16 何年生?

 夏の始まりも近づき、だんだんと暑くなってくるこの季節。その日も早くから晴れ上がり、青い空が広がっている。



 ──試合当日。



「なあ、宗佑!あのピッチャー何年生だ?」


 試合前のウォーミングアップ中、葵はマウンドを見つめ、遠くでバットを振っている宗佑を呼び出した。


「3年生の八ツ木(やつぎ)さんだよ。うちの左のエースさ。130キロくらい出るらしいぜ。」


「ふうん。じゃあ、あのショートは?」


「……どう見てもあれは1年生だな。」


「だよな。」




 一方、一軍側のベンチでは、主力メンバーがリラックスした状態でこんなやりとりをしていた。


「マネージャー。この西川って奴、外部入学?」


 中等部では聞いたことがない名前を見つけ、3年生の小宮(こみや)が2年生マネージャーの有馬(ありま)に確認する。有馬は葵のことを知っていたかのように、説明した。


「この子は中等部では野球部にいなかった子ですよ。小学生の頃は結構すごいピッチャーだって騒がれてましたけど。」


「すごいピッチャー?」


 小宮は葵の投球練習を見たが、ブルペンでは既にボールを投げ終えていた。ボールがミットに収まる音が、微かに耳に届く。




 ──そして、試合開始直前。


【先攻、二軍チーム】

 1番 サード    久村(ひさむら)

 2番 セカンド   我妻(わがつま)

 3番 ピッチャー  西川(にしかわ)

 4番 キャッチャー 谷津(やつ)

 5番 センター   上田(うえだ)

 6番 ショート   日比野(ひびの)

 7番 ファースト  羽田(はだ)

 8番 ライト    森(もり)

 9番 レフト    辻(つじ)




【後攻、一軍チーム】


 1番 セカンド   伊藤(いとう)

 2番 ライト    桃崎(ももさき)

 3番 ファースト  石木(いしき)

 4番 キャッチャー 水野(みずの)

 5番 サード    小宮(こみや)

 6番 センター   川上(かわかみ)

 7番 レフト    山田(やまだ)

 8番 ショート   戸田(とだ)

 9番 ピッチャー  八ツ木(やつぎ)





 両チーム整列の準備を終え、キャプテンの伊藤が試合開始を促す。


「主審は、佐久間がやってくれ。」


「あ、はい!」



 一軍とは違い、二軍にとって意味のあるこの試合。整列する彼らの目には、闘士が宿っていた。


「よし、絶対勝ってあの監督を見返してやろうぜ。」


「エラーだけはよしてくれよ、宗佑。」



 そして、二軍チーム、久村が右打席に立ち、試合開始のコールがされる。




プレイボール!

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