<ショーン>
次の講義へと向かう途中、親父から、珍しく伝達の魔法陣が届いた。中身はどうせ他愛ないことだろうと、すぐには開かず、教室へと向かった俺。
講義が終わったところで、いつものように、構内にあるカフェにクラスメートたちと向かう。
雑談しながら、メモを開いたとたん、パラッと落ちたのは、最近、貴族の間で流行り始めているという写真だった。
『なんだよ、これっ!?……ヤバイ。可愛すぎるだろ』
思わずオルドン語で呟いてしまう。
写真の両隣のオッサンたちを脳内補正して消去してる俺には、レイしか見えない。
「ショーン、このかわいい子は誰だ?」
クラスの中でも、よく同じ講義を取るジュリアンが背後から覗きこんできた。俺の通う大学の教授(伯爵)の一人息子で、ムカつくくらいのイケメン。地位も金もあって、これ以上何を望むのか、と言いたくなる。ただ、平民である俺に対して、身分を笠に着るような対応はしない、いい奴ではある。
「あ、あぁ、父の友人の娘さん」
……間違いではないし、嘘はついていない。
「スゲー可愛いじゃん」
思いきり、写真を食い入るように覗き込むジュリアン。
そりゃ、レイは可愛らしい顔立ちだ。特に、この写真は綺麗な金色の大きな瞳が印象的に写っている。
「なぁ、なぁ、俺に紹介してよ」
「え、どれどれ……ヤバ、マジでかわいいじゃん」
「ちょっと、私たちもいるのに、それ、酷くなーい?」
ジュリアンがいつになく積極的に言ってくるせいで、彼につきまとってる女性たちが、文句を言いだす。それを宥めるのはジュリアンではなく、彼の『友人』という名のお付きの者たち。勝手にやってくれ、と思う。
夏休みは毎年、友人たちの別荘へと旅行に出かけていたのに、今回はレイに会いたいがために、オルドンの実家に帰ってきた。それなのに、入れ違いのようにアストリアに旅行に行ってしまったという。がっかりした俺は、実家には三日ほどしかいないで、そのまま、大学のある隣国に戻ってきてしまった。
アストリアに行っている間に、彼女に何かあったのだろうか。
ふと、レイの隣に写る、もう一人の男性へと目を向ける。彼女と同じ金色の瞳から、彼女の関係者なんだろうか。
「うん? この人、どっかで見たことあるなぁ」
そう言ったのは、別の友人で、確か、彼はアストリアから留学していたはず。子爵家の次男だか三男だか、だったか。
「誰だっけなぁ?」
首を傾げながら、必死に思い出そうとしているが、なかなか上手くいかないようだ。
そんなことよりも、前に会った時よりも、レイが一段と綺麗になっている気がする。
――もう、マジでオルドンに帰ろうか。
真剣に考え始めた俺だった。
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