第242話 鉱山の経営者

 ロベーレ商会の会長アロンツォがデュカス商会を訪れていた理由は、先日の救出作戦に関する抗議だったそうです。

 なんでも、救出された三十八人の殆どが、ロベーレ商会の鉱山からデュカス商会への移籍を希望しているのだとか。


 ロベーレ商会としては、鉱山を再生するためにも、亡くなった人たちの遺体を回収するためにも、坑道の再掘削を行わなければなりません。

 そんな状況下で、一度に大勢の移籍を認めてしまっては、労働力の大幅な低下を招いてしまいます。


 そこで、坑夫たちに移籍を思い留まるように説得すると同時に、アロンツォ自身が乗り込んで来て、直談判に及んだそうです。


「アロンツォさんには、送還術を使うための場所が必要だったからと説明したのですが、この程度の場所はロベーレ商会にだってあると言って、なかなか納得してくれなくて大変でした」

「やはり、坑道の入口近くに送還した方が良かったですかね?」

「いいえ、坑道の入口付近には人が集まっていたでしょうし、周囲は山ばかりです。なかなか開けた場所の確保は難しいでしょう」

「結局、アロンツォさんは納得されたのですか?」


 僕の質問にオルレアンさんは、苦笑を浮かべて首を横に振りました。


「アロンツォさんは、救出は坑夫の引き抜きが目的だったと疑っているみたいです」

「息子のアンヘルさんもですか?」

「いや、アンヘルは父親が暴走するのを止めに来たのでしょう」


 オルレアンさんはデュカス商会の現会長ですし、アンヘルさんはロベーレ商会の次期会長と言われています。

 二人は酒場で出会って意気投合して以来、普段から交流があるそうです。


 商会同士はライバル関係であると同時に、マールブルグを支える主産業の担い手として、今回の事故のような場合を含めて協力しあう関係でもあります。


 アンヘルさんは、オルレアンさんのやり方に興味を持っているそうで、オルレアンさんとしても、老舗のロベーレ商会が新しい雇用方式を取り入れるようになれば、坑夫達の生活安定に寄与すると思い、自分の考えを伝えているそうです。


「アンヘルは、良く言えば柔軟な考えの持ち主ですが、違う言い方をするならば甘さの抜けないお坊ちゃんという感じですね」

「オルレアンさんとしては、アンヘルさんを自分の側に引き入れたいのですね?」

「引き入れる……とは少し違っていて、私の考え方と全て同じでなくて構わないのです。一番大切なのは、坑夫達の生活を安定させる事であって、その点さえ一致しているのであれば違う方法を模索する事は大歓迎です」

「鉱山で働く人達と一緒に儲けていく……って感じですかね?」

「そうです、そうです、その通りです」

「なるほど……」


 バッケンハイムからヴォルザードまでの道中で、デュカス商会は現会長が敏腕で、この五年ほどの間に急成長していると聞きました。

 その敏腕経営者が目の前に座っているオルレアンさんなのですが、単純に金儲けが上手いだけの人ではないようです。


「ケントさん、どうかされましたか?」

「オルレアンさん、少し相談に乗っていただいてもよろしいでしょうか?」

「勿論です。妻や娘の恩人であるケントさんの相談ならば、私財を投げ打っても構いませんよ」

「いえいえ、お金の話ではなくて、鉱山の経営というか、マールブルグのような領地をどうすれば上手く治めていけるのか……なんですが」

「領地を治めるですか? それはまた随分と大きな話ですね」

「はい、実はですね……」


 オルレアンさんに、ランズヘルトとは魔の森を隔てた向こう側、リーゼンブルグで起こったアーブル・カルヴァインによる反乱騒ぎを簡単に説明しました。


「そんな事が起こっていたのですか。確かにカルヴァイン領の領主は野心家だという話は耳にしていましたが……」

「それでですね、領主のアーブルは拘束されている状態なのですが、領地は雪に閉ざされた状態で、まだ王家の支配が及んでいない状態なんです」

「なるほど、それでは領主不在のカルヴァイン領をケントさんが支配してしまおうという訳ですね」

「はっ? いえいえ、違います。僕が支配する訳じゃなくて、リーゼンブルグ王家が上手く治めていく方法が知りたいんです」

「そうですか、それはリーゼンブルグ王家からの依頼か何かですか?」

「ま、まぁ、そんな所です」


 僕とリーゼンブルグの関係を話し始めると時間が掛かりそうなので、今は割愛させてもらいました。


「ケントさん、坑夫達が働く一番の動機は何だと思いますか?」

「動機……ですか?」

「そうです。もう少し分かりやすく言うなら、人は何のためなら最も一生懸命働くか?」

「それは……やっぱりお金ですかね」


 僕の答えにオルレアンさんは、ゆっくりと首を横に振りました。


「お金じゃないとすると、家族……は独身の人には関係ないか……」

「ケントさん、一番強い動機は命です」

「命……?」

「勿論、今は行われていませんが、昔はマールブルグでも罪人や多額の借金を背負った者達が、強制的に鉱山で働かされていた事がありました。働くか、それとも死ぬかと言われたら、働くしかないですよね」


 オルレアンさんの言葉は、召喚された時のカミラの姿を嫌でも思い起こさせます。

 圧倒的な力を見せ付けられ、隷属の腕輪を嵌められ、服従か死かの選択を迫られれば服従するしかありません。


「マールブルグでは行われていませんが、カルヴァイン領では、今でもそれに近いことが行われていると聞いています」

「えぇぇ! それ本当ですか?」

「同じ鉱山を経営する者として、カルヴァイン領の話は耳にする機会がありまして、そうした話を少なからず聞いています」


 カルヴァイン領では、鉱山の元締めが大きな権力を有していて、坑夫達は搾取され続けているそうです。


「いわゆる、死なない程度に働かせるという酷いやり方でして、逆らえば財産は全て没収されて領地から放り出される。追放と言えば聞こえは良いかもしれませんが、身分証まで没収されて領地を追い出されれば、他の土地でやり直すのは困難を極めます」

「つまり、野垂れ死ねってことですね」

「そうです。もし、もし私がリーゼンブルグ王家の人間だとしたら、カルヴァイン領の元締め共は全員処分します」

「えっ……処分ですか?」


 厳しい言葉にギョっとさせられてしまいましたが、オルレアンさんはにこやかな表情を崩していませんでした。


「勿論、もしもの話ですが、王家に反旗を翻したアーブル・カルヴァインに加担したという理由を付けて、処分してしまった方が後腐れは無いでしょう」

「でも、元締めを処分してしまったら、鉱山が立ち行かなくなってしまうのでは?」

「そうですね、一時的には機能しなくなるでしょう。ですが、それは今も同じじゃないのですか?」

「あっ、確かに……王家の思い通りにはなってませんね」

「ケントさん、鉱山を動かしているのは、実際に現場で働いている者達です。統轄している元締め達が居なくなって一時的に混乱しても、現場の者達が働ける環境を整えてやれば、また元の通りに動きだしますよ」


 オルレアンさんの言葉には、長年鉱山に関わってきた者の重みが感じられました。


「仮に元締め共を処分したとして、後の混乱は簡単に収まるでしょうか? 現場で働く人達をまとめるのは簡単じゃないような……」

「そうですね。誰にでも出来る仕事であれば、私などは存在する意義が無くなってしまいますね」

「やっぱり荒くれ者を従えるのは……」

「ケントさん、それは違います。確かに鉱山の元締めというと、気性の荒い連中を押さえ込むようなイメージがあるかもしれませんが、坑夫達も普通の労働者と何ら変わりませんよ」

「そうなんですか?」

「はい、そこで、もう一度お聞きしますね。彼らが働く動機は何でしょう?」

「えっ? それは命なんじゃ……」


 僕の答えにオルレアンさんは、再びゆっくりと首を振りました。


「少し意地の悪い聞き方をしてしまいましたね。ですが、坑夫達が働く動機を満たしてやる事が、彼らをまとめていく一番の方法です」

「そうか、命をカタに脅して働かされて来た人達ですもんね。同じやり方じゃなく、正当な賃金とか生活の保証をする必要があるんですね」

「そうです、その通りです。ケントさんぐらいの歳で、そこまで考えられるとは素晴らしい。どうです、鉱山の元締めをやってみませんか?」

「いやいや、僕なんか、ただの素人考えですから無理ですよ」

「はははは、今すぐという話ではありませんよ。ですが、今のように考えを巡らせることを続けていらっしゃれば、良い経営者になれますよ」

「そうですね。僕は考えが足りない部分がありますから、もう少し深く考えて行動するようにします」

「あと十年もすれば、うちの娘も美しく成長しているはずです。どうですか、うちの婿に……」

「いやいやいや、お嫁さんは、もう十分なんで……」

「はははは、その歳でSランクの冒険者ともなれば、女性は引く手数多という訳ですね」


 嫁候補が増えました、マールブルグの幼女です……なんて言ったら、僕の命が危ういですもんね。


「オルレアンさん。話を戻しますけど、鉱山の元締めをやる人間には、やはり鉱山の専門知識は必要ですよね?」

「そうですね、あった方が良いですが、補佐してくれる信頼の置ける人物が居れば、必ずしも必要ではないでしょう。それよりも大局を見て、必要な決断を下せる方が重要です」

「腕っぷしも必要ない?」

「はい、それも補佐する人間が居れば必要ありませんね」

「なるほど……これまでのカルヴァイン領の状況を考えれば、好条件を整えてやれば現場で働く人達は味方に付けられそうですよね?」

「それは間違い無いでしょうが、問題は元締め達が何を握っているかです」

「握る……?」

「はい、坑夫達の命を握っているのか、財産を握っているのか、それとも家族の安全を握っているのか……」

「そうか、家族を人質に取られていたりしたら逆らえないですもんね」

「そんな酷い状況ではないと思いたいですが、その手の噂も聞えて来ますので……」

「そうですか……」


 カルヴァイン領では民衆の扱いが酷いとは聞いていましたが、オルレアンさんの口振りからすると下方修正する必要がありそうです。


「ケントさん、考えをまとめるのは悪い事ではありませんが、それは正確な情報を元にしていなければ意味がありませんよ。現在のカルヴァイン領がどうなっているのか、王家に対してどのような態度に出るつもりなのか、元締めと民衆との関係、それらが分かっていなければ、いくら考えたとしても机上の空論です」

「そうですね、おっしゃる通りです。少し調べてみます」

「それがよろしいですが、この時期、カルヴァイン領は雪に閉ざされているのでは?」

「僕や眷属は影を使った移動が出来ますので、雪は問題じゃないですね。今すぐアーブルの居城に行くことも可能ですよ」

「本当ですか? いや、事故のあった坑道の奥にまで行かれたのですから、可能なのでしょうね。ケントさん、カルヴァイン領の様子が分かりましたら、教えていただけませんか?」

「それは構いませんが……」

「カルヴァイン領は、隣国の鉱石産出の要です。このまま生産が止まり続けるならば、ランズヘルトから鉄や銅の輸出という事も考えられますからね」

「分かりました。その代わりと言っては何ですが、今日のような相談に乗っていただけると助かります」

「勿論、喜んで……」


 オルレアンさんと握手を交わして、情報の交換を約束しました。

 マールブルグの敏腕経営者にスーパーバイザーを務めてもらえるならば、これほど心強いことはありません。


 どこかの駆け出し冒険者にケチを付けるだけの似非スーパーバイザーには、オルレアンさんの爪の垢でも煎じて飲ませたいですね。

 デュカス商会を辞して影に潜りましたが、さてどこに向かいましょうか。


『ケント様、カルヴァイン領に行かれますか?』

「うーん……先にアルダロス……あっ、フレッド、ロベーレ商会はどんな感じ?」

『会長のアロンツォはワンマン体質……アンヘルの言葉には耳も貸さない……』

「なるほど、デュカス商会と揉め事にならなきゃ良いけど……そっちは僕が口出しするよりも、オルレアンさんに任せた方が賢明だよね」


 ハルトを目印にして移動すると、カミラは会議室のような部屋で騎士団長やその部下と思われる人達と話し合いをしていました。

 切りが良い所まで待ちながら、ハルトを撫でてやっていると、マルト達まで寄ってきてモフモフ祭になって……ちょ、待って、ゼータ達の圧力がぁぁぁ……。


 カミラ達が話し合いをしている机の上には、リーゼンブルグの大きな地図が広げられています。


『どうやらリーゼンブルグの西部、砂漠化の対策を話し合っているようですな』

「はぁ、はぁ……そうみたいだね。ようやくって感じかな?」

『ようやくどころか遅すぎですが、やらないよりは良いに決まっていますな』


 話を聞いていると、砂漠化が進行しつつある地域の川岸に壁を築き、そこで進行を食い止める。

 風向きが東寄りに変わったら、風属性と土属性の術士を配して、砂を押し戻すというのが基本的な計画のようです。


「カミラ様、計画の骨子は理解出来ましたが、問題は押し戻した砂をどうするかです」

「分かっている。そのために土属性の術士を配するのだ。押し戻した砂が一定量に達したところで硬化させ、砂防壁の材料とする」

「砂で壁を築くのですか? それでは強度に問題が出るのではありませんか?」

「それも分かっておるが、現状では他に方法が無い。定期的に硬化を掛けて強度を維持するか、もしくは土で周囲を覆って強度を補うしかないな」


 砂漠化が始まった当初であれば、そのまま砂を押し返して終わりだったのでしょうが、奥まった地域まで進行しているので、砂の量は膨大になっています。

 押し返すための距離も砂漠から離れすぎています。


「ラインハルト、砂は硬化の魔術を掛けても固まらないの?」

『全く固まらない訳ではありませんが、粘土質の土などに較べると、強度に劣りますな』

「しょうがない、送還術で砂漠の真ん中に送っちゃうか」

『ケント様。固めた砂を移動させるだけならば、影の空間経由で事足りますぞ』

「あっ、そうか。最近、送還術を頻繁に使っていたから、そっちばかり考えていたけど、影の空間経由の方が楽だね」


 それでは、ちょっと話し合いにお邪魔しますかね。

 カミラの視線の先に闇の盾を出して、会議室に踏み込みました。


「魔王様、お久しぶりです」

「あぁ、仰々しくしないで会議を続けて、ちょっと覗かせてもらったけど砂漠化の対策だよね?」

「はい、これ以上の砂漠化が進行しないように、サルエール伯爵領を流れる川の岸辺に壁を築き食い止めます」

「うん、それから砂を押し戻すんだね」

「はい、おっしゃる通りです」

「その砂だけど、適当な大きさに固めてくれれば、僕が砂漠の真ん中まで運ぶよ」

「本当でございますか?」

「うん、その代わり、なるべく早く耕作を再開できるようにして」

「ありがとうございます。騎士団所属の術士、それに領地の術士も動員して迅速に進めるつもりです」

「うん、じゃあ会議を続けて。そっちが終わったらカルヴァイン領に関して相談があるから」

「畏まりました。では失礼して、人員の配置や日程を決めてしまいますので、少々お待ち下さい。おい、魔王様にお茶を!」


 大きなテーブルの上座の席に腰を下ろし、お茶を飲みながら会議の様子を見学します。

 カミラも騎士団の人間も、余計な邪魔をする馬鹿王子達がいなくなったからか、いきいきと働いているように見えます。


 と言うか、これが普通じゃないと駄目なんだろうね。

 工事に掛かる期間や人員、場所などを決めて行くのですが、早く結果を出したいカミラと、悪天候やアクシデントが起きた場合を考えて工期に余裕を持たせたい騎士達とで、軽い対立が起こりましたが、カミラ寄りの日程で決着したようです。


 会議の内容は書記官が記録し、カミラと騎士団長が確認し、後日複製したものが配られるようです。


「魔王様、大変お待たせいたしました。カルヴァイン領に関して、何か問題がございましたか?」

「問題っていう訳じゃないし、まだ相談の段階なんで、そちらの騎士団の方達には仕事に戻ってもらって構わないよ。あぁ、出来れば騎士団長は残ってもらえるかな?」

「畏まりました。では、ベルデッツは残って、他の者達は職務に戻れ」

「はっ!」


 騎士団の皆さんは、ビシっと音がするような敬礼をしてから退室して行きました。

 僕の右斜め前にカミラ、左斜め前に騎士団長ベルデッツ・オールデンが座り、お茶を飲みながら話を進めることにします。


「マールブルグで業績を伸ばしているデュカス商会の会長と知り合って、カルヴァイン領に関して意見を聞いてみたんだ」

「マールブルグというとランズヘルトの鉱山都市ですね」

「それで、デュカス商会の会長が言うには……」


 オルレアンさんの意見を話すと、カミラも騎士団長も何度も頷いていました。


「確かに、魔王様のおっしゃる通り、我ら騎士団にもカルヴァイン領の悪評は届いています。ですが、辺境伯爵領ゆえ我らには手出しが出来ませんでした」

「騎士団長。カルヴァイン領は、そんなに酷い状況なの?」

「我々も、現地に足を運んで確かめた訳ではありませんが、カルヴァイン領と取り引きのある商人などの話では、アーブル・カルヴァインを頂点として、五人の元締めによって殆どの業種、住民が支配されているそうです」

「具体的には、どんな感じで支配されているの?」

「そうですね。領地の中にある鉱山は、基本的にはカルヴァイン家の所有になりますが、その権利を管理しているのが五人の元締めで、働く者の取り分は勿論、商店の権利の管理や、税金の徴収まで代行していると聞きます」

「何だか、家族を人質に取られている……なんて話も耳にしたんだけど」

「それは、鉱山で働く者達の集合住宅のことでしょう」

「集合住宅?」

「はい、表向きは集合住宅となっていますが、外から訪れた者から見れば収容所のようだという話です」

「そこに鉱山で働く人や家族が閉じ込められているって事?」

「表向きには住宅であり、出入りも自由というのが建前ですが、出入りには守衛の詰所に届出が必要で、夜間は門が閉ざされて出られないようです」


 カルヴァイン領の鉱山で働く人達は、この収容所のような住宅で生まれ育ち、男も女も鉱山に関わる仕事に就くそうです。

 働けなくなった者は、家族に養ってもらうか、身寄りの無い者は追放されてしまうそうです。


 老齢になって領地を追放されたら、待っているのは野垂れ死にです。

 住民は、年老いた友人や知人も助けたくても自分達が生きるのが精一杯で、助ける余裕が無いそうです。


「カミラ、こんな状況をリーゼンブルグ王家の直轄地で続けていくつもり?」

「無論そのような事は許すつもりはございません。元締め達の対応次第ではありますが、権利を剥奪して住民優先の土地に変えていくつもりです」

「分かった。どの道、カルヴァイン領の問題も雪が消えないと話にならないだろうから、それまでの間に元締め達の様子を探っておくよ」

「ありがとうございます。どうか、魔王様のお力をお貸し下さい」

「でも、実際に制圧したり、管理を行うのはカミラ達だからね。そうでないと国民が納得しないでしょ」

「はい、おっしゃる通りです。これまでは王国の端々、辺境と呼ばれる地域には王家の威光が届いておりませんでした。これからは、王家の守護が全ての国民に行き渡るようにする所存です」

「分かった。それじゃあ、カルヴァイン領に関しては、偵察を行って報告するよ」

「ありがとうございます」

「騎士団長、武力で制圧する事になった場合、任せても大丈夫だよね?」

「無論です。そのような事態となったなら、リーゼンブルグ騎士団の恐ろしさを思い知らせてやります」


 不敵に笑う騎士団長と握手を交わしてから、影に潜ってヴォルザードへ戻りました。

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