JOHNs Report『カイル・カーティス』
2038.09.11 ジョン・ヒビキ少尉 記
カイル・カーティス。彼はそう呼ばれていた。僕のソウルフレンドにして、この物語の主人公とも言える野郎さ。
彼はリ・アメリカ連合国、戦闘諜報軍の狙撃手だった。彼は僕らと同じデザイナーベイビーで、狙撃手として最強の遺伝子を引き継いでいた。
なんでもかんでも「遺伝」だの「デザイン」だので判断するのはちょっとロマンがない話だけれども、実際彼はすごかった。
だが彼は人格的に優れていたとは言えない面もあった。プライベートではとてもだらしない。ひと目を気にせず自慰行為にふけっているし、部屋もとても散らかってて悪臭がする。彼がする食事といえば携帯食とヌードル、そして数錠の栄養剤を貪るだけで済ませ、寝る前は精神安定剤とタバコを交互にキメる。
僕も最初から彼のことが好きだったわけではなく、むしろ嫌っていた。彼のライバルだった狙撃手の少女……フィオラさんの方がエースに相応しいと思ってた。
でも彼の前でそれは言えなかった。言うと普段のいけすかない顔を歪め、半殺しにされるからだ。彼なりにフィオラに対抗意識は持っていたんだろう、と今になれば思う。
カイルは、フィオラと比較する奴を殴り倒したあと、決まってこう言う。
「おれとフィオラを比べるな。おれに対する侮辱だけではなく、彼女に対する冒涜だ。おれとフィオラが組めば貴様など一瞬で片道あの世行きだ」
そんなカイルだけども、今となっては僕の友達だ。彼のことは大事な家族のようにも思える。
この物語は彼が自分の罪に決着をつける物語だ。
そのことは後で話すとして、ストーリーはラスボスを倒してハイ終わり、と言うわけにはいかない。
彼とバーンズはコインの裏とそして表だ。
これは、彼の生の話であり、そして死の話だ。
それじゃあ、はじめよう。まず僕らはある任務があって、狂気的な大自然を有するある島にVTOL輸送機で向かっていた――
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