第221話 年越しのパーティー

 パーティーへ行くまでの間、スマホの電源を入れてネットの評判がどうなっているのか覗いてみました。

 やはり一番話題になっているのは足の接合を撮影した動画でした。


 最初はCGではないのかと疑問視する声が多かったようですが、幾つもの検証サイトまで作られ、その結果トリック無しの接合だったと分かると、驚愕の声が上がりました。


 二十分少々という短時間での接合、その後に、肩を借りているとは言え、リハビリもせずに立って歩く姿は、現代医学では到底なしえない領域です。

 これならば、今の医学では不可能とされている、人間の首をすげ替えるような事すら可能ではないかといった意見まで見受けられました。


 治癒魔術に関して、色々な可能性や様々な憶測が飛び交い、それに伴って一度は下火になった清太郎ちゃんの件が再燃していたりするようです。

 日本政府の対応は、映像は日本ではない異世界で撮影されたものであり、詳細の確認が出来ていない。


 魔術を使うには、その基礎となる魔素が必要である事が確認されており、魔素が存在しない地球上では、魔術による治療は難しいと思われるという見解を発表し、治療の依頼は受け付けていないという声明を出していました。


 梶川さんのメールにも日本政府の方針に付いて説明がなされていて、情況が沈静化するまではマスコミとの接触を控えて欲しいという要請が添えられていました。

 まぁ、情況がどうであれ、マスコミと接触するつもりなんてありませんけどね。


 そして、もう一点気になっていたのは、中川先生への風当たりですが、これはもうネット上でもフルぼっこ状態でした。

 中川先生個人の情報に限らず、自宅や家族の個人情報まで特定され、バラ撒かれていました。


 中川先生がノイローゼになる切っ掛けとなった家庭内でのトラブルも暴露されていましたし、娘さんの交際相手や友人関連の情報までが流出していますから、家庭崩壊待った無しの状況じゃないですかね。


 僕の父さんもマスコミに叩かれ、ネット上で個人情報が流出して、住む家さえも引き払う事になりましたが、光が丘の自宅と湾岸のマンションの二軒を引き払ったので、お金には困らなかったようです。

 ですが、中川先生は普通の公務員ですし、自宅を引き払って新しく家を購入するような余裕があるとは思えません。


 今のところ記者会見などは開かれていないようですし、マスコミの追及が長期化するようだと、中川先生が更なるトラブルを起こさないか心配になりますね。

 ただ、中川先生が悪目立ちしてくれたおかげか、帰還した生徒に関する情報は殆ど見受けられません。


 渡瀬や藤井は、トラブルの結果として帰還する事になっているので、リアル魔物狩りとグリフォンの件でマスコミの追及を受けなくて済むならば、中川先生にもう少し囮役を務めてもらうのも良いのかもしれません。


 もう一つ、生きたゴブリンを送還した件についても、何の記事もなっていませんでした。

 おそらく日本政府が発表を控えている状態なのでしょう。


 生物学上の調査が終わり、飼育体制が確立されたならば、あるいは一般公開が行われるのかもしれませんが、今の所は機密扱いなのでしょうね。


『ケント様、そろそろお支度を始められた方が宜しいですぞ』

「えっ、もうそんな時間か、ありがとう、ラインハルト」


 シャワーを浴びて、一張羅に着替えていると、ドアを勢い良く開けてメイサちゃんが入って来ました。

 いつもとは違って、余所行きのワンピース姿です。


「ケント、準備出来た?」

「もうちょっと」

「もう、遅い! 早く、早く!」

「はいはい、分かったからさ、せっかく可愛い格好してるんだから、もうちょっとお淑やかに出来ないかなぁ」

「可愛い? あたし可愛い?」

「可愛いですよ、お嬢様」

「お嬢様……?」


 ここでツーンと澄ましちゃわないで、ニヘラって表情が崩れちゃう辺りがメイサちゃんらしくて良いですね。


「さぁ支度が整いました。参りましょう、メイサお嬢様」

「う、うん……行く……」


 仰々しく片膝をついて手を差し出すと、メイサちゃんはロボットみたいなギクシャクした動きで手を握ってきました。

 思わずギューってして、頭をワシワシ撫で回したくなりましたが、我慢しておきましょう。


 一階に下りると、こちらも支度を終えたアマンダさんが待っていました。

 うん、社交界を牛耳るマダムみたいで、デラックスな感じですねぇ。


「何だいケント、何か言いたいことでもあるのかい?」

「いいえ、いつもとは雰囲気が違うので、ちょっとビックリしましたが素敵ですよ」

「何言ってんだい、褒めても何にも出ないよ。今夜は、料理はしないからね」

「はい、クラウスさんのお屋敷で、ご馳走になりましょう」

「あぁ、そうさせてもらうけど……ケント、あんたは飲みすぎるんじゃないよ」

「そうそう、ケントはお酒禁止だからね」

「ぐぅ、分かってます。唯香のご両親もいらしてるから、あまり見苦しい姿は見せられませんからね」


 とは言え、クラウスさんが年代物のリーブル酒なんて持ち出してきたら、誘惑に耐えられる自信は無いですよね。

 夕暮れ時のメインストリートは、綺麗に飾り付けられ、魔道具の明かりも灯されていますが、人通りは殆どありません。


 今夜開いている店は、独り者を相手にした酒場が数軒程度だそうです。

 静かな街をメイサちゃんを真ん中にして並んで歩いて行きます。


「本当に静かですねぇ」

「そりゃ年越しの日だからねぇ……一年の終わりって感じがするだろう?」

「はい、僕の住んでいた街では、もっと賑やかに新年を迎えますが、こういう感じも良いですね」

「これから何度だって味わえるさ」

「そうですね。来年も良い年になるように頑張ります」


 街の中心部を通り掛かると、ギルドのドアが開いてドノバンさんが出てきました。

 ビシっとした服装をされていますが、こんな日まで仕事してたんですかね。


「こんばんは、ドノバンさんもクラウスさんの御屋敷に行かれるのですか?」

「あぁ、そうだ」

「年越しの日までお仕事とは大変ですね」


 ちょっとだけ皮肉ってみると、ドノバンさんはニヤっと凄みのある笑みを浮かべました。


「まったく、どいつもこいつもキッチリ仕事を済ませない奴が多くてな、年明けにはたっぷりと絞ってやらんとならん。特に、指名依頼の完了報告を忘れているようなマヌケは念入りにやらんとな」

「げぇ……そ、それは……」

「ふっ……覚悟しておけよ」

「はい……」


 そうでした、ヴォルザード家の護衛という指名依頼の完了報告に行こうとした時に、ハルトがカミラの危機を知らせに来て、それからブースターを使って三日間も寝込んで、すっかり報告の事を忘れていました。


「はぁ……何やってるんだよ、僕は」

「お母さん、やっぱりケントはケントだね」

「あははは、メイサ、完璧なケントなんて気持ち悪いだろう」

「あぁ、それもそうかも……」

「ケントは、このぐらいが丁度良いのさ」

「ぐふぅ、来年はキッチリ、カッチリやりますからね」

「あははは、そいつはどうだか……」

「ねぇ――」


 ううぅ、酷いです、一年いや四ヶ月弱ですけど僕、頑張りましたよね。

 もうちょっと扱いが良くなっても良いんじゃないですかね。


「覚悟しておけよ」

「はい……」

『ぶはははは、ケント様、最近特訓もサボっておられますからな。年明けからはビシビシと鍛えますぞ』

『あぁ、なんだか新年を迎えるのが憂鬱になってきちゃったよ』


 御屋敷には、パーティーの参加者が集まって来ていました。

 クラウスさんを筆頭に、マリアンヌさん、アウグストさん、アンジェリーナさん、バルディーニさん。


 マノンの母親のノエラさんに、弟のハミル。

 浅川唯生、美香夫妻と美緒ちゃん。


 唯香とマノンは、ベアトリーチェの部屋でドレスに着替えている最中だそうです。

 美緒ちゃんは、既にアンジェお姉ちゃんに捕捉されて、ハグ&良い子良い子の虜となっていますね。


 ちょっと、そこのポジション代わってもらえないかなぁ……って、ハミルも思ってそうですね。


「アマンダさん、唯香のご両親を紹介しますね」

「あぁ、向こうから呼んでるんだったね」


 アマンダさんとメイサちゃんを連れて、浅川夫妻の所へと歩み寄りました。


「唯生さん、美香さん、こちらは僕の下宿先のアマンダさんと娘のメイサちゃんです」

「どうも初めまして、唯香の父の唯生と申します、こちらは妻の美香です」

「初めまして、おたくのユイカちゃんは、良く出来た娘さんだねぇ……ケントにはもったいないぐらいだよ」

「いえいえ、まだまだ子供ですからね。いろいろとご迷惑をお掛けしているんじゃありませんか?」

「とんでもない。うちの店で夕食会を開いた時だって、それは手際良く手伝ってくれたもんさ。それに、お客さんから聞く診療所の噂も良い話ばっかりだよ」

「いやぁ、そう言っていただけると、親としてもホッとします」


 大人同士の話が弾み始めたので、今度はメイサちゃんを美緒ちゃんの所へ連れて行きましょう。

 そうそう、美緒ちゃんとメイサちゃんを引き合わせるのが目的で、僕がアンジェお姉ちゃんの所へ行くのが目的じゃないですからね。


「こんばんは、アンジェお姉ちゃん、美緒ちゃん、こちら下宿先の娘さんで、メイサちゃんです」

「まぁ、可愛い、いらっしゃいませ」

「メ、メイサで……ふぐぅ」


 おぅ、スッポリと埋まってしまってますねぇ……今夜のアンジェお姉ちゃんは、若草色の光沢のある生地を使ったドレス姿で、大胆に開いた胸元に視線が吸い寄せられてしまいます。


「んー……今夜は幸せ。こんな可愛い妹が二人も出来るんですからねぇ……」


 アンジェお姉ちゃんは、美緒ちゃんとメイサちゃんを両手で抱え込んでいます。

 ちょっと、その真ん中に失礼しちゃ……駄目ですよね。


 分かってるから、バルディーニは殺し屋みたいな視線で睨んで来るんじゃないよ。

 鼻でせせら笑った後で僕から視線を外したバルディーニでしたが、感電したかのように身体を震わせると、口を半開きにして一点を見詰めました。


「う、美しい……」


 バルディーニの視線を辿った先には、美しく着飾った三人の女性が佇んでいました。

 唯香は黒のサテン地のドレスで、ホルターネックと言うのでしょうか、ちょっと胸元大胆に開きすぎじゃないかなぁ。


 マノンは水色のドレスで、襟元はハイネックですが肩から背中が大胆に開いていて、スレンダーなスタイルが強調されて大人っぽい感じです。

 ベアトリーチェは真っ赤なドレスで、ビスチェと言うのでしょうか、肩紐が無く下から支えている感じです。


 なるほど、兄馬鹿はベアトリーチェの美しさに目を奪われてたんだね。


「誰なんだ、あの美しい人は……」

「えっ?」


 ちょっと待って、バルディーニが夢遊病みたいにフラフラ歩き出したけど、ベアトリーチェに見惚れてたんじゃないの。

 ピンっと耳を立てたバルディーニが歩み寄ったのは、ベアトリーチェではなく唯香でした。


「美しい人よ、どうか貴女のお名前を聞かせていただきたい」


 右手を胸にあて、恭しく腰を折ってみせるバルディーニの姿は、嫌味なほどに堂に入っています


「は、はい、ユイカ、ユイカ・アサカワです」

「マ.マノンです」

「ん? 君の名前は聞いていない」


 自分も初対面なので、名乗った方が良いとマノンは思ったのでしょうが、バルディーニは全く興味が無いと知らしめるように冷たく言い放ちました。

 マノンがしょんぼりと肩を落し、唯香の眉がピクっと吊りあがりました。


 あぁ、あれはかなり怒ってますよ、僕なら正座コースですね。

 同じく眉を吊り上げたベアトリーチェが、三人を代表するように口を開きました。


「ディー兄さん」

「どうした? リーチェ」

「どうしたじゃありません。挨拶をしてくれたレディーに対して失礼です」

「何がだ。今夜は、うちの家族を除けば庶民ばかりと聞いているぞ。いやそうではないのか、こちらのレディーは家名を名乗られたのだから……」

「良く話を聞いていなかったみたいですね。ユイカさんも、マノンさんも、私と同じくケント様の元へと嫁ぐ予定ですので、ディー兄さんの出る幕はありませんよ」

「な、何だと!」


 グリっと音がするぐらいの勢いで振り返ったバルディーニは、また殺し屋みたいな視線で僕を睨み付けてきました。

 ふふん、そんな視線を向けられたら、期待に応えないといけませんよね。


 バルディーニの視線を受け止めながら三人に歩み寄り、視線で合図を送ると、唯香はすっと身体を寄せて来ました。


「とっても綺麗だよ、唯香」

「ありがとう」

「でも、ちょっと胸元開きすぎじゃ……」

「うふふふ、これはケントへのサービス……」


 唯香は、僕の右側へと移動してマノンに頷きました。

 頷き返したマノンは、僕の胸へと飛び込んで来て、強く抱きついてきました。


「とっても素敵だよ、マノン」

「ありがとう、でも、僕……」

「僕にはマノンが必要。そばに居てくれるよね」

「ケント……」


 瞳を潤ませたマノンを、もう一度強く抱きしめてから、ベアトリーチェに頷きました。

 ベアトリーチェは、こめかみに青筋が浮くくらい歯を食いしばっているバルディーニに満面の笑みを浮かべて見せると、僕の首に両腕を回して頬を寄せて来ました。


「とっても魅力的だよ、リーチェ」

「ケント様、不束な兄で申し訳ございません」

「うん、大丈夫だよ。それより、その……色々気を付けてね」

「そうなんです。最近育ってきちゃって……でも、お見せするのはケント様だけですよ」


 ベアトリーチェは、腕を解きながら、バルディーニの方に振り向きながら僕に頭を寄り掛からせてきました。


「ふんっ!」


 律儀に最後まで見届けたバルディーニが、不機嫌そうに鼻を鳴らして離れたところで、クラウスさんが二度ほど手を叩きました。


「開会前の余興は、そんなところで良いか? さて、今夜集まってもらったのは、近い将来身内になるであろう者達だ。勿論、貴族だ庶民だなんて垣根を作るつもりはねぇ」


 クラウスさんは、笑顔のままでバルディーニに視線を向けましたが、目が笑ってないですよね。


「皆も知っての通り、今年のヴォルザードは激動の一年だった。ロックオーガ、ゴブリン、サラマンダー、オークなどの大量発生、極大発生、オマケにグリフォンなんて伝説級の魔物まで現れやがった。正直、街が壊滅したって不思議じゃない状況が続いたのに、被害を最小限に食い止められたのは……そこで鼻の下を伸ばしてる小僧のおかげだ」


 僕に向けられたクラウスさんの目は、呆れつつも笑っていますね。

 まぁ、確かに鼻の下は伸びてる自覚はありますよ。


「とんでもない一年ではあったが、別の見方をすれば、そんな状況に立ち向かえるだけの人材を得られた一年でもあった訳だ。アウグストが学院を、アンジェリーナが上級学校を卒業して、年明けからは俺の業務の一部を手伝うようになる。まだまだ老け込むつもりも現役を退くつもりも無いが、新しい年は次代へ引継ぎを始める最初の年となるだろう。平穏な日々が続いてもらいたいが、何か事が起こった時でも協力して乗り越えられていけるように、我々は一層結びつきを強めていかなければならん。今夜の集まりは、互いの絆を深めるためのものだが……堅苦しい事は抜きにして、一年の平穏に感謝し、大いに楽しんでもらいたい」


 全員に飲み物が配られて、乾杯が行われてパーティーが始まりました。

 パーティーは気軽な立食形式で、飲み物や簡単な食事が置かれたテーブルを囲んで賑やかに言葉が交わされていきます。


 最初は、初対面の浅川一家を中心にして、挨拶が交わされる時間が続き、それが終わると徐々にグループに分かれて会話が弾んでいきます。

 一番の勢力はマダム陣営で、マリアンヌさん、ノエラさん、美香さん、アマンダさんを中心にして、若い女性陣が出たり入ったりしています。


 第二の陣営はおっさん組で、クラウスさん、ドノバンさん、唯生さん、アウグストさんを中心にして、バルディーニとハミルは端っこに居る感じです。


 僕は、お嫁さん候補の三人にアンジェお姉ちゃんを加えた夢のようなグループを形成できるはずもなく、マダム陣営とおっさん組の間をチョロチョロしてるような感じです。


 おかしいなぁ……三人とも、僕のために着飾ってくれているんじゃないの? 大いに楽しむつもりだったのに。


「ねぇねぇ、ケント。モフモフも呼んでいいよね?」

「大きなモフモフとも遊びたい、いいでしょ? お義兄ちゃん」

「マルト達は大丈夫だけど、ネロ達が出てくるには、ちょっと狭いから明日ね」

「えぇぇ……あたしもネロと遊びたい」

「ゼータ、エータ、シータとも遊びたい」

「はいはい、ちゃんと時間つくるから、今はマルト達と遊んでてね」


 メイサちゃんと美緒ちゃんは、ちょっと不満そうな顔をしていましたが、マルト達が姿を表すと、すぐに機嫌を直しました。


 てかさ、ハミルも一緒に遊びたいなら、そんな仏頂面してないで混ざれば良いのに。

 ついでに、隣にいるバルディーニも混ざれば? そこだけ雰囲気暗いよ。


「ケント! ちょっと来い。ほらリーブル酒があるぞ」

「いやいや、クラウスさん。僕は日本ではまだ未成年ですから……」

「国分君、こちらの世界ではもう成人扱いなんだろう? 少し付き合いたまえ」

「いや、唯生さんまで……」

「ケント……今夜は運んでやらんから、眷族にでも運んでもらえ」

「おぅ、俺も服は脱がせてやらんからな」

「大丈夫です。あの時みたいな事にはなりませんから」

「あの時みたいとは……?」


 だいぶお酒も回って上機嫌そうな唯生さんに、夕食会で酔いつぶれて、ベアトリーチェとの朝チュンを仕組まれた話をしたら、大笑いされてしまいました。


「はははは、いやスマン、国分君にとっては笑い事じゃないね。それにしても領主一族の覚悟とは、それほどまでですか……日本で安穏と生きている身では考えられませんな」

「いや、タダオ。こんな画策をしなくて済むならば、そっちの方がずっと良いぞ」

「そうかもしれませんね。ただ、私の娘も国分君にはゾッコンのようですし……」

「男親の視点で見れば、こんな小僧のどこが良いんだ……って話だが、冒険者としては代えのきかない凄腕だから始末が悪い」

「はははは、男親なんて、みんな同じなんでしょうな。それでも有能で、人柄も悪くない、得難い人材ですよ」

「まぁ、そうだな。ほれ、どうした飲め、ケント」

「はぁ、褒められてるんだか、貶されてるのか、複雑です」


 色々と思うところはありますが、面倒なので飲んじゃいますかね。


「健人……」

「飲み過ぎは駄目だからね」

「はい、分かってます……」


 色々忘れて飲んでしまおうかと思ったら、唯香とマノンに駄目出しされました。


「飲み過ぎても、私が……」

「リーチェ……」

「大丈夫だよユイカ。今夜は僕らも一緒だから」

「そっか、じゃあ健人、ちょっとだけなら飲み過ぎてもいいよ」

「いや、気を付けるよ。色々と覚えていないのは勿体無いと思うからね」

「ケントのエッチ」

「エッチって……マノンは、何するつもりなのかな?」

「ひゃい? だって、だってケントが……」


 んー……真っ赤になってアワアワしているマノンは可愛いですよねぇ。

 この可愛らしさが理解出来ないなんて、バルディーニはまだまだですよね。

 時間が過ぎていくほどに、パーティーは賑やかに盛り上がっていきました。

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