第243話 マイホーム

 フレッドとバステンに、カルヴァイン領の偵察を頼みました。

 差し迫った問題は起こっていない今のうちに、ある程度の内偵をしてもらうつもりです。


 五人の元締めの家や集合住宅の建っている地域は、騎士団から教えてもらいました。

 ブノアという男は、五人の中では最も高齢で、六十代になっても家業を息子に継がせていないそうです。


 ドニエという女は、ブノアに次ぐ高齢で、夫を亡くした後、自ら辣腕を振るってきた女傑だそうです。

 ラクロワという男は、四十代のゴリマッチョで、五人の中では一番アーブルに心酔していたらしいです。


 ケスランという男は、ラクロワと同年代で、表情を表に出さない痩せた男で、裏で画策する事を好む性格だそうです。

 そして五人目、マニフィカという女性は年齢不詳、パッと見は十代の少女のようにも見えるそうで、ロルという執事が常に影のごとく付き従っているようです。


 一説にはロルこそが五人目の元締めだという噂もあるそうですが、詳細は不明です。


「なんだか、一癖も二癖もありそうな連中だよね」

『それは当然でしょう。あのアーブルが使っていた連中ですからな』


 この五人の元締めと執事に加えて、カルヴァイン家の家宰ヘーゲルも領地の管理には関わっているはずで、今の時点でマークするのは七人になります。


「五人は、ヘーゲルの指示に従っているんだろうか?」

『さて、それも分かりませんな。一応、アーブルは拘束して取り調べている……という風に伝わっているはずですから、今の時点ではヘーゲルの指示を蔑ろには出来ないでしょうな』

「逆にアーブルが死亡したとなったら、五人はどう動くだろうか?」

『それも今の時点では全く不明です。まずは探ってみてでしょうな』


 ラインハルトにいくら問い掛けてみても、会ったことも無い連中の考えなど分かるはずもありませんよね。


「じゃあ、フレッド、バステン、よろしくね」

『了解しました。アーブルを探った時と同様に、必要に応じて撮影も行っておきます』

『我らに……探れないものは無い……』

「うん、よろしく」


 影に潜って移動するスケルトンと、現代日本の電子機器の組み合わせ、チート過ぎだよね。

 オルレアンさんに話を聞いた翌日、この日も治療のためにマールブルグに向かう予定ですが、その前に建築屋のハーマンさんを訪ねました。


 一時的には迎賓館を間借り出来ますが、いい加減に自宅の建設も頼まないといけませんからね。

 ハーマンさんの会社は、ヴォルザード旧市街の西側、倉庫街の一角にあります。


 建設用の資材などを置いておく都合で、こうした場所の方が都合が良いのでしょう。

 僕が訪ねた時、ハーマンさんは現場で働く人達と打ち合わせの最中でした。


「おはようございます、ハーマンさん」

「おぅ、久しぶりだな、ケント」

「はい、ご無沙汰してます。あぁ、どうぞ打ち合わせを先に……」

「そうかい、じゃあ、そうさせてもらおうか」


 ハーマンさん達は、旧市街東地区にある建物の新築工事の依頼を受けているそうです。

 今は、建物内部の家具などを運び出しているそうで、明日あたりから取り壊しを始める予定だそうです。


 何なら、僕の眷族にやらせちゃいましょうか?

 マルセルさんの店を取り壊した時よりも眷族は増えていますし、破壊力もアップしてますよ……って、仕事を取っちゃ駄目ですよね。


 打ち合わせが終わって、社員の皆さんは現場に下見に出かけたり、新築用の建材の準備を始めました。


「待たせたな、ケント。新居の外装、内装工事の依頼だろう?」

「えっ? いえ建築からお願いするつもりですけど……」

「何言ってるんだ? 屋敷なら、もう建ってるじゃないか」

「はぁ? 屋敷なんて建てた覚えは……」

「その西壁の向こう側、新たに切り開いた土地はケントのものなんだろう?」

「はい、そうですけど……」

「高い木が植えられて、広い池まであって、デカイ屋敷が建ってるじゃないか」

「えっと……すみません、ちょっと確認して来ても良いですか?」

「あぁ、構わないぞ、今日はここで仕事する予定だからな」

「すみません。ちょっと、ちょっと行って来ます」


 ハーマンさんの仕事場から影に潜って、自宅の建設予定地へと移動しました。

 はい、間違いありません、家が建ってます。

 家じゃないですね、屋敷? 宮殿?


「ラインハルト、これって……」

『コボルト隊が土を盛り、ゼータ達が全力の硬化を掛けてございます。シューイチ殿が全力の魔術を打ち込んでも、傷一つ付かないはずですぞ』


 三階建ての大きな建物は、打ちっぱなしのコンクリートのように灰色で、ドアも窓枠も嵌っていません。

 床板も壁も塗られていないので、一見すると廃墟のようにも感じられますが、確かに建築途中の屋敷です。


 一階には、庭に向かって大きなホールが二つ、一つは裏の部屋へと通じていて、ここは厨房になるのでしょうか。

 玄関ホールの脇にもいくつか部屋が用意されていて、どこかで見たような配置だと思ったら、クラウスさんの屋敷の配置に似ています。


 どうやら領主の館を参考にして作ったようですね。

 二階に上がると、中央の階段の両側に四部屋ずつ、計八つの部屋が南向きに作られていました。


 どの部屋も同じ大きさ、同じ作りになっているところからして、ここがお嫁さん達の部屋なんだと思うけど、数が多いよね。


「ラインハルト、ここはお嫁さんの部屋だと思うけど、数が……」

『ぶはははは、既に四人、カミラ嬢を含めれば五人、他にもミューエル嬢やメイサ嬢など……ケント様であれば増えることはあっても減ることなどありませんからな、ぶはははは』


 いやいや、これ以上は増やすつもりは……ミューエルさんかぁ……いやいや、駄目駄目。

 三階は、階段の東側が大きなホール、西側は大きなお風呂場になっていました。


 浴室の西側は大きなバルコニーになっていて、こちらにも湯船があります。

 と言うか、部屋とか湯船とか広すぎじゃない? 湯船は良いとしても、部屋は冬場は寒そうな気がするけど。


「にゃ、ネロと一緒にいれば寒くないにゃ」

「なるほど、うちは暖房装置には事欠かないか……」


 家族みんなが集まる部屋だとすれば、確かにこの広さでなければ入りきらないよね。

 ネロに、ゼータ、エータ、シータが出て来ても、まだまだ広さには余裕があります。

 これなら眷属が勢揃いしても大丈夫だね。


『いかがですかな、ケント様。お気に召さなければ、何度でも壊して建て直しますぞ』

「ううん、気に入った。ここが僕の新しい家だよ。みんな、ありがとう」


 三階の広いリビングに出て来た眷族達を順番に撫でて労ってから、ハーマンさんの仕事場へと戻りました。


「お待たせしました」

「どうだ、屋敷があっただろう?」

「はい、眷族のみんなが内緒で建ててくれたみたいで、もうビックリとしか言えませんよ」

「はははは、俺からすれば、ケントが知らなかった事の方がビックリだ。コボルトが家を建てているって、話題になってたんだぞ」

「そうなんですか? いや、ホントにしりませんでした」

「土を捏ね回したような凸凹の外観でな、とても建物なんかにゃ見えなかった。それを黒いスケルトンがスパってな……あの通りさ」

「なるほど、コボルト隊が盛って、ゼータ達が固めて、フレッドが切り出したのか……」

「それで、間取りはどんな感じになってんだ? 水回りや魔道具の設置などもしないといけないからな」

「あっ、えっと……」


 間取りを思い出そうとしていたら、ラインハルトが間取り図を差し出して来ました。


「えっと、こんな感じです」

「本当にケントは何も知らなかったみたいだな。どれどれ……」


 ハーマンさんは、間取り図を見ながら、広さや部屋の用途などを尋ねてきました。

 同時に、間取り図に印を入れ、別の紙には必要な魔道具を書き出していきます。


「よし、ケント、ノットの店に行くぞ」

「はい! って、ハーマンさん、仕事は大丈夫なんですか?」

「何を言ってる、ケントの注文だって立派な仕事だろう。それとも俺をタダで扱き使うつもりか?」

「いえいえ、とんでもないです。ちゃんと請求して下さい。キッチリお支払いしますよ」


 魔道具屋のノットさんの店に行き、ハーマンさんに色々と尋ねながら必要な魔道具の注文を済ませました。

 暖房、調理、冷蔵保存、水道、温水、浴槽の保温と浄化、生活排水の浄化などなど、一度に大量の注文となったので、ノットさんもホクホク顔です。


「いやぁ、ケントさんならば支払いを踏み倒される心配もありませんし、これだけの注文をいただけるとは有り難いですね」

「ノットさんには、色々と魔道具についても教えていただいてますから、こちらこそ、よろしくお願いします」


 魔道具の注文を終えて、仕事場へと戻る途中、ハーマンさんから尋ねられました。


「ところで、ケント。俺達は、どこから入って仕事すれば良いんだ?」

「えっ……あぁ! そうか入り口が無いんだ」


 すっかり忘れていましたが、僕の土地はヴォルザードの城壁の外側、魔の森を切り開いて作ってあり、周囲は新しい城壁で囲まれています。

 僕や眷族のみんなは影を伝って移動して、城壁の中へと入っていますが、ハーマンさん達には無理だよね。


「城壁に穴を開けて門を作るにしても、クラウス様に許可を貰っておかないと駄目だぞ」

「そうですよね。いくら新しい城壁が外側にあるとしても、僕の土地には眷族のみんなが走り回ってますし」

「そうだ、うっかり迷い込んだりして、いきなりギガウルフやリザードマンと鉢合わせになってみろ、驚いて腰抜かしちまうぞ」

「ですよねぇ……」


 ハーマンさん達が工事に入るのは勿論ですが、今後の事も考えてヴォルザードの城門に近い場所に門を作る事にします。

 城門の近くならば、何か騒ぎになった時に守備隊の方に駆けつけてもらえるというメリットも考えてです。


 元の城壁をくり抜いて、外側の部分に鉄製の格子門を設置する予定です。

 と言うか、肝心の門を用意しないといけないのですが……鉄が高価なヴォルザードで用意するより日本で注文した方が早いかもしれませんね。

 ちょっと梶川さんに、電話で相談してみましょう。


「はい、梶川です。何かあったのかい?」

「えっ、いえ……ちょっと個人的に相談したい事がありまして」

「それでは、何もトラブルは起きてないんだね?」

「はい、それは大丈夫です」

「いや、国分君から連絡をもらうなんて滅多に無いからね、何か重大なトラブルでも起きたのかと思ったよ」

「驚かせてすみません。それで、相談なんですが、鉄製の大きな門が欲しいのですが……」

「門? あの学校とか大きな屋敷にあるような門かい?」

「そうです、そうです」

「大きさは、どのぐらいのものが必要なのかな?」

「そうですねぇ、大型の馬車が通り抜けられるぐらい……ですかね」

「それはまた、随分と大きなものだね」

「はい、実は……」


 梶川さんに、門の用途について話をすると、良いアイデアをくれました。


「分かった。それならば、中古の門を探してあげるよ」

「中古ですか?」

「そう、大きな鉄製の門とかは、新たに作ると金額が張るし時間も掛かる、処分するときにはスクラップにするよりも売った方が利益が出るからね」

「でも、都合の良いサイズがありますかね?」

「無ければ注文して作ってもらうしかないね」

「分かりました。申し訳ありませんが、手配していただけますか?」

「了解した。この程度はお安い御用だよ」


 梶川さんに門の手配をお願いした後、今度は門の設置の許可をもらいにクラウスさんを訪ねました。

 ギルドの執務室を覗くと、クラウスさんの他にアウグストさんやアンジェリーナさん、ベアトリーチェの姿まであります。


 何だか、ヴォルザード家のリビングのようですね。

 一度廊下に出て、執務室の扉をノックしました。


「どなたですか?」

「ケ、ケントです」


 クラウスさんのぶっきら棒な声ではなくて、アンジェリーナさんの優しい声が返ってきて、ちょっとドギマギしちゃいました。


「入れ!」


 あぁ、やっぱりクラウスさんの声の方が、ちょっと落ち着きますね。


「失礼します……わぁ」


 執務室に入った途端、ベアトリーチェにハグされました。


「いらしゃいませ、ケント様」

「こんにちは、リーチェ。ビックリしたよ」

「ケント様が、お姉様に気を取られているのかと思って……」


 そんな訳、ほんのちょっとしかありませんよ。


「イチャつきに来た訳じゃないだろう。何の用だ?」

「あっ、はい、城壁に門を設置する許可をいただきに来ました」

「やっと来たか。その様子だと、内装とかはハーマンに頼んだのか?」

「はい、工事に入るのに門が必要になりましたので……」

「設置するのは構わないが、出来る限り頑丈な構造にしろよ。万が一、街の中にまで魔物が入り込んだ場合には、門を封鎖する措置が……って、お前の所は大丈夫か」

「いえ、ヴォルザードに魔物が押し寄せるような状況では、僕の眷族達も街の防衛に出てしまいますので、門は厳重に封鎖出来るように考えておきます」

「そうか、分かった」

「あの、話は変わりますけど、アウグストさんとアンジェリーナさんは……」

「あぁ、二人には徐々に俺の仕事を引き継いでもらうつもりだ」


 主にアウグストさんになるのでしょうが、領主としての仕事の引継ぎを始めるようです。


「でも、まだクラウスさんは引退するには若いですよね」

「今すぐ家督を譲るつもりじゃないぞ。それでも人間なんて、いつどうなるか分からんからな、早めに仕事を覚えてもらうのは悪いことじゃないだろう」

「なるほど……クラウスさんが楽をするためでは……」

「ば、馬鹿言ってんじゃねぇよ。これまで俺がどれだけ働いてきたと思ってんだ、少しぐらい楽したって罰なんか当たらないぞ」


 クラウスさんは憤慨してみせますけど、他の三人がニヤニヤと笑っているのが全てを物語っていそうですよね。


「そ、そう言えばケント、例の指名依頼はどうなってんだ?」

「あっ、はい、今日もう一度治療を行えば終了です。一昨日訪ねた時には、かなり酷い状態でしたが、もうほぼ完治しています」

「そうか、デュカス商会は、マールブルグで業績を伸ばしている商会だと聞いているが、会長はどんな人物だった?」

「そうですね……こちらでは先進的な考えの持ち主になるのでしょうか」

「ほう、商売相手として信頼出来そうか?」

「はい、僕もマールブルグまで行って初めて知ったのですが、ロベーレ商会が所有する鉱山で落盤事故が起きていました」

「落盤事故だと、どのぐらいの人間が巻き込まれたんだ?」

「はい、巻き込まれたのは四十人以上でした……」


 落盤事故の状況と、救出までの顛末、それに救出活動にデュカス商会に所属する坑夫達が積極的に参加していた事などを話ました。


「なるほどな。己だけの利益を追求するのではなく、鉱山全体の利益を重視しているのか」

「はい、実際、救出の報酬もデュカス商会から支払われることになっています」

「なんだ、ロベーレが払うんじゃないのか?」

「はい、それどころかロベーレからは救出に関してもクレームを付けられているようです」


 ロベーレ商会の会長アロンツォが直談判に乗り込んできた事を話すと、クラウスさんは呆れたような溜め息を洩らしました。


「そいつは、典型的な老害ってやつだな」

「ですが、跡を継ぐと言われているアンヘルさんは、オルレアンさんに近い考えのようです」

「そんな跡継ぎがいるならば、さっさと家督を譲っちまえば良いものを……俺はそんな老害になるまえに隠居するからな、頼むぞアウグスト」

「はい、心得てますよ、父上」


 僕の目から見れば、むしろクラウスさんの方が柔軟過ぎるように見えますけど、まぁ、それは言わない方が良いですよね。


「何をニヤニヤしてやがんだ、ケント」

「いえ、ヴォルザードは安泰だと思っていただけです」

「ふん、これで目の前にいるSランク冒険者に、もう少し落ち着きが出れば、なお安泰なんだがな」

「それは……暖かい目で見守っていて下さい」

「ふふっ、俺の身内になるんだ、厳しい目でチェックしてやるよ。ケント、今日もマールブルグに行くんだったな?」

「はい、今日で治療は終わりです」

「そうか、お前も忙しい身の上だとは分かっているが、時間がある時で構わんから、時々デュカス商会に顔を出しておけ」

「何か理由でも?」

「あるぞ……鉄だ」

「デュカス商会と取り引きするんですか?」

「馬鹿、ヴォルザードにはニホンから高純度の鉄が入ってくるんだぞ、これからマールブルグとの関係が逆転したり、ライバル関係になったりするかもしれない。それに、ニホンが資源開発に本腰を入れてくるならば、必ずマールブルグと取り引きする事になる。その下準備として人脈を作っておくんだ」

「なるほど……これから大きく関係が変わるかもしれないんですよね」

「そうだ。それに付いて、ケント、一つ頼みたい事がある」

「何ですか、頼みって?」

「俺を召喚してくれ」


 クラウスさんからの意外な申し出に、一瞬理解が追いつきませんでした。


「はっ? しょ、召喚って、日本に行くって事ですか?」

「そうじゃない。お前、下宿の娘をニホンに連れて行ったそうじゃないか」

「はい、メイサちゃんを唯香の家に遊びに行かせましたが……」

「召喚すると、言葉の知識を手に入れられるんだよな?」

「あっ、なるほど、ニホンとの交渉のために言葉を覚えてしまおうって訳ですね」

「そういう事だ。何もニホンまで送らなくても構わん、隣の部屋でも廊下でも、ちょいと移動するだけで言葉を覚えられるか試してみてくれ。そして、俺で成功したならば、三人にも同様の措置を頼む」

「えっと、指名依頼って事でよろしいでしょうか?」

「ふん、成功報酬として、一人あたり十万ヘルトでどうだ?」

「いえ、冗談ですよ。大した事じゃありませんから必要ありません」

「リーチェ、手続きしておけ。それに成功すれば、その価値は十万ヘルトじゃ安いくらいだからな」


 確かに、考えてみれば交渉の席で、相手の国の言葉が分かっているか否かで、優位性は大きく変わってきます。

 日本との交渉において、僕がヴォルザード側に付く限り優位性は動かないとは思いますが、それでも言葉の優位性はあった方が良いに決まっています。


「では、試してみますので、絶対に動かないで下さい」

「分かってる、片足バッサリとかは御免被るからな」

「では、行きます。召喚!」


 執務室の中で、右から左へ二メートルほど移動させるだけの召喚術ですが、日本語の知識を付与するようにイメージして行いました。


「どうですか?」

〈あぁ、これが日本語ってやつだな〉

〈はい、どうやら上手くいったみたいですね〉

〈問題なさそうだ。アウグスト達にも頼む〉

〈了解です〉


 たった二メートルほどの移動でしたが、日本語知識の付与には成功したようです。

 この後、アウグストさん、アンジェリーナさん、ベアトリーチェにも日本語知識を付与し、後日マリアンヌさんとバルディーニさんにも施術するように頼まれました。

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