Act.20 後継ぎ争いⅠ
「くっそ!」
同じころ、ファビアンもまだ起きていた。目の前には、ウイスキーの小瓶が散乱している。
「なんで誰も俺と組もうとしねえんだ・・・・」
あの後、最後に来た老人ラッドにも同盟を持ちかけたが、「野蛮人と組む気はない」とばっさり断られてしまっていた。
「くっそお・・・・」
イラつきながら、小瓶をあおる。
(俺には、金が必要なんだ。もうそろそろ催促が来ちまう)
ファビアンは、重度のギャンブル中毒であった。それゆえに莫大な借金を作り、今回は教授の遺産目当てで参加していた。
「教授位なんて、いくらでも譲ってやるって言ってんのにあいつらはぁ!」
真っ暗な部屋で、月光に照らされたアルコールとファビアンの野獣めいた眼がギラギラと輝いていた。
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次の日、朝食が終わると、アイン・スターシュタットがどこからともなく現れた。
「では、役者もそろったところで、選抜を始めようかの」
よぼよぼの腕が舞い、全員に招待状のような紙が投げられた。なぜかニコラスにも降ってきたので、見てみた。
・古代の記録は、人類最古の発見とともに星の形を示し、
・星の形は魂の通貨によって神の使徒を示す
・神の使徒は道と針を示し、汝らを神の住居へと誘うだろう
・使徒は慈悲深く、汝らの信心に免じ、神への面会をお許しになるだろう
といったよくわからない文面だった。ふと、周りを見てみると皆が頭を抱えながら、うなっている。
「アイン教授」
ニコラスが声を上げた。
「なんじゃ?」
「なぜ、俺のところにも紙が来ている?」
「力試しじゃ」
「・・・・・・・」
「お主もコンスタンスの弟子なら、見事解いてみせよ」
「・・・・魔術師に魔法のことがわかるわけなかろう」
「かっかっかっか。それはお主の知識に問うことじゃな。それでは、諸君。スタート地点に移動しようかの」
参加者はぞろぞろとアイン教授に着いていき、応接間の上階、つまりはドーム状の部屋に案内された。
「ではでは、ここから選抜は始まる。健闘を祈るよ」
おどけたように言った教授の姿が霧のように消えていくのを見送り、部屋に視線を戻した。
ドーム状の天井には、星が描かれており、本物と同じ配置になっていた。黄道十二星座が線で結ばれており、その下に12個、長方形の石柱が鎮座している。そして、その石柱のすぐ下には魔法陣が描かれていた。
周りの魔法師たちは、それぞれ紙を手に頭をひねっていた。同盟関係もあるが、それを周りに知られたくないがゆえの行動だろう。
※次回更新 6月21日 21:00
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