第216話 送還実験

 ゴブリンを受け入れる準備には数日掛かると思っていましたが、翌朝には準備完了のメールが届いていました。

 とは言え、ヴォルザードと日本の時差は毎日広がっていて、今では八時間ほどになっています。


 こちらの朝の時間は、日本では日付が変わろうとする深夜になってしまいますので、実験を行うのは、今日の午後からにしますと返信しておきました。


 ちなみに日本では保険金目当ての連続殺人事件の容疑者が逮捕されたそうで、そちらにマスコミの注目が集中したらしく、例の清太郎ちゃんの一件は下火になっています。


 福沢選手の治療に絡んで辞表を提出した鈴木さんは、全ての責任は自分が背負う……みたいな事を言っていましたが、おそらく日本政府に行動を止められたのでしょう。


 あくまでも治療の事実は無いと日本政府が主張する中で、私の一存でやらせました……なんて話が出て来たら、それこそ大問題になりそうですものね。


 下宿で朝食を済ませて、魔の森の訓練場へと移動して来ました。

 午後に行う実験の準備を済ませておこうと思ったからです。


 ゴブリンの移送は、まずは一頭から始めて、魔力の残量次第ですが、数頭まとめての送還も考えています。


『ケント様、ゴブリンは何頭ほど準備しますか?』

「とりあえず、十頭ぐらいで良いかな。暴れると面倒だから二頭ぐらいを残して、他は薬で眠らせちゃおう」

『了解ですぞ。ならばコボルト隊に準備させましょう』

「うん、お願いね」


 コボルト隊のみんなが、ゴブリン狩りに出掛けている間に、もう一つ準備を進めておきましょう。

 遠距離の召喚術、送還術を使う時に、眷族のみんなを目印に使いますが、日本の空気の中に長時間居させるのは可哀相な気がするので、別の方法を思い付きました。


『ほう、目印用の闇属性ゴーレムですか』

「そうそう、魔素の無い日本の空気の中で、どのぐらいの間使えるかは未知数だけど、魔石の周囲はガッチリ土で覆って硬化させておけば、結構長時間でも大丈夫だと思うんだよね」


 ちなみに、日本との通信用に作った闇属性のゴーレムは、未だに問題無く働いていますし、内部の魔石の消耗も思ったほどではありませんでした。

 位置捕捉用の闇属性ゴーレムを四つ作り、四角く並べて実験してみましたが、問題無く役目を果たしてくれました。


 僕がゴーレムの準備を進めているうちに、コボルト隊がゴブリンを捕まえてきてくれました。

 眠らせて縛り上げたものが九匹、起きたままで縛られているのが二匹です。


 起きているゴブリンも、ザーエ達に周囲を取り囲まれて、身を縮めて震えています。

 こちらの準備は整ったので、少し時間は早いですが、練馬駐屯地に顔を出してみましょう。


 スマホで時間を確認すると、まだ朝の六時前ですが、すでに梶川さんの姿がありました。


「おはようございます、梶川さん」

「あぁ、おはよう、国分君。話に聞いていたけど、その髪は目立つねぇ。それに、朝早くから……いや、そちらは早くはないのか」

「はい、ヴォルザードは昼過ぎですね。梶川さんこそ、随分とお早いんですね」

「そりゃそうだよ。何たって、未知の生物と遭遇するんだからね」

「あぁ、そうですよね。日本に居る人にしてみれば、ゴブリンなんてファンタジーにしか登場しない生き物ですもんね。魔の森では野良猫よりも多く見掛けますから、有り難味とかゼロですね」

「なるほど、ところで国分君、そのゴブリンなんだけど、一頭あたり一億円で買い取らせて貰いたいのだけど、良いかな?」


 一瞬、梶川さんが何を言ったのか分かりませんでした。


「はっ? い、一億円……ですか?」

「駄目なら一億五千万でどうだろう?」

「いやいや、そういう意味じゃなくて、そんなに高く買い取って貰えるんですか?」

「そりゃそうさ、だってゴブリンだよ。地球に居ないんだよ。ジャイアントパンダのレンタル料が年間一億円なのを考えれば、僕は安すぎると思っているよ」


 希少価値を考えれば、パンダよりも希少ですけど、買い手とかあるんですかね。


「その、ゴブリンはどうするんですかね?」

「何しろ、貴重な生体資料だからね。簡単に殺すような事は無いと思うよ。検疫とか飼育方法とか分からないから、どの程度の需要があるかも不明だけども、もっと高い価格をだしても欲しがる人達が居る事だけは間違いないね」

「じゃあ、一頭一億円で結構なので、召喚事件の賠償費用としてもらえますか?」

「国分君個人の資産としなくても構わないのかい?」

「はい、とにかく賠償を含めて召喚に関わる事を片付けてしまいたいので……」

「なるほど……例のカミラ女王に絡んだ事情だね?」

「ぐふぅ……な、何でカミラが出て……いや出て来るのは当然か……」


 ニヤニヤとした笑みを浮かべていた梶川さんは、ちょっとだけ真面目な顔付きになって忠告してくれました。


「国分君、カミラ女王とどんな関係になろうと僕がとやかく言えた義理ではないけど、彼女に対しては根強い批判が残っているからね。何しろ、関連死を含めれば五十人以上の人が亡くなって、酷い後遺症を負っている人も居る。少なくとも、日本とリーゼンブルグとが賠償の完了を確認し、良好な関係を築くまでは、世間に知られない方が良いと思う」

「はい、それは十分分かっているつもりです」

「僕としては、正義のヒーローが改心した悪の女王と結ばれる……みたいな展開は好きなんだけど、世間一般に受けるかは未知数だからね」

「いえ、それ以前に、僕のお嫁さんから怒られちゃいますから」

「はははは、魔物に対しては無敵の存在も、可愛い彼女には頭が上がらないか」

「いえいえ、僕なんてヴォルザードでは、まだまだ小僧っ子ですからね」


 クラウスさんやドノバンさんは勿論、アマンダさんにだって頭は上がりませんよ。


「それと国分君、また魔石を融通してくれないかな?」

「構いませんが、こちらの世界では上手く使えないのでは?」

「それなんだけどね。意外と簡単に問題は解決出来そうなんだよ」


 魔素の無い地球の大気の中では、魔石を利用した魔道具は本来の能力を発揮しません。

 その理由は、本来魔道具の為に使われる魔素が大気中に放出されてしまう事と、現象の発動の為に使われる大気中の魔素が不足しているからだそうです。


 そこで、密閉した空間に魔石を置き、自然崩壊が無くなるまで放置し、その後で魔道具を使ってみると、本来の能力であろう性能を発揮したそうです。


「まだまだ実験段階だけど、火の魔道具によるエネルギー効率は、化石燃料によるものを遥かに上回るみたいでね。エネルギーを取り出すだけならば、密閉した空間で魔法の火を燃やして配管を暖め、蒸気として取り出す事は可能だからね」

「なるほど、魔道具による火力発電みたいな感じですか?」

「そうそう、そういう感じなんだけど、光の魔道具とかも透明なガラスで密閉した状態ならば、おそらくヴォルザードと同じように使えるようになるはずだよ」


 以前、古館先生が興奮気味に話していましたが、地球の科学者にとって魔素は未知のエネルギー源であり、新しい理論の基になるかもしれない存在のようです。


 これによって地球のエネルギー問題とかが解決されるならば、それは喜ばしい事かもしれませんが、逆にヴォルザード側で魔素不足なんて事が発生しては困ります。

 その懸念を伝えると、梶川さんも分かっていると頷きました。


「国分君の懸念は十分に理解出来るし、そうした問題を起こす事は我々としても本意ではない。なので、この先も何トン単位での輸入は行うつもりは無いし、魔素の存在を解明して人工的に再現出来ないかという研究も始められている。それに、現状ではコストが掛かり過ぎるから、魔道具が一般的に使われて魔素が大量消費されるような事は無いよ」

「分かりました、それならば結構です」


 魔石は、用意されていた密閉型の大型トランクに詰め込みましたが、これもまた億単位の金額での買い取りとなりました。

 とは言っても、現金を目の前に積まれる訳でもありませんし、受領書を一枚受け取るだけなので、実感は全くありませんね。


 梶川さんと魔石の受け渡しをしているうちに、ゴブリンの運搬や飼育、研究を担当する人達が、続々と集まってきました。

 ゴブリンの送還実験は、駐屯地の倉庫を使って行います。


 昨日のうちに設備が整えられ、倉庫内部の空気が外部へと漏れないように空調設備が整えられています。

 学校の体育館ほどの広さの倉庫には、動物を入れるための檻が二十ほど用意されていました。


「梶川さん、実験を終えたゴブリンは、あの檻に入れれば良いのですか?」

「そうしてもらえるかな。ところで国分君、ゴブリンって何を食べるのかな?」

「さぁ? たぶん肉食だとは思うのですが……」

『ケント様、ゴブリン共は雑食性なので、何でも食いますぞ』

「僕の眷族の話では、雑食性なので何でも食べるみたいです」

「分かった。じゃあ、そろそろ始めるかい?」

「はい、よろしくお願いします」


 倉庫には何台ものカメラが設置されていて、召喚、送還の実験を梶川さん達はモニター越しに監視するようです。

 とりあえず最初に、ゴブリン一頭を送還、召喚してみるために、目印用のゴーレムは2メートル間隔で四角く設置して、ヴォルザードに戻りました。


 梶川さんとは、準備されていた双方向の無線機を使って連絡を取り合います。

 駐屯地の倉庫の様子も、無線のモニターに送信してもらっています。

 電波の感度を上げるために、魔の森の訓練場にも闇の盾を開いた状態で、ネロに維持してもらいました。


「国分君、聞えてるかい?」

「はい、大丈夫です。良く聞えますよ」

「それでは始めてもらえるかな?」

「では、最初にゴブリン一匹を送還して、その後、一旦こちらへと召喚します」

「了解した。国分君のタイミングで始めて構わないよ」

「分かりました」


 ヴォルザードと日本では、恐ろしく離れていそうなので、目印を認識する事も難しいのかと思っていましたが、闇の盾を近くに開いている影響なのでしょうか、思っていたよりもハッキリと認識できます。


「いきます。送還!」


 送還術を使うと、目の前にいたゴブリンは姿を消し、直後にモニターの中に姿を現しました。

 地面の土も若干ですが、一緒に送ってしまっています。


「おぉ、国分君、成功したよ」


 モニターに映るゴブリンは、突然周囲の風景が変わった事に戸惑っているらしく、キョロキョロと周りを見回し警戒しています。


「じゃあ、一旦ヴォルザードに呼び戻しますね」

「了解、始めてもらって構わないよ」

「はい、召喚!」


 召喚術を発動すると、モニターの中のゴブリンは姿を消し、また目の前へと戻ってきました。


「ギャッ、ギャギャギャ!」

「うん、見た目は問題なさそうですね」

「成功かな? 国分君」

「はい、やはり魔力は結構消費している気がしますが、それでも思ったほどではありません」

「じゃあ、まだ実験を続けるんだね?」

「はい、次は三頭まとめて送ってみます」


 今度は起きているゴブリン一匹と、眠らせたゴブリン二匹をまとめて送還してみます。

 目印の間隔を3メートルに調整し直して、いざ実験再開です。


「じゃあ、梶川さん、始めます」

「いつでも良いよ」

「送還!」


 三匹のゴブリンは一瞬で姿を消して、駐屯地の倉庫へと移動しました。

 送還する範囲が広がったからか、一匹だけを送った時よりも魔力を消費した感じがします。

 念のために、魔力の回復を補助する薬を飲んでおきました。


「国分君、成功したみたいだね」

「はい、そっちに行った三匹は、檻に放り込ませれば良いですか?」

「そうしてもらえると助かるよ」

「ザーエ、お願い出来るかな?」

「おやすい御用ですぞ、王よ」


 駐屯地の倉庫へと移動したザーエ達が、縛っていた縄を解き、ゴブリンを檻へと放り込みました。

 一匹だけ目を覚ましているゴブリンは、狭い空間へと閉じ込められた事で、警戒して周囲を窺っていますが、暴れる様子は見られません。


 ザーエ達に、戻って来る前に目印用のゴーレムの間隔を更に広げておいてもらいました。


「梶川さん、次は八匹を一度に送ります。魔力の残りを考えると、今日の送還実験はこれで終わりです」

「分かった、でも無理ならば後日でも良いよ」

「はい、あと一回は大丈夫です。では行きます、送還!」


 目を覚ましているゴブリン一匹と、眠った状態のゴブリン七匹は、無事に駐屯地の倉庫へと移動しましたが、やはり送る範囲が広くなると魔力の消費も大きくなります。


『大丈夫ですかな、ケント様』

「うん、倒れるほどではないけど、結構キツイね」

「国分君、大丈夫かい? 実験は成功したみたいだよ」

「はい、これで同級生達の帰還も加速させられます。そちらの受け入れ体制次第ですけど、早速明日から集団帰還を始めようと思うのですが、どうでしょう?」

「勿論、構わないけど、国分君、無理は禁物だからね。君が倒れてしまっては元も子もないからさ」

「はい、それは分かっています。では、うちの眷族を片付けに向かわせますね」

「了解、国分君は、ゆっくりと休んで」

「はい、ありがとうございます」


 ザーエ達に、無線機やモニターの返却、目印用のゴーレムの回収、ゴブリン達の檻への移動を頼みました。

 一度に大量の魔力を消費したので、圧し掛かるような倦怠感を感じています。


『大丈夫ですか、ケント様』

「うん、ちょっと疲れたけど何とかね」

『傍から見ていただけですが、一日に五人ほどを二回送る程度に留められておいた方が良いように感じましたな』

「無理をすれば、その倍ぐらいの送還は出来そうだけど、そうなると倒れそうだからね」

『魔力をギリギリまで消費した状態で、ヴォルザードに危難が生じた場合、対応しきれなくなる恐れがございますぞ』

「そうだね。常に動ける程度の魔力は残しておかないと駄目だね」

『それに、明日の晩にはアンデッドを使った襲撃が予想されております。そちらに対応する余力を残しておかねばなりませんぞ』

「アーブルが雇っている闇属性魔術士か、どんな奴なのかだね」


 今のところは、建物や穀物への被害に止まっていますが、人を襲うようになったら拙いので、捕らえた方が良さそうです。

 ただ、捕まえたとしても、牢屋に閉じ込めておくとかは難しい気がします。


「ねぇ、ラインハルト。その闇属性魔術士は、どうやったら捕らえたままにしておけるかな?」

『鎖などを使って拘束し、厳重な監視下に置くしかないでしょうな』

「そうか、影移動で牢から抜け出せたとしても、手枷や足枷は外せないか」

『それに、普通の術士であれば、影移動をするにしても詠唱が必要です。口にも枷を嵌めておけば抵抗は出来ないでしょうな』

「うん、その辺りは、実際に捕らえてみてからだね」


 魔の森で少し休憩した後、守備隊の臨時宿舎に向かいました。

 今日の実験結果を報告して、帰還させる人を選んでもらうためです。

 一日に十人の帰還が可能ならば、二十日ほどで全員の帰還が可能です。


「そうか、でかしたぞ国分!」

「加藤先生、帰還させる順番とか人選をお願いしても構いませんか?」

「勿論だ、一日に十人だな。任せておけ、早速取り掛かる」

「これまでは女子優先でしたので、男子の中で精神的に参っている人とかを優先させてもらえますかね」

「うむ、そうだな。実際、渡瀬と藤井は厳しい状態だからな」


 渡瀬は、『リアル魔物狩り』なるネット中継を一緒にやっていた田山が、オークの投石を頭に食らって死亡する様を目の前で目撃して以来、部屋に引きこもったままだそうです。


 藤井もグリフォンを撮影しようとした三田が、目の前で攫われていくのを見て以来、塞ぎこんだままだそうです。


「確かに、あの二人は早めに日本に戻した方が良さそうですね。それと余計な事かもしれませんが、中川先生も帰還させた方が良くないですか?」

「確かに国分が言う通り、中川先生は精神的に参っているが、我々教師が生徒を差し置いて日本に戻るとなると、また批判の標的になりかねないからな」

「そうかもしれませんが、中川先生を残しておく方が悪影響が大きい気がします」

「あと二十日ほどで日本に戻れると分かれば、中川先生も落ち着くとは思うが……少し考えさせてくれ」

「はい、どっちにしても、帰還作業を行うのは、明日の昼過ぎですから、それまでに人選をしておいていただければ結構です」

「分かった、それは任せてくれ」


 加藤先生との打ち合わせを終えた後、唯香の部屋を訊ねました。


「唯香、入ってもいい?」

「どうぞ、いらっしゃい健人」


 唯香は眺めていたスマホを置くと、両手を広げて迎えてくれました。


「どうだった、うちの家族は?」

「頼り甲斐のあるお父さん、優しくてシッカリ者のお母さん、賑やかな妹さん、良い家族だね」

「そうでしょ。健人も家族になる……許可まではもらえなかったみたいだけど、パパもママも、健人は凄い頑張ってるって感心してたよ」

「僕の味方になってくれるって言ってもらえて、もの凄くホッとしたよ」

「美緒が、号泣してたって言ってたけど……」

「うっ、そこは触れないでもらえるかな……」


 唯香に見られないですんだけど、情報は伝わっちゃうよね。


「うふふふ、美緒は早くヴォルザードに来たくて仕方ないみたい」

「あぁ、マルト達は日本の空気が好きじゃないから、あんまり出たがらないんだよね」

「そうそう、大きなモフモフと遊ぶんだって凄い楽しみしてたけど、ネロを見たら腰抜かしちゃうかもね」

「メイサちゃんと同い年ぐらいでしょ? 丁度いい遊び相手も居るから楽しめるんじゃないかな」

「そうだね。マノンの弟のハミル君も忘れちゃ駄目よ」


 そうでした、唯香に言われるまで、すっかり存在を忘れてました。


「ハミルには僕とリーチェの熱々振りをシッカリと見せ付けて……」

「健人……そうじゃないでしょ。まったく、女の子には優しいのに、ホント男の子相手だと意地悪だよね」

「そ、そんな事……ちょっとだけだよ」

「まぁいいわ、今回は美緒にハミル君と仲良くするように言っておくから」

「ふぅむ……」

「どうしたの? 何か拙い事でもあるの?」

「いや、ハミルの場合、メイサちゃん一人でもやり込められちゃってるからさ、そこに美緒ちゃんも加わると……」

「あぁ、そっか……でも、可愛い女の子と仲良くなれるんだから、役得だと思うしかないんじゃない?」

「まぁね、それもまた人生経験だよね」


 唯香にも、帰還の実験が上手くいった事や、ゴブリンを売り渡した事で賠償金を補填した事を伝えました。


「健人、その送還術を使うと魔術属性はどうなるの?」

「まだゴブリンしか送っていないから分からないけど、魔術属性はそのままで送るようにイメージはしてるから、明日帰還させた人に属性が残っているか試してもらうよ」

「魔術属性がそのままならば、私も日本に戻れる……どうかしたの?」

「うん、星属性の召喚術が、魔法陣を使った召喚術の上位互換だとしたら、属性の付与とか言語の知識の付与とかも可能なのかと思ってね」

「ねぇ健人、うちの家族を招待する時に、言語の知識を付与出来るか試してみたら?」

「なるほど、召喚術を使えば、指先を切る必要も無いしね」

「別に、パパとならキスしても構わないわよ」

「えぇぇ。それはちょっと……」

「うん、私も自分で言っておいて、ちょっとキモって思っちゃった」

「ゆーいーかー……」


 ジト目を向けると、唯香はペロって下を出した後で、僕の右腕に抱きついて来ました。


「健人、早くパパとママが許してくれると良いね」

「う、うん……」


 もう、張り切って帰還も賠償も進めて、認めてもらっちゃうしかないですよね。

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