★Aパート 中古グッズ店


 大通りの一角にある細長いビル。ネットショッピングでは度々見かける“中古グッズ店”

直接店舗へ行くのは初めてだった。

 中は五階建てで、それぞれのジャンルに振り分けられていて、長細い店内にはぎっしりと様々なグッズがこれでもかと陳列されている。

 

「俺、プラモみたいんだけど唯はどうする?」

「良いよ、武人君に付き合うよ!」


 きっと唯はプラモデルなんかに興味はないのだろう。

だけど、こうして合わせてくれる。

 優しい子なのだ改めて思った。

 

 そうして暫く棚に陳列されていたプラモデルを見ていると、背中をツンツンされた。

 

 いつの間にか唯がいなくなっていた。

 背後のごちゃごちゃと山積みにされていたワゴンセールの中から、にょきっと美少女フィギュアが現れる。

 

 可哀そうなことに、ワゴンから出てきたのは「翼 緋色」だった。


「隊長ーこんなゴミゴミしたところ、僕いやだよー。たすけてよぉー」

「……」


 ワゴンの向こう側で唯は、緋色のフィギュアを掲げて、緋色の声を出す。

 

「買ってよぉー。三百円以上の価値はあるよぉー」

「……」


 ぶっちゃけ、今ワゴンの上で踊っているフィギュアは、UFOキャッチャーで、販売価格の十倍ほどを費やして獲得済みだった。

 

「抱き枕でもいいよぉー」


 今度はにょきっと、未開封の抱き枕カバーが生えてきた。

 しかも結構際どい絵柄のものである。


「ぼ、僕のこと……」

「?」

「す、好きなんでしょぉー?」


 唯の声が震えているのは際どい抱き枕カバーを提案したためか。


「な――っ! い、いくら好きでも、さすがに抱き枕は買わないって!」

「ちぇ……」


 最後にちょっとつまらなそうな顔をした唯が生えてきた。

 

「あのさ、武人君って本気で緋色のこと好きなの?」

「まぁ、好きなんだけど……さすがに抱き枕は……」


 本当は抱きしめて寝たいが、そんなこと女の子の前で、しかも本物の中の人の前で言えるはずもない。

 

「やっぱ緋色って魅力ないんだね……」

「いや、そういうわけじゃ……」

「いいよ、武人君の気持ちわかったから……」


 唯は凄くいたたまれない顔をしながら、そっと緋色のフィギュアと抱き枕カバーをワゴンへ置く。

 仕方ない。

武人はそれを素早く手に取った。

ここまで言われちゃ、緋色を愛する者として失格と思ったからだった。

 

「分かったよ、買うよ! 買ってやる!!」

「やった! まいどあり!」


 すると唯はころっと笑顔を浮かべた。

 さすが役者である。すっかり騙された。 


「ちゃんと使ってね?」

「……」

「なんなら武人君専用に声吹き込んであげてもいいんだよ?」

「だから、そういうのダメだろ? まったく……」

「良いんだよ! 武人君は特別だもん!」


 特別、と言われ、やはり小躍りしたくなる武人。


 周囲のお客が鋭い視線で睨んでいたなど、気づくはずもなかった。

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