第52話 王都到着

 自分に似ているという曾祖母の姿。

 正直に言えば、気になるといえば気になる。

 私の親戚という意味では、王妃殿下もそうなのだろうけれど、正直、実感はわかなかったりする(あまりにも美しすぎて)。

 同じように親戚といえば、マイア―ル男爵家の人々もそうなのだろうけれど、あちらは、また、本当に母の親戚なのか、と思うくらい……似ているところがなかった。


 だからこそ、見てみたいと思った。


 それとなく王妃殿下に頼んでみれば、後日、王宮に持ってきてもらおう、という話になった。なんでも、バーンズ公爵家の領地は、王都から少し離れた西に行ったところにあるらしく、簡単に行って帰ってこれるような所ではないらしい。

 そんなに手間がかかるとは思っていなかっただけに、少しだけ申し訳ないと思ってしまう。それでも、エルドおじさんや王妃殿下も見てみたいから、と言って下さった上に、移動中にも関わらず、エルドおじさんの伝達の魔法陣で連絡までしてくださった。


「王都に着くころには、絵も届いているかもしれない」

「楽しみです」


 私は少しワクワクしながら、窓の外の景色に目を向けた。




 久々に見た王城は、相変わらず大きくて圧倒される。ついついじっくりと観察している間に、王城の入口にある大きなロータリーに、馬車が入っていく。

 馬車のドアを開ける前に、窓からカイルが駆け寄ってくる姿が目に入った。酷く強張った表情に、何かあったんだろうか、と不安になる。

 一方のカイルは、馬車から下りてきた私の顔を見て、ホッとした表情に変わったかと思ったら……思い切り抱きしめられた。辛うじて、変な声を出さなかった私を、褒めてほしい。


「よかった。無事に来れたんだね」

「は、はひっ!?」


 唐突なことに目を白黒している私。

 先に下りていたエルドおじさんと王妃殿下の視線が、なんか生ぬるい気がする。


「どうしたというんだ。我々に挨拶もなしにいきなり抱きつくなんて、お前にしては珍しいじゃないか」


 エルドおじさんが、呆れたような声を出しながらも、ニヤニヤ笑っているし。

 王妃殿下はクスクスと笑っている。


「笑い事ではなありません」


 カイルの表情は、再び厳しいものに変わる。


「……本当に何があったというの」

「偽装のために出していた馬車が襲われました」


 カイルは私を抱えたまま、声を潜めて言った。


「何っ」

「詳しいことは執務室で」

「わかった……レイは部屋を用意してあるから、そちらに。ベアトリス、頼むぞ」

「はい」


 返事をしたメイド服を着た護衛でもあるベアトリスさん。しっかりとカイルの腕の中から私を救出した後、王城の中へと案内してくれることになった。

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