第228話 眠れない一夜が明けて
バルシャニアの宮殿で朝を迎ましたが、僕の理性は本当に頑張ったと思います。
お風呂上りに用意されていた寝巻きは、足首までの丈がある長いシャツみたいで、下着は着用しないのだと説明されました。
生地はサラサラとして肌触りが良いのですが、薄くて着ていないように感じるぐらいです。
セラフィマも同じような寝巻き姿でベッドに入ると、ピッタリと身体を寄せてきて妖艶に微笑んで見せます。
「おやすみなさいませ、ケント様」
「お、おやすみ、セラ」
って、眠れるかい!
セラフィマは、僕の左腕を枕にして身体を密着させ、逃がさないとばかりに足まで絡めています。
眠っているのかいないのか、時折セラフィマがモゾモゾと動く度に、薄い寝巻き越しにフニフニと柔らかな感触が伝わって来て、とてもじゃないけど眠れません。
このままでは、僕の理性が崩壊するのも時間の問題なので、精神安定剤を召喚いたしましょう。
広いベッドの空いている僕の右側をポンポンと叩くと、意図を察してヒルトが出て来ました。
右肩に頭を乗っけるついでに頬っぺたをペロペロされちゃいました。
うん、ヒルトは無理して足を絡めようとしなくても良いからね。
このモフモフが居る限り、僕の煩悩は……消えないよ! 消える訳がないよ。
プニプニ、スリスリ、ヤバいって。
そうそう、ヒルトもモフモフ、スリスリして僕の気を紛らわせてね。
結局、セラフィマが動きを止めている間にウトウトしたぐらいで、あんまり眠れませんでした。
朝食の席で眠たそうにしている僕の顔を見て、リサヴェータさんは満面の笑みを浮かべましたが、実情を聞いてガックリしていましたね。
「まったく、そんな遠慮なんか要りませんよ。早く私に孫の顔を見せて下さいな」
「はぁ、それは輿入れが済んだ後という事で……」
その輿入れの方法ですが、道中の安全などを考慮して召喚術か送還術での移動を提案したのですが、あっさりと却下されてしまいました。
その上、輿入れの行列には、選りすぐりの騎士を百名も同行させると言われました。
「いやいや、コンスタンさん、僕は騎士を百人も養えませんからね」
「何を勘違いしている。護衛のために同行させるが、セラフィマを無事にヴォルザードまで届けたら、全員バルシャニアに帰還させるに決まっておろうが」
「はぁ、それなら良い……のかな?」
「何だ、まだ何か不満でもあるのか?」
「護衛のために同行するのですから、騎士は武装した状態ですよね」
「当然だ。武器も持たずに護衛の役目が果たせる訳なかろう」
「それはそうなんですが、武装したバルシャニアの騎士がリーゼンブルグを通るのは……」
バルシャニアとリーゼンブルグは、間にダビーラ砂漠を挟んでいますが、長年に渡って対立を続けてきた国同士です。
行商を目的とする商隊の往来はありますが、国同士の交流は行われていないと聞きます。
「ふふん、だからこそだ」
「だからこそ……って、まさか見せ付けるために騎士を同行させるのですか?」
「第一の目的はセラフィマの護衛、それについて嘘偽りは無い。だが、示威行動であるのも確かだ。バルシャニアの皇族がヴォルザードに輿入れする。これをリーゼンブルグの連中に思い知らせてやれば、バルシャニアにも、ヴォルザードにも戦いを仕掛けようなんて思わなくなるだろう。すでにリーゼンブルグには使者を送ったぞ」
王位を継承するカミラに限って、無益な戦を仕掛けるような馬鹿げた行動はしないと思いますが、一応掌握したとは言っても、貴族の中で血気に逸って不測の事態を引き起こす者が居ないとも限りません。
コンスタンの考える示威行動は理に適っているようにも思えますが、示威行動自体がトラブルの引き金になるのではと心配になってきます。
『ケント様、その手の暴発を食い止める役割は、ワシ等が担いましょう』
『やっぱりそうなるか……頼むね、ラインハルト』
『なぁに、おやすい御用ですぞ』
セラフィマの輿入れの一行は、十六日にグリャーエフを出立、バルシャニア国内をパレードするように進み、国境の街チョウスクに着くのは月末辺りになるそうです。
更に、リーゼンブルグ国内では、アルダロスの王城を表敬訪問する予定だそうです。
「どうした、ケント・コクブ。まだ何か懸念があるのか?」
「これまで対立してきた国の皇女が、いきなり行って大丈夫なんですかね」
「それを取り成すのは、婿の仕事ではないのか? リーゼンブルグのために我が軍の侵攻を止めたのだ、今度はバルシャニアのために奴らが暴走するのを止めねば片手落ちであろう」
「いや、それはそうかもしれませんが……」
カミラとセラフィマが対面するのは、僕的には余り好ましくない状況のような気がするんですよね。
なんて言うか、修羅場的な状況に陥ったりしないか、ちょっと心配になります。
『ぶははは、その手の暴発を食い止める役割は、ケント様にやっていただくしかありませんな』
『うっ、分かってるよ。分かってるけど気が重いんだよねぇ……』
『ぶははは、文句を言うようであれば、二人とも組み敷いて黙らせてしまえば良いだけですぞ。片やリーゼンブルグの次期国王、片やバルシャニアの皇女、この二人をまとめて相手にするなど魔王でなければ出来ませぬぞ』
『そういう言い方をされると、何か男のロマンっぽい感じするけど、そんなに軽々しく出来る事じゃないと思うんだけど……』
まぁ、カミラとセラフィマが衝突しないように、ハルトとヒルトには上手く連携を取ってもらいましょう。
セラフィマがアルダロスに到着するのは、どんなに早くても三週間以上先の話です。
それまでに、同級生の帰還とかの問題を解決して、僕自身が即応出来る体制を整えておきましょう。
バルシャニアの宮殿で遅い朝食をご馳走になってから戻ると、ヴォルザードはもうお昼近くでした。
クラウスさんの御屋敷に出向いて、セラフィマの輿入れの日程を報告しようかと思ったのですが無理でした。
クラウスさんと唯生さんは、妙に馬が合ったらしく、昨晩も遅くまで杯を重ねていたそうです。
同じ年頃の娘を持つ親同士で、全く違った環境で育って来た者同士なので、話のネタには事欠かなかったようで、二人とも二日酔いで起きて来られないようです。
唯香が治癒魔術を掛けようとしたそうですが、マリアンヌさんと美香さんにストップを掛けられ、まだ二人とも頭を抱えて唸っているそうです。
「健人、出来たらメイサちゃんを呼んでもらえないかな。今日の夕方には美緒は日本に帰らなきゃいけないでしょ。それまで一緒に過ごせたらと思って」
「分かった。ちょっと下宿まで戻って来るよ」
一旦下宿に戻って、メイサちゃんと一緒にクラウスさんの御屋敷へと向かいました。
今日も中庭でシートを広げてピクニック気分です。
今日はマリアンヌさんとアウグストさん、アンジェリーナさんも参加しています。
アウグストさんは、姿を現したゼータ達に歩み寄ると、爪や牙を見せてもらったり、何やら質問をしています。
気さくだけど妙に真面目な感じで、ちょっと面白いですね。
「ケント、こっちにいらっしゃい」
今日は二日酔いではないらしく、笑みを浮かべたアンジェリーナさんに誘われれば、喜んで行くしかないですよね。
「さぁ、座って座って」
「はい、失礼します」
アンジェリーナさんの隣に座った途端、ぐいっと腕を絡められて捕まえられました。
「ケント、昨日はバルシャニアにお泊りしたんだってねぇ」
「は、はいぃ、そうですけど……」
「何があったのか、お姉ちゃんに全部話してみなさい」
うっ、アンジェリーナさん、笑みを浮かべているけど目が笑っていませんね。
と言うか、唯香とベアトリーチェは、目が吊り上がりつつあるんですが……
「バルシャニアでは、用意されていた衣装に着替えさせられて、宴席に出させられて、おっさん達の相手をさせられて大変でした」
うん、嘘は言ってないよね。色々と省略した部分はあるけど、それはダイジェスト版と言うことで納得していただきましょう。
「ふーん……ねぇケント、その用意されていた衣装って、どんな衣装だったの?」
「えっと、ゆったりとしたシャツとパンツ、それと短いベストを羽織る感じでした」
「色は?」
「えっ、色ですか?」
「うん、布地のとかベルトとかの色」
「えっと、布地は白で、ベルトとかベストはグリーンでした」
「宴会場の席は、どんな感じだった?」
「えっ、席順は……正面に僕とセラフィマが並んで、その両側に皇帝コンスタンと皇妃リサヴェータが座って、軍とか役所の偉い方がズラーっと座ってる感じでした」
「はぁ……やっぱりね」
僕の話を聞いたアンジェリーナさん、ベアトリーチェ、それにマリアンヌさんは溜め息を洩らしています。
「えっと……何か拙い事がありましたか?」
「あのね、ケント。バルシャニアでは、公式の席で白とグリーンの衣装を身に着けることが許されるのは、皇族に限られているのよ」
「えぇぇ、じゃあ、あの宴席って……」
「ケントと、そのセラフィマって子の結婚式ね」
まぁ、席の並びからしても、歓待のされ方からしても納得なんですけど、せめて一言ぐらいあっても良いよねぇ。
「ねぇ、ケント。その宴会の後は、どうしたのかな?」
「え、宴会の後ですか? それは悪酔いしないように自己治癒を使い続けていたんで、疲れて眠っちゃいました」
「一人で?」
「えっ、何がですか?」
「ベッドに入ったのは一人だったのかな?」
「そ、それは……」
アンジェリーナさんにガッチリ腕を捕まえられて、それはそれは素晴らしい感触も楽しめているのですが、それと引き換えに鋭い追及から逃れる術がありません。
「ケント、お姉ちゃんに正直に答えなさい。セラフィマって子と一緒だったのね?」
「は、はい……でも! でも、何にもありませんでしたよ。本当です、ヒルトも一緒でしたから」
「本当かなぁ……」
「本当です! 本当ですって、やましい事なんて何もありませんから、、そういう事は輿入れが済んでからって断わりましたから。そう、その輿入れの日程なんですけど……」
セラフィマの輿入れに関する日程や道程を話すと、マリアンヌさんやアンジェリーナさんの表情が引き締まりました。
やはり領主一族だけあって、バルシャニアの意図は敏感に察したのでしょうね。
「クラウスさんには、また後日報告しますが、マリアンヌさんは、どう思われますか?」
「そうね……でも、その前に、私のことはお義母さんと呼んでくださいね」
「はい、えっと、マリアンヌ義母さん……」
「私のことも義兄さんと呼んで構わんぞ」
「えっ、は、はい、アウグスト義兄さん」
意外なところから声が掛かって、ちょっとビックリしましたが、アウグストさんは単なる堅物ではないみたいですね。
「それで、マリアンヌ義母さんは、どう思われますか?」
「私の立場からしてみれば、バルシャニアのやり方は歓迎よ。ヴォルザードとの間に友好関係が築かれているとリーゼンブルグが思ってくれれば、無用な衝突の心配が減らせますからね」
「アウグスト義兄さんは?」
「私も同じだな。そもそも、今回の輿入れに関して、ヴォルザードには何のリスクも無い。冷たい言い方だと思うかもしれないが、例え紛争が起こったとしても、それはリーゼンブルグとバルシャニアの問題だ。更に付け加えるならば、輿入れが終わったとしても、バルシャニアとヴォルザードが直接関係を結ぶ訳ではない」
「いや、それはさすがに……」
「まぁ、待て。ケントが言いたいことは分かっている。今話しているのは、こうした考え方も出来るという話だ」
セラフィマは僕の所へ輿入れして来るけど、直接的に領主一族と縁を結ぶ訳ではないので、リーゼンブルグとバルシャニアが紛争状態になった場合、ヴォルザードは無関係を主張する事も出来なくはない……という話だそうだ。
勿論、僕としては、そんな事態になったならば無視する訳にはいかないし、全力で紛争解決に動きますよ。
そう伝えるとアウグストさんも頷いてみせました。
「そうだな。実際、ケントが万全の状態でいるのならば、ヴォルザード、リーゼンブルグ、バルシャニアの間で紛争が起こる可能性は限りなく低いだろう。だから、バルシャニアの示威行動は全くの無駄とも言えるのだが……やらずにはいられないのが人間というものだ」
「でも、国の首脳とか貴族は良いとして、民衆の反発とか招きませんかね?」
「それは仕方の無い事だろう。長年に渡って反目を続けてきた国同士だ、すぐに和解とはいかないだろうが……良い方向へ進む切っ掛けにする事は出来るのではないのか?」
「そうか、何も悪い結果になるとは限らないんですよね。セラフィマの輿入れを切っ掛けにして、友好関係を築けるようにすれば良いんですよね」
セラフィマは、ヴォルザードへと向かう途中でリーゼンブルグの王都アルダロスに立ち寄る予定です。
その時に、関係改善の切っ掛けとなるような提案が出来ないか、考えてみましょう。
セラフィマ一行が通る事で、その地方の利益になるような事があれば、バルシャニアに対するリーゼンブルグ国民の見方も変わってくるかもしれません。
真っ先に思い浮かんだのは、砂漠化された土地の開発技術の提供ですが、バルシャニアの工兵隊は、ギガースに襲われたライネフの復興事業にも追われていそうなので、ちょっと難しいかもしれません。
『ケント様、砂漠の開発までは難しいですが、街道の整備であれば我らでも可能ですぞ』
『そうか、うちには土属性のコボルト隊やゼータ達が居るもんね。それは検討しよう』
『セラフィマ嬢の道中の安全確保にも役に立ちますし、街道の整備は住民にとっても利益となりますぞ』
せっかくセラフィマが嫁いで来るのだから、その道程は厄介事ではなく、お祝い事にしなくちゃ駄目ですよね。
セラフィマ一行がリーゼンブルグに入るまでには、まだ少し時間がありますから、他にも良いアイデアが無いか考えてみましょう。
浅川家の三人は、夕食を済ませた後で日本に戻る事になっています。
マリアンヌさんの提案で、再びマノン一家とアマンダさんを招待しての夕食会を行う事になりましたが、今夜はお酒は無しだそうです。
午後のお茶の時間には、クラウスさんや唯生さんも顔を出しましたが、夕食の席での禁酒を言い渡されるとガックリとしていました。
いやいや、二日も続けてデレンデレンになるほど飲んだら十分でしょう。
「国分君、また日本のゴールデンウィークの頃に、こちらに招待してもらえるかな?」
「はい、構いませんよ。今回は同級生の帰還も済んでいませんでしたから、街中での観光とかは控えてもらいましたが、その頃ならば帰還も終わっているでしょうから、ゆっくりと観光してもらいます」
「そうだね。ヴォルザードは昔の日本のように正月期間は店も休みになってしまうみたいだしね」
「そうだ、召喚術が使えるようになったので、ヴォルザード以外の街にも遊びに行けますよ」
「おぉ、本格的な異世界旅行か、それは凄いな」
「日本政府からはNGが出るかもしれませんが、まぁ大丈夫でしょう」
唯香やマノン、ベアトリーチェ達も、いずれリーゼンブルグの王都アルダロスや、バルシャニアの帝都グリャーエフ、国境の街チョウスクなどにも連れて行ってあげたいですね。
そもそも、僕自身が騒動の始末のために飛び回っているだけで、どこの街もロクに観光なんてしていないんですよね。
そう考えたら、みんなを連れて新婚旅行なんて良いかもしれませんね。
美緒ちゃんとメイサちゃんは、すっかり仲良くなっていて、日本から持って来たらしいトランプや綾取りをしたり、マルト達と一緒に走り回って遊んでいます。
そうかと思えば、やけに静かになったと目を向けると、ネロのお腹に寄り掛かって眠りこけていたりしました。
自由奔放という言葉がピッタリな感じですが、お別れする時が辛くなりそうだなと思っていたら、夕食会の時にメイサちゃんからおねだりされました。
「ねぇねぇ、ケント」
「何かな、メイサちゃん」
「ニホンに行ってみたい」
「うーん、日本へかぁ……」
「ねぇ、良いでしょう? ミオが泊めてくれるって言ってるし」
「いや、でもアマンダさんや美香さんに聞いてみないと……」
「二人が良いって言ったら、連れてってくれる?」
「うーん……でも、日本に行っても平日だと案内とか難しいだろうし……」
「ニホンは、明日と明後日はお休みだってミオが言ってたよ」
「じゃあ、アマンダさんと美香さんが良いって言ったらね」
「やったーっ! ケント大好きぃ!」
はいはい、と言うか日本に行きたいだけだよね。
ちょっと不安もありますが、メイサちゃん一人ぐらい守れないと、将来的にお嫁さんを連れて日本に行くなんて出来ませんもんね。
美香さんは二つ返事で、アマンダさんは渋々といった感じでメイサちゃんの日本行きを許可してくれたそうです。
今日は日本では金曜日だそうなので、日曜日の夕方までの滞在予定で浅川家にショートホームステイとなるようです。
梶川さんへは、事後承諾という形にしちゃいましょう。
たぶん、厳密にいうと密入国を手引きした事になっちゃうんでしょうけど、物々しい警備体制とか手配されちゃうと、メイサちゃんが楽しめなくなりそうですからね。
でも、東京見物とか、ちょっと楽しそうですよね。
夕食会の後、浅川一家三人とメイサちゃんと東京に送還する事になりました。
こうして会えると分かっても、やっぱり家族と別れるのは寂しいのか、唯香は美香さんと抱き合って涙を流していました。
その姿を眺めていると、唯生さんから声を掛けられました。
「国分君、唯香の事を頼むよ。ヴォルザードに来て、クラウスさんを始めとして皆さんと話をしてみて、この街ならば安心だと確信が持てた。父親としては心配もあるのだが、君とヴォルザードを信頼する。どうか私の期待を裏切らないでくれたまえ」
「はい、僕の全力をもって御期待に沿えるように頑張ります」
唯生さんとガッチリ握手を交わした後、光が丘の浅川家に先乗りし、リビングにシートを広げ、闇属性のゴーレムを設置しました。
その後、まずは浅川家の三人を送還、その次に日本語の知識を付与するようにイメージしながらメイサちゃんを送還しました。
〈わぁ……ここがもうニホンなの?〉
「おっと、メイサちゃん、靴を脱いでね。日本では家の中では靴を脱ぐんだよ。それと、僕の話してる言葉は分かるかな?」
「えっと……分かる。これがニホンの言葉なの?」
「そうだよ、どうやら大丈夫そうだね」
メイサちゃんは、浅川家のリビングを物珍しそうに眺めた後、美緒ちゃんの部屋へと突撃していきました。
〈じゃあ、唯生さん、メイサちゃんをお願いしますね〉
〈おぉ、戻った後もヴォルザードの言葉は分かるままなんだね〉
「どうやら、大丈夫みたいですね。これで日本から連れていく人への通訳も要らなくなりそうです」
「そうだね。メイサちゃんは責任持ってお預かりしますと、アマンダさんに伝えてくれるかな」
「はい、了解しました。一応、僕の眷族を影に潜ませておきますので、万が一何か起こった場合には、声を掛けて知らせて下さい。すぐに駆けつけますから」
「分かった。でも、そうそう日本ではトラブルは起こらないと思うよ」
「まぁ、そうでしょうし、そうでないと困りますね」
もう一度、浅川夫妻と挨拶を交わして、ヴォルザードへと戻りました。
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