第31話 四者面談(1)

 面談に、現れたのはサカエラのおじさんと、エルドおじさん。

 なんで、エルドおじさんまで来てるの!?

 そして二人に挟まれて座って、先生と向かい合わせに座っている。


「あのぉ……こちらの方は……?」


 担任の先生も、いきなり予定外の人がいたら驚くに決まってる。

 特に、エルドおじさんは190センチ近い大男だから、圧迫感が半端ないと思う。

 サカエラのおじさんに、おずおずと聞いている先生が、なんだか不憫に思えてきた。


「彼も、私同様、レイの後見人みたいなものです」


 ニコリと笑うサカエラのおじさんに、迫力負けしている先生。

 まぁ、それは仕方がないかな。


「ええ、先生、気にしないでください。私はレイの父親のつもりですから!」

「エルドおじさん!」


 放っておくと、調子に乗るんだからっ。


「えーと、君の志望は……就職でいいのかい?」

「はい。『ダルンの癒し亭』のファルネーゼ子爵夫人とは話をしています」


 私は、母みたいに宿屋での仕事がしたいと思っている。

 いつも、疲れて帰ってきても、楽しそうに仕事の話をしてくれる母を見てきたから。私もいつか、母みたいに笑顔で仕事の話ができるようになりたい。


「サカエラさんは、ご存じでしたか」

「やりたい仕事については、聞いていましたが……もう子爵夫人と話をしていたとは」


 少し、残念そうな顔で、私を見つめる。


「でも、現実的に考えて、早くに働いたほうがいいと思って。おじさんにはお世話になりっぱなしだし」

「そんなことは、心配しなくていい」


 隣で静かに聞いていたエルドおじさんが、急に口を挟んできた。


「……でも、私には、それほど余裕はないし」

「レイ、学べる時に、しっかり学びなさい。お金は、私やサカエラに頼りなさい」

「だ、大丈夫です。母のお金が少しあるし」


 いつも、二人に頼ってばかりだし、これは、私の人生だし。


「ダメだ」


 両隣から、声が被ってきた。


「メリンダのお金は、万が一の時のために、とっておきなさい」

「そうだよ、メリンダの金は、そんなにたくさんではなかっただろ。何かあった時のために取っておきなさい」


 父が亡くなってからは、母一人、子一人で、慎ましやかに生活してた。

 そんな私たちに手を差し伸べてくれたのが、サカエラのおじさんやエルドおじさんだけれど、それでも母は彼らに頼りきらないように、必死に生きていたと思う。

 母が亡くなってからは、母のお金はサカエラのおじさんに預かってもらいっぱなしだ。それだって、大した金額ではない。


「でも……」

「おじさんたちに任せなさいっ」


 二人がかりの説得に、困惑する私。

 言いくるめられていく私を正面で見ていた先生は、面白そうに見ていた。

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