第313話 残党の末路

 ラウフの街外れの納屋から、二台の幌馬車に分乗して逃げ出したジルデールたちは、街道を三十分ほど進み、林の中の細い道へと分け入って行きます。

 ウネウネと曲がりくねった道の先には、古びた館が立っていました。


「フレッド、ここは?」

『奴らのもう一つの拠点……爆剤を保管してた所……』


 館の周囲には篝火が焚かれ、大勢の武装した男たちの姿が見えます。

 十台以上の幌馬車や、沢山の馬も居ます。

 納屋は住民の扇動用の舞台で、ここが戦闘を行う兵士達の拠点なのでしょう。


 ジルデールたちには未遂だから見逃してやるとは言いましたが、野放しにするとは言ってませんよ。

 納屋にいた人数では襲撃なんて出来ないでしょうし、住民の中にサクラが混じっている状態で戦闘になったら、関係の無い人まで巻き込んじゃいますからね。


「さすがはご主人様にゃ。ここに集めてヒュドラを倒した一撃で、粉々に吹き飛ばすつもりにゃ」

「いやいや、やらないから……ん? いっそ後腐れが無くて良いのか?」


 あれだけ脅しを掛けて、それでも襲撃を断行するならば、僕としても容赦するつもりはありませんが、とにかく中の様子を探ってみましょう。


 金持ちの別宅だったのでしょうか、今は荒れ果てて、壁が崩れたり屋根が抜けている部屋もありますが、かつては豪華な作りだったようです。

 二階の奥まった一室に、幹部らしき面子が顔を揃えて、今後の対応を議論していました。


 十人ほどの幹部の中には、ジルデールや髭面の男、リリナと呼ばれていた女や顔色の悪いおっさんの顔も見えます。

 あの納屋で発言してた人は、全員サクラだったみたいですね。

 中心にいるのはジルデールで、どうやらプロパガンダ用のお飾りという訳ではないようです。


「とんでもない邪魔が入った。ドレヴィス公爵領での襲撃は中止する」

「中止するって、明日に備えて準備を進めてるんだぞ」

「中止だ!」


 納屋では見かけなかった太った男が抗議しても、ジルデールは中止の決定を変えませんでした。

 ただし、中止と言葉にすると同時に、何やらヒラヒラと両手を動かして見せました。


「バルシャニアの皇女が来ると聞いてから、時間を掛けて準備を重ねてきたのに、土壇場になって中止だなんて納得出来んぞ」

「いいや、中止だ。魔王が出て来た以上、俺達では太刀打ちできない」

「魔王と言っても、実際にはただのガキだって聞いてるぞ。数で押し込めば、倒せるんじゃないのか?」

「ストームキャットを顎で使ってたんだぞ。あんな化け物とやり合えるもんか」

「それじゃあ、どうするつもりなんだ」

「ほとぼりが冷めるまで、バラバラになって潜伏する。マキリグ峠の拠点も放棄だ」

「どのぐらいの期間だ?」

「分からん。チャンスが訪れるまで、二年でも三年でも待つしかない」


 ジルデールが潜伏を宣言すると、集まった者たちは大きく頷きましたが、潜伏に納得したって感じではありません。

 ジルデールも、太った男も、話している間ずっと手を動かし続けていました。

 たぶん、手話みたいなものなのでしょう。


「下にいる連中に伝えてくる……」


 納屋では見かけなかった男女三人が、席を立って部屋を出ていきました。


「フレッド、部隊を移動させるつもりだろうから、様子を見てきて」

『了解……』


 この場に集まっている連中の表情と、話していた内容との食い違いに違和感を覚えてしまいます。

 逃亡、潜伏という消極的な手段を選ぶのに、幹部たちの表情には闘志が漲っています。

 男女三人が部屋を出た後も、幹部たちは話し続けていました。


「しかし、魔王がストームキャットを呼び出した時には、もう駄目かと思った」

「本当に、あんなガキなのか? 姿を変える魔術でもあるのか?」

「俺は、筋骨隆々とした大男だと聞いてたんだが……」

「闇属性の他に、光属性の治癒魔術まで使うって聞いたけど……」

「どこまで本当で、どこからがガセなのか分からねぇな」


 幹部たちは、話しながらヒラヒラと手を動かしています。

 たぶん、声の会話がダミーで、手話の内容の方が正しい内容なのでしょう。

 手話が解読出来ないので確証は持てませんが、ドレヴィス公爵領での襲撃は中止、マキリグ峠で襲撃を行うという感じに見えます。


 それにしても、純粋に盗み聞きを防ぐためというよりも、手話で会話することを楽しんでいるようにも見えますね。

 独自の暗号とか作っていた、昔の僕を思い出しちゃいますね。


 あれっ? ちょっと待って。

 そう言えば、僕の黒歴史満載のノートって、どうなったんだ?


 母さんが自殺して、東京の家は売り払われて、どこに行ったか分かりません。

 まさか、週刊誌の記者とかに渡ったりしたら、恥か死にしちゃいますよ。


『ケント様……マキリグ峠に集まるらしい……』

「なるほどね。やっぱり潜伏なんかしないで仕掛けて来るんだ」

『ここで片付ける……? それとも……』

「この際だから、アーブルの残党は完全に排除したい。泳がせてマキリグ峠以外に拠点が無いか、協力者はいないか徹底的に洗い出して」

『了解……』

「ラインハルト、峠道の整備はこれから?」

『丁度、取り掛かるところですぞ』

「思いっきりやっちゃっていいよ」

『ぶははは、ケント様のお墨付きとなれば、存分にやらせていただきましょう』


 たぶんジルデールたちは、細い峠道を想定しているでしょうから、度肝を抜いてやりましょう。

 もし峠道を整備している時に仕掛けて来るならば、それこそ返り討ちにしてやりますよ。


 先程部屋を出て行った三人のうちの一人が戻ってくると、幹部たちも話を終えて移動の準備に取り掛かりました。

 幹部たちが話をしている間も館の外では、集められた人員が移動の準備を進めていました。


 館に着いた時には、鎧や防具に身を固めていた男達も、今は農家の男のような服装に着替えています。

 脱いだ鎧や防具、手にしていた武器は箱詰めされて、幌馬車に積み込まれていきました。


「おい、マーカスはどこ行った?」

「キースもいないが、便所でも行ったのか?」

「向こうのアジトからは一緒の馬車に乗ってたけど……」

「あいつら、逃げやがったのか?」


 馬車に荷物の積み込みをしていた数人の男たちは、手を止めて集まってきました。


「おい、どうするよ」

「どうするって……」

「ストームキャットと本気でやり合うつもりか?」

「それは……」

「魔王が出て来るなんて聞いてねぇぞ」

「手薄な騎士を大勢で倒せば、ガッポリ稼げるって話だったのに……」


 どうやら、ここにいる連中はバルシャニアやドレヴィス公爵家の騎士と戦う話は聞いていたようですが、僕の眷属たちと戦うとは思っていなかったみたいですね。


「ギガウルフも連れてるんだよな?」

「馬鹿、魔王が一番ヤベぇんだよ。さっきだって、ロブエフさんの剣を一瞬で切断したんだぞ」

「なんだよ剣を切断って……」


 納屋にいたらしい男が、僕が召喚術で剣を切断した様子を話すと、こちらの拠点にいた男たちは言葉を失っていました。


「逃げよう。もう着替えたから、このまま姿を晦ませればいい」

「いや、どうせなら馬車ごと逃げようぜ」

「そんなの無理だろう」

「いや、時間をあけてバラバラにマキリグ峠に向かうんだ。俺達だけ別方向に逃げれば大丈夫だ」

「見つかったら、道を間違えたとか言って誤魔化せば良くね?」

「どうせなら、ラストックの方へ向かって、ランズヘルトまで逃げちまえば完璧だぜ」

「ランズヘルトまでは難しいとしても、ラストックに向かうのは良いな」

「方向が違うから、追ってこないはずだ」


 どうやら、切り札として保管しておいた爆剤を盗まれたり、魔王が現われたりしたことで、末端の士気がガタ落ちしているようです。

 この馬車の連中以外にも、周囲の隙を見て林の中に姿を消す者が何人も見受けられました。


『ケント様、こやつらはいかがいたします?』

「うーん……なんか、この人たちって素人っぽくない?」

『そうですな、ワシが見たところではアーブル・カルヴァインの残党というよりも、残っていた爆剤や武器を使って私腹を肥やそうとしている者たちと、その口車に乗せられた者たちのように思います』


 ラインハルトの言う通り、アーブル・カルヴァインと対峙した時に感じた強かさのようなものが感じられません。

 僕たちが現われたことに一応の対応はしていますが、場当たり的で、あらかじめ予想された動きには見えません。


「この人たちは、逃げ出した後はどうするつもりかな?」

『さて、断言は出来ませんが、野盗などにはならないような気がしますな』

「野盗や山賊などは、問答無用で死罪だものね。確かに、そこまでの覚悟は無さそうだね。と言うか、既に逃げ出した連中まで追いかけるのとか面倒だよね」

『体一つで逃げ出す連中は、さしたる脅威にはなりませんが、こやつらのように武器や防具を持って逃げる連中は、下手をすれば野盗になりかねませんぞ』


 確かに、下手に武器とかが手元にあると、これを使って一稼ぎ……なんてことを考えかねませんね。


「それじゃあ、まとまって逃げる連中からは、武器とか防具の類は回収して、代わりに警告文でも入れておこうか」

『警告文ですか?』

「うん、真面目に働かないなら、サクっとやっちゃうよ……って感じでね」

『なるほど、監視されていると思い込ます訳ですな。武器以外の荷物はどうなさいますか?』

「保存食とか薬とかは、そのまま持たせてやろう。馬車と合わせれば、それなりの値段になるでしょうし、商売の元手にもなるんじゃない?」


 馬車とか資材とかは、元々はアーブルの財産でしょうし、それを元手にして更生するなら、その方が良いような気がします。

 武器の回収と警告文のバラ撒きをラインハルトに頼んで、更に観察を続けていると、どうも逃亡する人数は増え続けているようです。


 爆剤は無い、魔王に目をつけられた、逃亡者が出て人数が減っている……勝ち目が薄くなっていると考えるのも当然でしょうね。

 アーブルのようなカリスマ性を持った人間がいないのも、脱走者が相次ぐ理由の一つでしょう。


『ケント様、警告文が出来上がりましたぞ』

「ありがとう、ラインハルト。えっと……改心せずに法に背き続ける者は、五体バラバラに引き裂かれ、魂の輪廻から外れし無限地獄にて、永遠に彷徨うことになると思え、魔王……って、怖っ! でも、このぐらい脅しておいた方が良いのかな」


 警告文は、馬車に積み込まれた武器や防具が入っていた箱をメインにして、目立つ場所に入れておいてもらいます。

 武器を持ち出され、警告文を読んで、それでも襲撃するつもりならば、野盗と同様に殲滅するだけです。


「だいぶ人数が減ってる気がするけど、それでもマキリグ峠で襲ってくるかな?」

『バルシャニア皇族の婚儀の行列です。一般の行商人などよりも、遥かに価値のある物が積まれておりますし、何よりもセラフィマ様の価値は金品では測れませぬ』

「人質にして、身代金でも要求しようって魂胆かな?」

『あるいは、奴隷として売り払おうなどと考えているかもしれませんな』


 セラフィマに手を出したら、生まれて来たことを後悔するぐらいに痛めつけてやりますよ。


「まぁ、セラには指一本触れさせないし、立ち直るチャンスも与えたから、次に襲って来たら容赦しないけどね」

「ご主人様、やり過ぎは駄目にゃ。みんなが作った道は壊したら駄目にゃ」

「はいはい、人間相手に槍ゴーレムとか使わないから大丈夫だよ」

「ホントかにゃ……ネロは心配にゃ」

「大丈夫だって、ヒュドラの時はブースター使って頭がハイになってたから、ちょっとだけ自制心が緩んでただけだし」

「あれでちょっとなら、ご主人様が本気になったらリーゼンブルグが消滅するにゃ」

「まったく、そんなに心配ならネロにやってもらうよ」

「かまわないにゃ。ネロが、ちょーっと遊んでやるにゃ……」


 大ぶりのナイフみたいな爪をペロペロしているネロにとっては、ジルデールたちはネズミ程度にしか見えないんでしょうね。

 アジトに集まった連中は、準備が出来た者たちから順番に次のアジトに向けて出発していきました。


 一台出発したら、五分程度のインターバルを置いて、次の馬車が出発していきます。

 館から細い道を抜け、マキリグ峠に向かうには街道を左に曲がるのですが、五台に一台程度は右へ曲がって行きました。


 このペースで脱走が続くようだと、マキリグ峠に着く頃には、半分ぐらいの人数になっていそうな気がします。

 二階の一室に集まっていた幹部連中も、一階へ下りて出発準備に取り掛かりました。


「時間が掛かり過ぎる。一度に二台ずつ出せ」


 ジルデールの指示で、出発のペースが上がりました。

 既に、かなりの台数が出発していきましたが、まだ屋敷の敷地には三十台以上の馬車が止まっています。

 それにしても、よくこんな台数を揃えられたものですね。


 ジルデールたち幹部は、出発を待つ間に焚き火を囲み、まだ話を続けています。

 どうやら荷物の積み込みは、ほぼ終っているようです。

 何か、余裕かましている幹部連中が、イラっとしますね。


「ラインハルト、武器の回収を進めて、全部終ったら教えて」

『了解ですぞ。ケント様はどちらへ?』

「このまますんなりマキリグ峠に行かせるのも癪に障るから、ちょっと脅かしてやろうかと思ってね」

『何をなさるおつもりですかな?』

「ちょっと、爆剤がどんなものだか味わわせてやるよ」

『ほほう、それは楽しみですな』


 幹部連中が退出した館の中は、窓から星明りが差すだけで、殆ど真っ暗闇という感じです。

 先程まで幹部の会合が行われていた部屋を除いて、二階の壊れた天井や壁、窓などを土属性魔術で目張りして行きます。


 出発を待っている連中の立ち入りを拒むものではなく、空気の漏れを防ぐものなので、強度は最低限です。

 影の空間から、必要な材料を取り出して、あとはラインハルトの連絡待ちです。


 幹部たちが打ち合わせを行っていた部屋では、まだ暖炉の火が燃えていました。

 これも利用させてもらいますので、ちょっと薪を足しておきましょう。


「にゃー……ご主人様が悪い顔になってるにゃ。とっても不安だにゃ」

「まったくネロは心配性だねぇ。ちょーっと、ちょーっとドーンって爆破するだけだよ」

「ご主人様のちょっとは信用できないにゃ」

『ケント様、武器の回収は終わりましたぞ』

「ありがとう、ラインハルト。それじゃあ、ちょっと爆破しちゃいますかね」


 幹部たちが打ち合わせをしてた部屋を封鎖して、二階のその他の空間には風属性魔術を使って小麦粉をまき散らします。

 小麦粉は、初めて魔の森を抜けた時、魔物に襲われた馬車から回収し、デッドストックになっていたものです。


「にゃー……真っ白で何も見えないにゃ」

『ケント様、これは……?』

「爆剤だけじゃ、ちょっと物足りないかと思ってね」


 屋敷が大きいので、爆剤三樽では脅しにならないと思うので、小麦粉を撒き散らして、異世界物の定番粉じん爆発をプラスしようという魂胆です。

 影の空間を抜けて、屋敷から二百メートル離れた場所へと移動。


「では、爆剤を暖炉の煙突へ……送還!」


 足元に置いた爆剤の樽が消えた直後、屋敷の二階の窓から閃光が迸りました。


「あっ、これヤバいやつ……」


 慌てて出発を待っている一味と屋敷の間に闇の盾を三重に展開しました。


 ズドォォォォォン!


 屋敷は巨大な火の玉になって消失し、屋敷の周囲の木々が爆風で薙ぎ倒されました。

 馬たちがパニックに陥って暴走し、あちこちで馬車が横倒しになっています。

 爆風が収まった後に闇の盾を消すと、残っていた連中は跡形もなく消し飛んだ屋敷を見てフリーズしていました。


「魔王だ、魔王が攻めてきた!」

「やべぇ、逃げろ!」

「武器だ、武器を出せ!」

「待て、お前ら逃げるな!」

「冗談じゃねぇ、こんなの人間技じゃねぇ、勝てる訳ねぇだろう!」

「俺も抜けるぞ、死にたいなら勝手に死ねよ!」


 誰かの一言を皮切りにして、殆どの者たちが逃亡を始めました。

 髭面の男や数人が引き止めようとしましたが、クモの子を散らすように逃げていきます。


『ぶははは、奴らの爆剤を使って、組織ごと吹き飛ばすとは、さすがケント様ですな』

「これのどこがちょっとにゃ? 槍ゴーレム並の威力にゃ」

「い、いやぁ、屋敷が大きいから景気よく小麦粉を撒いちゃったからかなぁ……ちょっと威力がありすぎたみたい。でもほら、とっさに闇の盾を出したから、吹き飛んだ人はいなかったみたいだし……」

「地面まで抉れてるにゃ……」

「は、ははは……気を付けます」


 屋敷の周りにあった木々が、爆炎によって燃え上がり、辺りを照らしています。

 倒れた馬車の周りで動いているのは、数えるほどの人数だけで、その多くは屋敷の二階にいた幹部連中です。


 その一人、ジルデールは粉々になった屋敷へと歩み寄り、呆然とした表情で足を止めました。

 納屋に集まって人の前で演説している時にはキラキラとしていた瞳も、今はガラス玉のように輝きを失っています。

 振り向いて横倒しになった馬車を見ても、表情に覇気は戻ってきませんでした。


「おい、ジルデール、馬車を起こした、出発しよう」

「ロブエフ、もう無理だ」

「ジルデール……?」


 髭面の男に呼び掛けられても、ジルデールは首を横に振りました。


「これからマキリグ峠に向かって、どれぐらいの人数を揃えられる? あれだけ厳重に警備していた爆剤をあっさり奪われ、集会も潰され、このザマだ……勝てないよ」

「馬鹿野郎、俺達を信じて先に向かった連中もいるんだぞ」

「馬車の中は見たか?」

「馬車の中がどうした?」

「武器や防具が無くなっている」

「なんだと!」


 髭面のロブエフは、起こした馬車に駆け寄ると、荷台の荷物を調べ始めました。


「無い、武器が無い……何だこれは……」


 馬車から降りて来たロブエフが手にしていたのは、ラインハルトの書いた警告文でした。

 ジルデールは、ロブエフから手渡された警告文を一読すると、丸めて放り棄て、肩をすくめてみせました。


「ロブエフ、やっぱり俺も行こう」

「ジルデール!」

「俺も峠のアジトまで行って、そこでキチンと組織を解散させる。勝ち目があるなら危険も厭わないが、無謀な戦いは仲間を殺すだけだ」

「分かった。だが、俺は向こうでも交戦を訴えるかもしれないぞ」

「あぁ、構わないさ」


 ジルデールたちは、無事だった馬車に改めて物資を積み直して立ち去って行きました。


『ケント様、幹部と思われる連中には、一応コボルトの監視を付けておきますぞ』

「うん、よろしく。野盗まがいの行為をしたら、すぐに知らせて」

『それと、残っている馬車なども回収しておきます』

「うん、お願い」


 屋敷を爆破する直前まで残っていた者の多くは、自分の足で逃走していったので、数台の馬車と物資が残されています。

 壊れているものを除いて、影収納へと放り込んでヴォルザードに戻りました。

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