ある雨の日に3

部屋に戻ると、猫が寝息を立てて寝ていた。

安心し切ったその寝顔は、とても野良とは思えない。やはり、どこかの家猫が逃げ出してきたのでは無かろうか。

起きたら食べるだろうと思い、適当な器に餌と牛乳を空けて近くに置くと、自分も買ってきて置きっぱなしの惣菜と弁当をレンジで温めて夕飯にする事にした。

こんな生活をするようになって数年。

あの頃の自分が、今の自分を見たら何というだろうか。かつて、有名な賞を受賞し、小説家としても将来を期待されていたが、それっきり鳴かず飛ばず、もはや、世間からは存在自体を忘れられているであろう自分は、これから先どうしたいのかも分からない。それでも、未だに小説を書きつづけているのは、やはり諦め切れていないのだろう。

今のままでは、この生活だっていつまで続くか分からない。デビュー作で得た印税も賞の賞金も、決して多くはなかった。

出版社のバイトだって、生活するにはギリギリだった。

なにか、新しい小説を書いて賞を受賞して。

そんな、叶うかどうかも分からない夢を見ている。

シャワーを浴びて、寝床に入る頃には、時計の針は日付けを超える寸前だった。

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