猫と私と日常と

夜桜

ある雨の日に1

その日は、生憎の雨模様だった。

出版社でのバイトを終え、憂鬱な気持ちがより一層強まった。

ニュースでは、関東地方の梅雨入りが報じられていた。

途中のスーパーで、半額になった惣菜と弁当と飲み物を買い、

少し雨脚の強くなった家路を急ぐ。

ふと、通い慣れた道端にある自販機に目をやると、

雨に打たれてずぶ濡れになった一匹の猫が居るのに気が付いた。

自販機の片隅の、辛うじて濡れないであろうその場所で、じっとして動かないその猫と、目が合った。

何処かの飼い猫が家から抜け出したのか、それとも野良猫か。

「ニャア」

無視して通り過ぎようとした時、雨音に紛れて、鳴き声が聞こえた。

「どうした。お前も迷子か?」

近づいても、逃げようとしない。人間慣れしているようだ。

「ニャア」

雨から逃げるように、俺の膝下までくると、ジッと見つめてくる。

首元を見ると、やはり首輪は着けていないようだ。

「ウチ、来るか?」

「ニャアォ」

か細く鳴く猫を抱き上げ、少し雨脚の弱まった道を帰る事になった。

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