★Bパート  同人ショップ


 大通りに面したかなり有名な同人誌を扱う店へ入っていった。


「あっ! 私この子好きなんだ!」

「マジ!? 俺もだよ。戦う時の普段の時のギャップが良いんだよね」

「そうそう! 実はね、緋色の参考にしてるんだよ!」


 どうやら趣味は一緒らしい。だからこうしていても自然と振る舞えるのか。


「マイパンもたくさんだねぇ。……やっぱ緋色は少ないかぁ」


 棚を見上げて、唯は残念そうにそう溢す。

 フォローをしたいが、うまい言葉が見つからなかった。

あまりここに長居しては落ち込ませてしまうと思い、武人は歩き出す。

唯もパタパタと続いてきた。


「この上も同人コーナーだっけ?」

「まぁ、そうだけど……」


 唯はエレベーターの表示をさす。上の階はいわゆる"成人コーナー"


「マイパン、あるかな?」

「まぁ、こっちにもあるんだから、多分……」

「じゃあ、もしかしたら緋色も?」


 唯は興味津々な様子だった。

しかしあの独特の空気の中へ、しかも男女で乗り込むのはちょっとアレな気がする。


 すると、唯は武人から離れて階段を登り始めた。


「お、おい!」

「ちょっとだけ!」


 もはや止められず、武人は追いかけた。


 そして棚の一角を見上げて、顔を真っ赤に染めた唯に出会すのだった。


「あ、あった……! あったよ武人くん! しかも緋色っ!」

「マジ……!?」


 唯は恐る恐る棚から同人誌のサンプルを手に取り、視線を落とした。

更に顔を真っ赤にして、棚へしまう。


「だ、大丈夫か?」

「うん。びっくりしちゃった……!」

「いわんこっちゃない」


 唯は武人に近寄り、小声で


「なんか、僕、隊長に、ちょ、調教されちゃうみたい……」

「なっーー!!」


 殺意の波動が沸き起こり、鋭い視線が武人へ襲いかかる。

ここにい続けるのはとてもよくない。

唯の手を引いて、下のフロアへと降りてゆく。

 しかし当の唯は、嬉しそうだった。


「でも、嬉しい。世の中には、武人くんと同じように緋色を好きでいてくれる人がいるんだね」

「唯……」

「あ、べ、別に調教されるのが嬉しいとか、そういうのじゃないから!」

」わかってるってそんなこと! それに俺はどちらかというと和姦……」

「わかん……?」

「あー、いや! こ、これは!!」

「お二人さん……」


 突然、一般向けコーナーでそんな会話をしていると肩を掴まれた。

びっくりして振り返ると、


「なんだ竜太郎か、驚かせんなよ!」

「友達?」

「まぁ、そんなとこ」

「警告する。即刻この場より立ち去るが良い! 命惜しくば!」


 一般コーナーでも殺意の波動が湧いていた。

どうやら迷惑をかけてしまったらしい。


 武人と唯は粛々と会釈をした。


「俺も友人でなかったらぶち殺していたぞ。早う去れ」

「悪い」

「小津」

「ん?」

「しっかりな」


 竜太郎が背中を押した。

なんだかんだで竜太郎はいいやつ。

折を見て男同士でここへ来たい。

武人はそう思った。

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