★Cパート メイドカフェ



「ここ寄って行こうか?」

「メイドカフェ?」

「そっ! 可愛い子いるよぉ?」


 唯は何故かニヤニヤとしていた。

そうして連れ込まれた、異様にファンシーなメイドカフェ。


「OH! 唯たんにタケP、よくきてくれたネ!」


 出迎えてくれたのは金髪蒼眼の可愛いメイドさんーー基、唯の友達の田崎 リリだった。


「ようやく来れたよ!」

「待ってたネー!」


唯と田崎さんはハイタッチを交わした。

田崎さんと一緒にいる時の唯は、はっきり焼き餅を感じるくらい楽しそうだった。


「そういえばなんでタケpなの? もしかしてプロデユーサー?」

「違うネ。タッケープリンス。唯たんの王子様だから、プリンスネ」

「お、王子様って、あはは……」

「ささっ、お姫様に王子様! お席ご案内するネー!」


 席に案内され、向かい合って座った二人はそれぞれ注文を選ぶ。

 二人ともオムライスだった。

定番だからなのか、気が合うからなのか。

とにもかくにも同じものを意図せず注文したことが嬉しい武人だった。



「田崎さんと仲良いね。昔からの友達なの?」

「ううん。高校に入ってから。リリちゃんは今の学校で初めてできた友達なの」

「へぇ、そうなんだ」

「一年の頃は私、学校と養成所の往復しかしてなかったから、全然友達ができなくてね……そんな私に声をかけてきてくれたのがリリちゃんなんだ……」


 リリの話をするとき、唯は本当に嬉しそうな顔をしている。

心から信頼している友達だと思った。

自分で言えば、竜太郎に当たるのだろう。もっともハイタッチなんてしないが。


「おまちどーネ!」


 件のメイドの格好をした、田崎リリさんがオムライスを持ってやってきた。


「は、早いな。頼んでから5分しか経ってないけど?」

「ここだけの話、ケチャップライスは冷凍食品で、卵をのっけってるだけネ。それで一皿1500円ネ。儲かりまっかネ! ぐへへ」


 裏事情をさらりと語られ、武人と唯は揃って苦笑いを浮かべた。


「さぁ、おいしくなる魔法をかけるネ! 唯たんも一緒にどーネ!」

「わ、私も!?」

「もしかしたら近いうちにメイドさん役、来るかもしれないネ。やっておいて損は無いと思うネ!」

「そっか……そだね! わかった! すこし時間頂戴……」


 真剣な様子の唯。こういうプロの顔になる瞬間、なんとも言えないかっこよさがある。

唯は深呼吸をし、やがてカッと目を開いた。


「きゃるぅーん! メイドゆいたんとーじょー! おいしくなる魔法かけちゃうぞ?」


 ロリ風の演技。悪くは無い。むしろ好みでもある。


「堪らんね! 萌えっこ唯たん最高ネ!」

「ありがとう! じゃあリリちゃん、一緒にしよー!」

「オッケーネ!」


 二人は仲良く同じケチャップを取った。


「「おいしく、おいしくなぁーれ! ラブリースパイシぃー!」」


そしてこの順応力。プロ、恐るべし。

周りのお客も何事かと武人へ視線を注いでいる。

ぶっちゃけかなり恥ずかしい。


「萌えっこ唯たん爆たん記念にチェキするネ!」


 そして記念にと、三人で写真を撮ることとなった。


 これは家宝にしよう。


 武人はそう思い、そっと写真を懐へしまうのだった。

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