僕の空はいつも灰色
一水素
1. プロローグ
僕には普通の人にはない不思議な力があります。ですが、不思議な力と言ってもそんなにすごいものではありません。炎を操れたりしたりだとか、人の心を読むといったものは、欲しいなとは何度も思いましたがどうやら僕には与えられなかったようです。
僕の持っている不思議な力は、自分の今の気分を天気で表したものが見える、というものです。たとえば、気分がいい時にこれを使うと、晴れていてとても綺麗な空が見えます。逆に、気分が落ち込んでいる時にこれを使うと、土砂降りとまではいきませんが雨が降っている様子が見えます。そして、これらの景色が見えるのは決まってどこかの小高い丘の上の公園です。しかし、この不思議な力が使えるのはなぜか一日に一回だけです。一回使ってしまうと明日になるまで待たないといけません。
ながながと不思議な力の説明をしましたが、実際に僕がこれを使うと、晴れでもなく雨でもなく、ただ曇った空だけが見えます。気分がいい時でも悪い時でも曇り空から空模様が変わったことはありません。...僕が思うに、この不思議な力は自分の心の奥底で思っている感情が天気に表れるのではないかと思います。つまり、僕が心の底から嬉しさや悲しさを感じることができれば、天気も曇り空以外のものになると思うのです。実際に、この不思議な力が使えるようになった最初の頃は、曇り空以外の天気の時もあったのです。
不思議な力が使えるようになったのは、高校生の時でした。何の脈絡もなく、急に、僕は自分の空が見えるようになりました。最初に見た空色は、灰色の雲で覆われていました。それ以降は晴れたり雨だったりと様々でしたが、ある時から僕の空は灰色しか映さなくなったのです。そして、それは大学に入った今も変わりません。原因を考えようとも思いますが、日常生活に支障もないのでついつい忘れてしまいます。
おっと、いつの間にか朝になってしまいました。僕の家からは、綺麗な日の出を見ることができます。この景色を毎日眺めてから大学に行くのが僕の日課です。
ふと、テレビを見ながら不思議な力を使ってみます。今日の天気は晴れの予報なのですが...僕の空は灰色で覆われていました。
僕の空はいつも灰色 一水素 @Monohydrogen
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。僕の空はいつも灰色の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます