★Bパート:お茶をもらう
「お茶もらっても良い?」
「うん! どれがする?」
羽入さんはお湯が入った魔法瓶と共に、フリーザーパックを取り出した。
そこにはぎっしりと、ティーパックの包みが入っていた。
「す、すごいかずだね? いつもこんなに持ち歩いてるの?」
「小津くん、何が好きかわからなかったから、家にあるやつ全部持って来ちゃった」
色々と考えてくれて、嬉しいような申し訳ないような。
渡されたフリーザーパックをガサゴソと探る。そして目の止まったアップルティーを選びだした。
「それ……!」
「ん?」
「ううん、なんでも……はい、お湯!」
紙コップも準備してくれていたらしい。手渡されたそれにはすでにお湯が張られていて、白い湯気が上がっている。
お湯へティーパックを浸すと、すぐにリンゴのような芳醇な香りが昇ってくる。心地よく、何よりの美味しそうな香りだった。
「……」
何故か羽入さんは烏龍茶のティーパックをカップの中でチャポチャポしなが、時折武人を盗み見ていた。
むしろ彼をみていたというよりも、
「もしかしてこれが良かった?」
「あ、ううん! 良いから! 大丈夫だから」
とは言いつつも、視線は相変わらず武人の手もとに注がれている。
「烏龍茶」
「えっ?」
「やっぱ烏龍茶が飲みたいなって。交換してもらって良い?」
「い、良いの!?」
予想外に羽入さんの表情が明るく変わった。
「お、おう……やっぱなんかアップルティーの匂いきついなって。交換してもらえる?」
「そっか。そうことじゃしかたないね」
なに食わぬ顔をして、二人はカップを交換する。
羽入さんはアップルティーの香りに酔いしれ、口に含むとほっこりとした笑顔を浮かべる。
やっぱりアップルティーが飲みたかったらしい。
(羽入さんって案外子どもっぽいところがあるんだなぁ)
こういう一面も良いように思う武人なのだった。
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