Act.11 指名依頼


 ニコラスがニナの頭に手をおいて、話しを続けた。


 「あんた、手伝いが欲しいって言ってたろ。こいつを雇ってくれないか」


 「はああ、手伝いの経験は?」


 コンスタンスがため息をつきながら尋ねた。


 「えっと、一応メイドのライセンスは持っています」


 「ほう、ニコ坊も心得てるじゃないか。・・・・それで、依頼のことってなあ、なんだい?」


 「あんたの指名依頼の報酬として、こいつをかくまってやってほしい」


 「・・・・入りな」


 コンスタンスの曲がっていた背がしゃんと伸び、顎で裏口を指した。ニコラスは裏口に周り、その後にニナが続く。


 中には安楽椅子やシックな模様のテーブル、食器棚などが整然と並んでいた。その様子からも綺麗好きなのがわかる。


 「座りな」


 赤茶色の使い込まれたソファに腰かけ、2人はコンスタンスに向き合った。


 「かくまうってな、どこからだい」


 「バリー・パーファ」


 「・・・・あの悪趣味なデブのことかい」


 「ああ。ないとは思うが、もしかしたらいやがらせの1つでもしてくるかもしれない。頼めるか?」


 「いいよ。それで依頼の報酬金がゼロになるんだろう? こっちとしては願ったり叶ったりだ。指名依頼の詳細は、マイルズに渡してあるからね。ちょっとばかし、デリケートな問題だから」


 「で、でもそれじゃあ、ニコラスさんがタダ働きに・・・」


 「頼るなら遠慮するな。お前は自分のことだけ考えてればいい。俺のことは気にするな」


 ニナのほうを見ずに吐き捨てたニコラスは、コンスタンスに黙礼して、立ち上がった。口をはさむ間も与えずに、ドアから姿を消す。


 「え、あ、ちょっと、」


 「無駄さね。礼ならいらんといつも言ってるよ、ニコ坊は」


 「そうなんですか」


 「そう。あいつは人を助けることをいいことだとは思っていない。どちらかというと、自分の義務みたいに感じてる節がある。そっとしときな」


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 ギルドに戻ったニコラスは、マイルズに一言だけ「依頼を受ける」と言い、依頼書を受け取った。


 カウンターの奥に引っ込み、目を通し始める。


 (魔法大学、教授地位の後継ぎ争い?・・・・その監督役を中立の者に依頼したく、ギルドに指名依頼を申し込む。たいそうな文面だ)


 魔法大学の教授は全員で13人いる。もともとは12人だったが、現代魔法科という、魔術もからめた魔法体系ができてから追加されたらしい。それらはすべてで後継者争いが行われている。


 (キナくせえのを持ち込みやがって・・・・・)


※次回更新 6月12日 21:00

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