同士の親睦は深まったものの、当初の目的だった世界征服には程遠くなってしまったのだった。
「でも楽しそうだよ?」
フナは好意的に受け止めているようだ。
「そうマズ!人生は楽しむモノマズ!世界征服だって、楽しくやるのが一番マズ!」
「世界征服に向かってすら無いじゃ無いですか!」
セカフクの話は一旦やめる事にした。
***
そもそも、シソたちが料理屋マズイに向かっている理由は二つあるのだ。一つは、朝ごはんを食べる事、もう一つはお仕事をもらう事だ。朝ごはんはともかく、お仕事についてマズイに聞いていなかった。
「マズイさん?」
「む、むう!?何マズか!?今度は何マズか!?」
随分と動揺した様子のマズイ。名前を呼んだだけなのに。
「マズイさんに頼めば、仕事が貰えるって聞いたんですが……」
「ププッ。仕事マズか。プププッ」
何やら怪しげな笑みを浮かべているマズイ。嫌な予感しかしない。
「そうマズか、仕事が欲しくてマズイの所に来たマズね!ププッ。とんでもなくキツい仕事を与えて、懲らしめてやるマズ!プププッ」
「後半のセリフは、心の中に留めておいた方がいいですよ」
「ああ!またシソが悪口言ったマズ!」
「今のも悪口になるんですか!?」
とまあ、こんな感じでマズイから仕事を貰える事になった。
そして、しばらく歩いた先でようやく……
「着いたマズよ!ここが料理屋マズイマズ!」
シソたちは料理屋マズイへ到着する。
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