15 応援なんて
月日は流れ、試合前日。一軍との対決を控えた生徒たちは、いつもと何ら変わらない時間を過ごしていた。
「渚ー!」
「ん?どうしたの?」
渚は、廊下を歩いているところを、同じクラスの宮内(みやうち) 小春(こはる)に呼ばれ、振り返る。そして小春は息を切らしながら、渚にあるお願いをした。
「お願い!2組の新山くんに教科書借りたいんだけど、ついて来てくれる?」
「いいけど……新山くんなんて人、中等部にいたっけ?」
「ううん。外部入学なんだって。ちょっとLINEで仲良くなったんだけど、まだ気まずくてさ。」
渚は頼まれた通り、隣の2組の教室へ着いて行った。確かに小春は気まずそうだったが、明るい性格の彼女は人当たりもいい。なんとか目的の教科書を借りて、教室に戻ることができた。
「ありがと〜助かった!新山くん、面白くていい感じなんだよね〜!」
「はいはい。あまりアピールしすぎないようにね?」
「分かったよ〜。あれ、そういえば今日、野球部は?」
小春は、いつもなら渚より先に教室にいるはずの葵と宗佑の姿がないことを、疑問に思った。
「ああ、今日は朝練してるんだって。多分もうちょっとしたらくるよ。」
「来月、大会だもんね!葵くんのこと、ちゃんと応援してあげるんだよ?」
そう言って小春が、野球部の話題になり分かりやすく目を逸らした渚をからかうように、軽く肩を突いた。渚は不自然に思われないように、慌てて言い返す。
「お、応援するのは先輩だよ!まずあいつは、試合にも出られないんだから。」
「でもちょっとは期待してるのバレバレだよ。素直に応援した方が葵くんも喜ぶだろうな〜。」
ちょうどその時、葵と宗佑が教室のドアを開けて入ってきた。そのドアの一番近くに座っていた渚は、自分の声を聞かれないよう、背中を向ける。
「私があいつに期待してるなんて……まさか。」
渚が視線を向ける窓際の葵の席では、違うクラスから何故かついてきた谷津を混ぜ、葵たちが談笑をしている。
「葵、これも読んでみろよ。」
「え〜。俺恋愛モノはあんま好きじゃねえんだよな。」
「おい、だからって俺に渡すな。自分で処理しろ。」
「だから!このヒロインが可愛いんだって!なんで分かんないんだよ!」
渚はそんな葵たちの様子を眺め、改めて自分の気持ちを確認する。
「まさか……ね。」
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