★Aパート:サンドイッチをいただく
「ありあわせのものでつくったら、普通だけど……」
定番ハムサンドに卵サンドやなにやらバリエーションが非常に豊富だった。
これが普通なら、その上は一体どんなサンドイッチになるのか検討もつかない。
「いただきます」
「はい、どうぞ!」
笑顔の羽入さんを横目で見つつ、卵サンドを取った。
普通にというか、かなり旨い。ややマヨネーズの味が強く、アクセントで黒胡椒も感じられた。
出来合いのものとは違う、家庭的な、暖かいバランスだった。
ハムサンドも橙色スライスチーズと一緒に挟まれていた。これだけはパンを軽く炙っているらしく、さくっと軽快な歯応えが心地よい。さらに微妙にチーズも溶けていて、口の中に優しく溶けてゆく。ハムの風味と相まって、幸せな味わいだった。
しかも明かに、いま目の前にあるサンドイッチは一人分ではない分量。
もしかして自分のために? いやまさか。
すると隣で羽入さんが生あくびをしていることに気がついた。
「眠いの? 大丈夫?」
「ちょっとね……でも大丈夫だよ。心配ありがとね」
「も、もしかして早起きして作ってくれた?」
「え? あ、あ、いや! いつもお父さんと自分のぶんも作ってるし、だからそのついでっていうか、なんていうか!!」
羽入さんは突然顔を真っ赤にして慌てふためいた。
親以外で誰かが食事を作ってくれた。初めての経験で、嬉しいような恥ずかしいような。
「それよりも! 美味しい?」
「旨いよ! すごいね、本当に」
「あ、ありがと。改めてそう言われると照れるね……ちなみにどれが一番美味しかった?」
「ハムサンドが格別だったなぁ。ちょっと手を加えたでしょ?」
「わぁ! わかってくれたんだ!! うん、ちょっと色々やってみました! まぁ、初めて試してみたんだけどね」
「もしかして実験台だった?」
「そんなんじゃないよぉー!」
羽入さんはコロコロとよく表情を変える。いろんな彼女の面を見れて、とても幸せな気分な武人だった。
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