第413話 若者たち
「ふわぁぁぁ……眠ぃ」
「うぃーす、和樹。お前も寝不足か?」
ヴォルザードに朝を告げる鐘の音に起こされ、新田和樹が寝ぼけ眼で部屋を出ると、同じく眠たそうな顔でドアを開けた古田達也が苦笑いを浮かべていた。
「まぁな。あの猿どもを何とかしねぇと……」
「だな……てか、それも時間の問題かもな」
「あぁ、あれって……そうなのか?」
「鷹山がそうだろうって言ってたぜ」
「なるほど、経験者は語るって……爆発しとけ」
「だな……」
2人は、真新しい洗面台で顔を洗い、ようやく少しだけシャキっとしたようだ。
ここは居残り組が、共同で手に入れたシェアハウスだ。
これから食堂で朝食を済ませたら、2人は今日も魔の森の訓練場へと向かう。
1日だけじゃ効果が薄いので、3日ほど連続で訓練を行う予定になっているのだ。
「あぁ、また今日も国分の鬼畜メニューか……」
「昨日の話だと、チームでの動きもやるとか言ってなかったか?」
「だとしても、国分が鬼畜なのは変わらんだろう」
「まぁな……てか、あのスケルトンもスパルタ過ぎだろう」
ブツブツと文句を言いながらも新旧コンビは、意外にシッカリとした足取りで食堂へと向かった。
「おざす! フローチェさん」
「おざす!」
「おはよう、カズキさん、タツヤさん。朝食の支度は出来てますよ」
「おぉ、今日も美味そう」
「あざっす! いただきます」
シェアハウスでは、鷹山秀一の嫁シーリアの母フローチェが、寮母さん的な役割を果たしている。
元は隣国リーゼンブルグ王国の第四王妃だったフローチェだが、更に遡ると農村出身の平民でもある。
狩りの途中で立ち寄った国王が手を付けて、そのまま城へと連れていかれたそうだ。
それだけ聞くとシンデレラストーリーだが、実際には他の王妃達から虐げられ苦難に満ちた時間を長く過ごして来た。
それだけに、平民の暮らしに戻った今は、むしろイキイキと毎日を過ごしている。
食堂には他の居残り組の姿もあった。
一時は勇者などと持ち上げられて、ヴォルザードに到着した直後に騒ぎを起こした元問題児の鷹山とシーリアの夫婦。
相良貴子、本宮碧、綿貫早智子の女子トリオと男子組のまとめ役である近藤譲二。
八木祐介とマリーデの姿はまだ見当たらない。
「うっす、ジョー。今日は昨日とは違うメニューなんだよな?」
「おはよう、新田、古田。そう聞いて……」
「おっ、地震だ……」
新旧コンビが朝食の載ったトレイを置いて、いつもの席に座ろうとした時に、グラリと横揺れが来た。
フローチェとシーリアは真っ青な顔をしているが、召喚された者達は落ち着いている。
「震度3……までいかないか」
「んなもんだな。いただきます!」
揺れが収まったところで、新旧コンビは平然と食事を始める。
こちらの世界に暮らす者は地震に慣れていないから、地面が揺れるという現象に不安に感じるようだが、東京育ちにしてみれば地震は珍しくもない。
「おはよう!」
「うぐぅ……脅かすなよ国分」
地震には驚かない新田だが、何もない空間から突然出てきた国分健人に驚かされて、危うく朝食を喉に詰まらせるところだった。
「ごめん、ごめん。今日予定していた特訓なんだけど、さっきの地震絡みで南の大陸を調べて来るから、悪いけど中止にさせて」
「それって、ヤバいのか国分」
「うーん……どうだろう。まだ具体的な事は何も分かっていないから、今の時点では何とも言えないな」
突然姿を現した国分は、訓練の中止と南の大陸で起こっている異変についてザックリと話し、そのまま影に潜って調査に向かっていった。
「中止だってよ、ジョー」
「まいったな。今日の今日で仕事見つかるかな?」
「いやいや、1日ぐらい休もうぜ。なぁタツヤ」
「そうだよ、ジョー。昨日、ガッツリ稼いだし、今日は休みにしちまおうぜ」
「いや、国分が奔走してるのに、遊んでるってのは……」
「じゃあ、こうしよう。今日は自主練、どうよ?」
「俺も達也に賛成!」
「しょうがないなぁ……あくまでも自主練だからな」
「分かってるって」
「了解、了解!」
結局、この日は新旧コンビの希望通りに、自主練という名の休みになった。
古田達が朝食を終えようとする頃、ゲッソリとした八木と顔色の優れないマリーデが起きてきた。
新旧コンビからだけでなく、他の者達からも冷たい視線が注がれる。
苦笑いを浮かべているのは、フローチェと綿貫ぐらいだ。
露骨に顔を顰めた新田は、朝食の残りを掻き込んで席を立った。
「ごっさんです! 達也、先行くぞ!」
「おぅ、俺も行く、ごっさんです! ちっ……」
舌打ちして横を通り抜けて行く古田に、八木は恨みがましい視線を送っただけで何も言わなかった。
近藤から訓練の中止を聞かされた八木は、両手の拳を握ってガッツポーズを繰り返したが、周囲の冷たい視線に気付くと、バツが悪そうに朝食を口に運んだ。
部屋に戻った新田が急遽休みとなった1日をどう過ごすか考えていると、古田が声を掛けてきた。
「和樹、ギルド行かねぇ?」
「ギルドって、仕事する気か?」
「じゃなくて、訓練場行こうぜ」
「誰かいるかな?」
「さぁな、行ってみりゃ分かるだろう」
「うっし、行くか!」
新旧コンビと近藤は、ヴォルザードに居残ると決めた後、あちこちに足を運んでいる。
仲間内だけで手合せをしていると、互いに手の内が分かってしまい、新しい刺激が減って伸び悩んでしまうと考えたのだ。
ギルドの訓練場で、講習の時に顔見知りになった者達と手合せしたり、守備隊の訓練に飛び入り参加させてもらったりもしていた。
冒険者稼業を始めて1年目だから目立つような活躍は無理だし、とにかく腕を磨いて生き残る確率を上げようと考えているのだ。
新旧コンビの2人は自前の革鎧を着込み、木剣を片手にギルドの訓練場へ向かったのだが、シェアハウスを出たところで足を止めた。
近くの倉庫の壁に寄り掛かっていた男が、フラリと道に出て来たからだ。
「おざっす。なんか用っすか、ギリクさん」
「俺も連れて行け……」
軽い調子で挨拶した古田に、ギリクは暗い目をして呟いた。
「はぁ? 連れて行けって……」
「とぼけんな、クソチビの眷属にお膳立てしてもらって何かやってんだろう。俺も連れて行け!」
「あぁ、特訓場のことっすね……てか、酒臭っ!」
「生憎っすけど、今日は無理っすよ。国分は南の大陸の調査とか言ってたっす」
鼻を摘まんで顔をしかめた古田に代わって、新田が特訓が中止になった理由を話したが、ギリクは冗談だと思ったらしい。
「南の大陸だと……馬鹿言ってんじゃねぇ! おとぎ話じゃあるまいし、行けるわきゃねぇだろう!」
「いや、別に信じなくても構わないっすが、国分が俺らに嘘をつく理由なんて無いっすよ」
「そうそう、国分はチートなハーレム野郎で爆発しろとは思うけど、それだけの働きもしてるっすよ」
「ちっ……どいつも、こいつも、クソチビ、クソチビ言いやがって……」
舌打ちを繰り返して道に唾を吐き捨てたギリクを見て、新旧コンビは顔を見合わせて眉をしかめた。
「てか、ギリクさん、それは人に物を頼む態度じゃないっすよね」
「んだと……」
「俺も達也と同意見です。まぁ俺らも国分を鬼畜扱いはしますけど、それはあくまで冗談っすよ」
「クソチビに頭を下げろってか?」
「まぁ、当然っすね。てか、俺らが使わせてもらってる特訓場も、歩くと丸一日かかる魔の森の奥なんで、国分抜きだと行くだけで命がけになるっすよ」
特訓を行っている場所が魔の森の奥にあり、そこまでの移動にも国分の送還術を使っていると新田が話しても、ギリクは半信半疑といった様子だった。
「まぁ、連れて行くか行かないかは国分が決めることですし、俺らがどうこう言うことでもないっすけど、少なくとも二日酔いの状態でやれるような訓練はしてないっすよ」
「うっせぇ! この程度、少し動けば屁でもねぇよ」
「へぇへぇ、そーっすか……相変わらず口ばっかっすね。それじゃミュー姉さんが愛想を尽かすのも無理ないっすよ」
「んだと、手前! ちっとぐらい討伐を経験した程度で、調子こいてんじゃねぇ!」
「なら、試してみます? これから達也と一緒にギルドの訓練場に行くんすけど、勝負してみましょうよ」
「あぁん? 上等だ、紙クズみてぇにグシャグシャに畳んでやらぁ!」
また唾を吐き捨て、背中を向けて歩き出したギリクのふらつく足取りを見て、新旧コンビは顔を見合わせて肩をすくめた。
ギルドの裏手にある訓練場の一角では、今日も若手に対しての戦闘講習が行われている。
それとは別の一角では、自主的に手合せをしている一団がいる。
普通の木剣だけでなく、ギルドで用意している木槍や木の戦斧などを使って、自分の戦闘スタイルに磨きを掛けたり、新しいスタイルを模索している連中だ。
「ういっす! やってますね」
「おざーす! じゃましまーす!」
「おぅ、タツヤ、カズキ、一丁やるか?」
「いいっすね。でも、今日はちょっと先約があるもんで……」
「ほぅ、狂犬か……」
新旧コンビが、自主練習をしている一団に気さくに挨拶をする一方で、ギリクは少し離れた場所で不機嫌そうに腕組みをしている。
「お前ら、何か因縁付けられてんのか? だったら俺達が……」
「いやいや、大丈夫っすよ。すぐにコテンパンにしてやるっすから」
心配げに耳打ちしてきた冒険者に古田は軽く答えると、新田と一緒に身体を解し始めた。
「ギリクさん、防具は着けないんっすか?」
「はぁ? 誰に向かって口利いてやがんだ? 手前らのヘナチョコな剣が当たるとでも思ってんのか?」
「そうっすか……まぁ、痛い目をみるのは俺らじゃないから構わないっすけど」
「いつまでも調子くれてんじゃねぇぞ。さっさと掛かって来い」
「あー……魔法の使用はどうするんすか? あり? 無し?」
「んなもん、好きにしろ。結果は一緒だ」
「どうするよ、和樹。使う?」
「んじゃ、最初は無しでやってみれば」
「だな。そんじゃ、ギリクさん。最初は魔法無しでやりましょう」
「何でも構わねぇから、さっさと掛かって来い」
苛立ちを隠そうともしないギリクに対して、新旧コンビはマイペースでジャンケンを始め、まずは新田から立ち合うことにした。
普通の木剣を構えたギリクに対して、新田は少し短めで刃幅の広い木剣を手にしている。
それに加えて、新田は左手に小型の丸い盾も装備していた。
自主練組の冒険者の1人が、審判役を買って出た。
「ここはギルドの訓練場だ。やるのはあくまでも訓練で喧嘩ではない。危険だと思ったら立ち合いを止めるし、従わなければギルドに報告する」
「グダグダうるせぇ、さっさと始めろ」
「カズキも、準備はいいか?」
「うっす、いつでもいいっすよ」
「では、始め!」
ただならぬ雰囲気に、回りで自主練を行っていた者達は、全員手を止めてギリクと新田に注目していた。
左手の盾を構え、右手の木剣はユラユラと揺らしている新田に対して、ギリクもダラリと木剣を右手に下げたままで歩み寄って行く。
いつでも動けるように、少し腰を落としている新田に対して、ギリクの足取りは見下すような太々しいものだ。
先に動いたのは新田の方だった。
じりじりとギリクの右側へと回り込みつつ間合いを詰めていたが、ふっと短く息を吐くと同時に鋭く踏み込んだ。
「遅ぇ……」
ギリクは突っ込んで来た新田に対して、横薙ぎの一撃を叩きつけようとした。
新田が盾を構えているのを見て、盾ごと弾き飛ばそうと力を込めた一撃は虚しく空を切る。
踏み込むとみせた新田は、素早いバックステップでギリクの一撃を躱すと、今度こそ本気で踏み込み、同時に鋭い片手突きを繰り出した。
「がはっ……」
「勝負あり! 勝者カズキ!」
「おぉぉぉぉ……」
一瞬で勝負を決めた新田に対して、見物人から賞賛の拍手が送られる。
一方、右の脇腹を押さえて片膝をついたギリクは、新田の後姿を見ながら愕然とした表情を浮かべていた。
ギリクに圧勝した新田とハイタッチを交わし、古田が進み出て来る。
「ギリクさん、どうします、少し休みますか?」
「うるせぇ! 今のはちょっと油断しただけだ! 今度は魔法ありだ!」
「まぁ、いいっすよ。じゃあ……マナよ、マナよ、世を司りしマナよ……」
古田に続いてギリクも身体強化の詠唱を始めると、訓練場の空気が一気に張り詰めて行った。
身体強化魔術を使えば、常人では考えられない動きが出来る。
勿論、靴底の摩擦係数を越えて素早い動きは出来ないし、強化するにも限界はある。
それでも、使っていない時に較べれば斬撃の威力は格段に上がるし、打ちどころが悪ければ大怪我をしてもおかしくない。
詠唱を終えたギリクが木剣を担ぐように右の上段に構えると、古田も全く同じ構えを取ってみせた。
ギリクは血走った眼を吊り上げ、噛みしめた歯を剥き出しにして凄みのある笑みを浮かべたが、古田は冷静な表情を崩していない。
ジリジリと間合いを詰めた後、同時に踏み込んだ2人は、真っ向から打ち合った。
「うらぁぁぁぁ!」
「だぁぁぁぁぁ!」
ガツンと鈍い音がした後に、押し負けたのは体格に勝るギリクの方だった。
「なっ……がぁぁ……ぐぁぁ」
押し負けて後ろによろけたギリクに対して、古田が最初に放ったのは右のローキックだった。
元サッカー部員の強烈なキックが、左足の外側、膝の少し上辺りにクリティカルヒットするとギリクは更に体勢を崩す。
古田の狙いすました袈裟斬りがギリクの左肩を捉えると、訓練場に鈍い音が響いた。
「勝負あり! 勝者タツヤ!」
「おぉぉぉぉ……すげぇ!」
「一瞬の打ち分けなのに、ぜんぜん体勢が崩れてなかったぜ」
鮮やかな上下のコンビネーションに、見物していた者達から拍手が沸き起こったが、当の古田は心配そうな表情で、ギリクへと歩み寄った。
「すんません、ギリクさん。大丈夫っすか?」
「う、うる、せぇ……この程度、何でもねぇ……」
いくら強がってみせても、歯を食いしばったギリクの額には、脂汗が玉になって吹き出している。
「いや、鈍い音したし、大丈夫じゃないっすよね?」
「うるせぇ! ぐぅ……こんなのは……」
「いつまで下らない意地を張ってやがる……」
突然響いて来た低い声に、ギリクと古田が顔を上げると、不機嫌そうに腕を組んだドノバンの姿があった。
「守備隊の医務室に行け! 腕の良い治癒師がいる。ちゃんと治しておかないと、まともに動かなくなるぞ」
「くそっ、行けばいいんだろう……行けば……」
歯を食いしばって立ち上がったギリクは、左腕を抱え、覚束ない足取りで訓練場を後にした。
それを見送ったドノバンは、新旧コンビに声を掛ける。
「お前ら、あんなのに勝った程度で調子に乗るなよ」
「分かってるっすよ。あんなの、今日の講習組でも楽勝っすよ」
「それもそうだが、稼ぎも……」
「あぁ、それも十分分かってるっす。今の俺らは国分におんぶにだっこしている状態っすからね」
「カズキの言う通り、俺らだけで討伐する時の事も、ちゃんと考えてますよ」
「そうか、ならいい……タツヤ、さっきの身体強化の使い方は、なかなか良かったぞ」
「あざっす! 戦略は近藤、身体強化は鷹山を中心にして、色々工夫してるんすよ」
「そうか、利用できるものは、何でも利用して強くなれ」
「あざっす!」
「頑張りまっす!」
講習組の元へと戻っていくドノバンの口許には、渋い笑みが浮かんでいた。
新旧コンビはギリクが立ち去った後も訓練場に残り、顔馴染み達と手合せを繰り返していた。
翌朝、特別訓練を再開するために、国分健人が居残り組との待ち合わせ場所へと出向くと、意外な人物の姿があった。
ボサボサだった髪を切り、髭を剃り、小綺麗な服装に身を包んだギリクは、思いつめた表情をしていた。
「どうしたんですか、ギリクさん。デートにでも出掛けるんですか?」
「うる……いや、今日はお前……いや、君に頼みがあって来た」
ギリクの言葉を聞いて、国分は顔を歪めた。
「頼み……ですか?」
「そうだ……です。俺も訓練に参加させてくれ……ださい。これまでの暴言や失礼な態度は詫びる。今更、ムシのいい奴だと思うだろうが……」
「駄目ですね」
突き放すような国分の言い方に、ギリクだけでなく、見守っていた新旧コンビも顔色を変えた。
「おい、国分。お前がギリクさんを嫌ってるのは分かるが、その言い方はねぇんじゃねぇか?」
「俺も達也と同意見だ。参加させてやれよ」
「待ってくれ、タツヤ、カズキ、これは俺の問題だ」
国分に食って掛かろうとする新旧コンビを止めたギリクは、もう一度深々と頭を下げた。
「頼む! もし……もし、ミュー姉がお前……君を選ぶなら、俺は身を引いてもいい。俺は……俺は強くなりたい!」
「駄目ですねぇ……」
「なっ……どうして」
「いいから、そのまま動かないで下さい」
厳しい表情で言った国分は、ギリクに歩み寄ると左肩に手をあてた。
「これは……」
国分の手の平が仄かに光り、昨日治療を終えられなかった折れた鎖骨を癒していく。
「今日の訓練は、昨日休みにした分ハードにする予定ですから、怪我人なんかに参加は認められません。でも、治療を終えましたから、参加してもいいですよ」
昨日は、守備隊の診療所を訪れていた患者が多かったので、ギリクは完治するまでの治療を受けられなかった。
国分は、その話を治療した浅川唯香から聞いていたのだ。
「本当に参加していいのか?」
「勿論、ヴォルザードの冒険者のレベルアップを拒む理由なんて無いですから……ただし、和を乱すような行動をするなら、いつでも送り返しますよ」
「わかった。よろしく頼む」
ギリクは、もう一度国分に向かって頭を下げた。
「いえいえ、お気になさらず。しっかり聞かせて貰いましたから……ミューエルさんが僕を選ぶなら……むふふふ……」
「あ、あれは、言葉の綾……いや、手前なんかじゃねぇ、俺を選ばせてみせる!」
ギリクは、被っていたネコを脱ぎ捨てて歯を剥いてみせる。
「へぇ……そうですか。まぁ、とりあえず訓練場に移動しましょう。今日はハードだから覚悟しといてよ、特に八木ぃ!」
「ちょ、何で俺? てか、お前また活きの良い何かを連れて来る気じゃねぇだろうな?」
「さぁて? 今日はロックオーガあたりと遊んでもらおうかなぁ……」
「馬鹿、お前はホント鬼畜だな。オーガでさぇ……」
「送還!」
喚き散らす八木も、神妙な顔のギリクも、まとめて特訓場へと送った国分は、移動のために闇の盾を潜る。
その口許に浮かぶのは、天使の笑みか……それとも鬼畜の笑みか……。
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