ある雨の日に2
「ただいま」
カギを開けて帰宅したマンションの一室は、当然真っ暗で、急ぎ電気を付ける。
リビングのテーブルの上には、バイトへ行く前に済ませた朝食の食器が置かれたままになっていた。
部屋干ししたままの洗濯物の中から、まだ生乾き気味のバスタオルをひったくると、脇に抱えたままの猫を急ぎ拭いてやる。
冷蔵庫に牛乳はあっただろうか。
そんな事を考えながら、全身をある程度拭いてやると、少し震えていた体が落ち着いてきた。洗面台からドライヤーを持ってきて乾かそうとしたが、ドライヤーの音と熱風が嫌なのか、暴れだしたので辞める。
「ニャア」
バスタオルに包まれ、まるで生まれたての赤子の様なその姿に、なんとも言えない気持ちになった。
「ちょっと待ってな。」
ソファーに座らせると、キッチンに向かった。
冷蔵庫を開けると、空っぽの中身を見て、溜息をつく。
せっかく帰ってきたというのに、また出なければいけないのかと思うと、憂鬱な気分が一層増した。
「おとなしくしてろよ。」
猫の元に戻り、軽く頭をなでると、牛乳と餌を買いに部屋を出る。
マンション脇のコンビニに駆け込み、牛乳と適当に猫缶をカゴに入れ、レジに持っていった時に、ふと、気づく。
そういえば、あのマンションはペット飼育可能だっただろうか。
この街に来て数年、都会に憧れて住み始めたあのマンションは、他の住人がペットを飼っていたか、思い出そうとしたが、人付き合いのない自分にはわからなかった。
明日にでも、不動産会社に問い合わせよう。
コンビニを出ると、雨は止んでいた。
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