第168話 討伐

 良く覚えていないのですが、ラストックでベロベロに酔っぱらって下宿に戻った後、寝入ったばかりのメイサちゃんが起きるほどチョッカイを出したようで、朝食の席でアマンダさんからお説教を食らいました。


「ケント、あんたが同じ年頃の子では考えられないぐらい偉い大人との付き合いがあるのは分かってるよ。でもね、酔っぱらった挙句に、人に迷惑を掛けるような悪い酒を飲むんじゃないよ。やってる事が、三十過ぎのオッサンみたいだよ」

「すみませんでした。反省してます」

「だそうだけど、どうするんだい、メイサ」

「しょうがないなぁ……今回だけは許してあげるけど、今度やったら部屋から叩き出すからね」

「はい、申し訳ございませんでした。てか、メイサちゃん、あそこは僕の部屋だけど……」

「そ、そんなの分かってる。この家は、うちの物なんだから、ケントが使ってる部屋だって、うちの物でしょ! ニヤニヤしない!」

「はい、その通りです。ごめんなさい」


 プンスコ怒ってるメイサちゃんって、毛を逆立ててる子猫みたいで、ちょっと可愛いんですよね。

 怒られてるのにニマニマしそうになっちゃうんですよねぇ。


「まったく……ケントのくせに生意気なんだから……」

「えっと、それで僕は、何をやらかしたんでしょうか?」

「うっそ! 覚えてないの?」

「ラストックで飲み終えて、椅子から立ち上がったら足元がグニャグニャになって、それから……妙に楽しかったような気がするんだけど……」

「お酒の匂いをプンプンさせながら抱き付いて来て、頭をグリグリ撫で回すし、頬っぺたムニムニするし……チュ、チューまでしてきたんだからね」

「えぇぇ……うっそぉぉ……ホントにそんな事したの?」


 頭グリグリと頬っぺたムニムニの記憶は、薄っすらとですがあるのですが、チューなんてしたかなぁ……


「あたしが嘘ついてるって言うの?」

「いえ、そんな事は……その、ご迷惑をお掛けしました」

「あぁ、やっぱりメイサも嫁に貰ってもらわないといけないのかねぇ……」

「えぇぇ……それは……」

「ちょ、お母さん、ケントなんかと結婚したら大変だって、いっつも言ってるのに!」

「えぇぇ……僕、そんな風に言われてるんですか?」

「あははは、そりゃそうさ、あんなに可愛らしくて良く出来たお嫁さんが三人も居るのに、メイサなんかじゃ太刀打ち出来ないだろう」

「なるほど、それはそうです……」

「納得しないの! きぃぃぃぃ、あたしだって、あと五年もしたらボインボインの美人になっちゃうんだからね。ケントなんかじゃ釣り合わなくなっちゃうんだからねぇ!」

「アマンダさん、だそうですので、お店は安泰みたいですよ」

「そうだねぇ、別にボインボインにも美人にもならなくて良いから、もうちょっと算術が出来るようになるのと、おねしょしなくなれば、それで十分だよ」

「あぁ、そっちの方が難しいかもしれませんね」

「きぃぃぃぃ、おねしょなんかしないもん! 算術は……嫌いぃぃぃ!」


 アマンダさんと一緒に大笑いしちゃいました。

 ちょっと騒がしいけと、暖かくて楽しい一時を過ごしたら、この幸せを守るために頑張らないといけませんね。


「ケント、今日もグリフォンと戦うのかい?」

「はい、今日こそはキッチリ止めを刺してやりますよ」

「ケント……大丈夫?」

「大丈夫だって、負けたとしても無事に帰ってくるからさ」


 心配そうなメイサちゃんの頭を撫でると、猫みたいに目を細めながら、ギュって抱き付いてきました。


「無事に帰って来ないと、一緒に寝てあげないんだからね」

「はいはい、僕の事が大好きなメイサちゃんを悲しませないように、無事に帰ってきますよ」

「ち、違うもん。ケントが怪我すると、モフモフも怪我しそうだから……」

「はいはい、じゃあ、行ってきますね」

「あいよ、頑張っておいで、終わったら報告に戻っておいで」

「ケント……早く帰ってきてね」

「はい、いってきます!」


 アマンダさんとメイサちゃんに見送られながら、闇の盾を潜って魔の森の訓練場へと向かいました。

 本当は、昨晩のうちにやるはずだったグリフォン対策を済ませるためです。


 まずは、昨日ザーエ達が使ってしまった投槍を補充します。

 これまでに二十五本ほど作ったので、作業的には慣れたものなのですが、今回は少し形を変更します。

 槍の先端に、十字の切れ込みを入れてみました。


『ケント様、その切れ込みは何の為ですかな?』

「これは、命中した時に切れ込みに沿って先端が破裂して、敵に大きなダメージを与えるためだよ」

『ほほう、あえて弱い部分を作り、先端をわざと壊すのですな』

「うん、ザーエ達の投擲能力だったら、この方が威力が増すと思うんだ」


 いわゆるダムダム弾の原理ですが、これまでの槍でもザーエ達の力が勝って、同様の効果が起こっていたのですが、意図的に作用させる事で更に威力を増そうと考えたのです。


 実際にザーエに試してもらったら、命中した木の幹は大きく抉れました。

 このダムダム弾構造の投げ槍を3セット15本用意し、それでも仕留め切れなかった場合は、残っている2セット10本も投入します。


 ザーエ達の投槍の補充が終わったら、眷族のみんなと作戦の手順を確認してから城門に移動しました。

 城門には、既に守備隊の隊員やギルドに招集された冒険者達の姿がありました。

 二つの組織をまとめるマリアンヌさんとドノバンさんの姿もあります。


「おはようございます。ドノバンさん、マリアンヌさん」

「ケントか、来たな……」

「おはようございます、ケントさん、今日はよろしくお願いいたしますね」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」


 守備隊の制服姿のマリアンヌさんは、ピンと立ったウサ耳と相まって、一見するとコスプレかと思ってしまいます。

 ですが一度戦場に出れば、強力な火属性の魔法で敵を焼き尽くす歴戦の強者であり、守備隊の総隊長でもあるのです。


「今日は、マリアンヌさんも攻撃に加わるのですか?」

「ケントさん、違うでしょ……」

「えっ、攻撃には……あぁ、すみません。お義母さんも攻撃に加わるのですか?」

「ええそうよ。相手がグリフォンですから、守備隊の全火力を集中するつもりよ」

「ケント、お前の方で囮を用意すると聞いているが、もう一度手順を教えてくれ」

「はい、うちのコボルトが、囮役として魔の森から城門の方向へ移動する予定です」


 マリアンヌさん、ドノバンさんと作戦の手順を確認しました。

 グリフォンが姿を現したら、アルトとイルトが囮役として森の端から城門に向かって小走りで移動します。


 グリフォンが襲い掛って来たら闇の盾を使って視界を塞ぎ、巨岩に衝突させる作戦を実行します。

 上手く衝突してくれれば、その後の手順も想定通りに進められるでしょうが、計画が狂った場合には、その後の展開は臨機応変に進めるしかありません。


 もし避けられてしまったとしても、速度は落ちるはずなので、更に闇の盾で進路を邪魔しながら隷属のボーラを使うタイミングを計ります。


 最悪、隷属のボーラを使えなかった場合には、今日も追い返す事に徹します。

 勿論、討伐出来るのが一番ですが、とにかく犠牲者を出さない事を優先しました。


「それじゃあ、俺達の攻撃は、お前の眷属の攻撃が通ってダメージが入った直後って事で良いな」

「はい、とにかくグリフォンが纏っている風属性の魔法をどうにかしないと、いくら攻撃しても効果が薄いので、討伐まで持ち込めないと思っています」

「確かに、その通りだな。その隷属のボーラって奴は、上手く働くのか?」

「人間では問題なく働いていますが、グリフォンでもちゃんと働くかは、正直やってみないと分からないですね」

「そうか、まぁ駄目だったら駄目だった時で考えるしかないな」

「じゃあ、そろそろ僕は持ち場に移動しますね」


 影に潜る前に攻撃陣の体勢を確認してみると、守備隊は長弓の他に弩弓も五張準備していますし、術士も百人ほど配置していました。


 ギルド側も魔力の強い冒険者と弓使いを揃え、その中にはフレイムハウンドの三人の顔もあります。

 そして、鷹山の姿もあるではないですか。


「えっ、鷹山はEランクだから招集されてないよね?」

「俺は、押し掛けで参加させてもらってる。防御が整った場所からなら俺でも役に立つし、何よりも自分が暮らす街を自分の手で守りたいからな」

「ふーん……この作戦が終わったら……とか言わないようにね」

「馬鹿、変なフラグ立てようとするなよな。俺は、これからヴォルザードで……」

「言ってるそばからフラグ立ててどうすんだよ!」

「あっ……だな」


 鷹山と一しきり笑ってから影の空間に潜りました。

 朝は良く晴れ渡っていましたが、グリフォンが狩りに現れる時間が近付くほどに雲が出始めました。


 最初は薄い雲だけでしたが、時間が経つほどに厚みを増し、太陽さえも遮るほどになって来ました。

 それでも雨が落ちるほどではなく、雲が切れれば日が差し込んで来ます。

 厚い雲はグリフォンの姿を隠してしまうので、あまり良い条件ではありません。


『ケント様、不意を突かれても良いように、準備なさって下され』

「分かった。雲に隠れて接近する事も考えておくよ」

『皆にも油断無きように伝えておきますぞ』

「囮役のアルトとイルトは、もう外に出しておいて」

『了解ですぞ』


 囮役のアルトとイルトは、それぞれ赤と黄色の目立つ布を羽織っています。

 その姿で、まるで草詰みでもするような様子で、森から城門へとチョコチョコと移動してきます。


 本物の人と勘違いした冒険者が騒ぎ出し、ドノバンさんに一喝されて静まった時でした。


 うぉん! うぉんうぉんうぉん! うぉんうぉん!


 コボルト隊の咆え声に空を見上げると、グリフォンが雲を突っ切って、アルト達を目指して降下して来るのが見えました。


「作戦開始!」


 大声で叫びながら間隔を広めにした五層の闇の盾を展開します。

 一番下の盾は、地面から10メートルも離れていません。


 その盾から、地面目掛けて巨石が落下を始めます。

 アルトとイルトは、素早く影に潜って姿を隠しました。


 巨大な岩が姿を現し、城壁に集まった者達から、どよめきが上がると同時に、グリフォンが一枚目の盾を突き破りました。

 グリフォンが全くスピードを緩める気配すら見せず、二枚目、三枚目、四枚目の盾を突き破った時に巨石が落下し、凄まじい地響きが起こりました。


 五枚目の盾を突き破ったグリフォンと巨石の距離は5メートルも無かったはずです。

 上手くいったとガッツポーズをしかけた瞬間、グリフォンは翼を一杯に開きました。


 ギャァァァゥゥゥゥ!


 翼から強烈な突風が吹き荒れ、まるでロケットを逆噴射したようにグリフォンは急減速しましたが、さすがに速度を落としきれず突っ張った四肢で蹴り付けるようにして巨石と激突しました。


「よし! やった……えぇぇ……」


 グリフォンは、風属性の魔法を纏った四肢で岩を踏み砕きながら殆どダメージも受けずに着地すると、再び翼を開いて空を目指そうとします。


「させないよ!」


 素早くグリフォンの前に闇の盾を展開し、行く手を阻みましたが、グリフォンは意にも介さず大きく羽ばたき、勢い良く盾に向かって突進して来ました。

 グリフォンにしてみれば、闇の盾の一枚程度、簡単に破れると思ったのでしょう。


「ここは、通さないにゃ!」


 闇の盾を突き破ろうとしたグリフォンの顔面に、飛び出して来たネロの猫パンチがカウンターで炸裂。

 首を捻じ曲げられたグリフォンは、大きくバランスを崩して地に落ちました。


「今だよ!」


 倒れたグリフォンの周囲に三枚の闇の盾を展開、盾からはラインハルト、バステン、フレッドが準備していた隷属のボーラが射出されます。

 暴れた翼に弾かれて一本は外れてしまいましたが、残りの二本は首と後肢にガッチリと巻き付きました。


「投槍!」


 今度は、グリフォンの周囲に五枚の闇の盾を展開、影の空間で準備していたザーエ達が至近距離から特製の槍を投げ付けました。


 ギャァァァゥゥゥゥ!


 苦悶の声を上げたグリフォンからは、羽毛だけでなく肉片と血飛沫が飛び散りました。

 どうやら隷属のボーラが威力を発揮してくれているようで、投槍がダイレクトに命中しているようです。


「二投目!」


 位置を変えて、もう一度五枚の闇の盾を展開すると、ザーエ達の二投目が射出されました。


 ガァエェェェェェ!


 苦悶の叫びと共に再び大量の羽毛と血飛沫が宙に舞い、グリフォンはビクビクと痙攣しています。


「フレッド、翼を落として!」

「任せて……」


 闇の盾から飛び出したフレッドは、すり抜けるようにして漆黒の双剣を振るい、グリフォンの翼を斬り落しました。


「野郎共、やっちまえ!」


 ドノバンさんの怒号が響き渡ると、城壁からグリフォン目掛けて一斉攻撃が始まりました。

 風属性との混合で威力を増した火属性の攻撃魔法が襲い掛かり、放たれた矢が雨のように降り注ぎます。


 守備隊と冒険者の攻撃を妨げないように、ザーエ達には城壁の下に展開した闇の盾から残りの投槍を全部叩き込ませました。


 風属性の魔法を纏っていた時は、強固な鎧を身に付けているようなものでしたが、生身の身体となり、翼すら斬り落とされたグリフォンは、少し身体が大きいだけの魔物に成り下がっていて、集中攻撃に抗う術は残されていませんでした。


 ギイィィィィ……ギィィ……ギィ……


 火達磨になりながらも、足掻いていたグリフォンでしたが、次第に動きを止め、ビクビクと痙攣するだけになり、やがて、それも止まりました。

 これでも攻撃の手は止まらず、水属性の攻撃魔法が降り注ぎ、吹き上がる盛大な水蒸気の中で、グリフォンは形すら崩れているように見えます。


「攻撃止め!」


 ドノバンさん声で攻撃が止むと、辺りは静寂に包まれました。

 肝心のグリフォンは、漂う湯気に邪魔されて姿が確認出来ません。

 一旦静まった空気に、ざわめきが混じり始めます。


「おい、どうなったんだ」

「やったか?」

「馬鹿、余計な事言ってんじゃねぇよ」

「動いてねぇよな」

「あれで倒せなかったら、どうやって倒せってんだよ」


 ざわめきが高まりだした時、少し強い西風が吹き、漂っていた湯気を吹き流しました。

 湯気の向こうから姿を見せたのは、剣山のごとく槍が突き刺さった、黒こげの肉の塊です。


 羽毛も全て焼け落ち、くちばしと鋭い爪の生えた足が、僅かにグリフォンの面影を残しているだけです。


『ケント様、今のうちに眷族になさってはいかがです?』

「それが、無理みたいなんだよね」

『数の制限という奴ですか?』

「いや、違うと思う。闇属性の魔法を使って呼びかけても反応が返って来ないんだ」

『ほほう、やはり肉体の損傷が酷過ぎるのでしょうかな』

「それか……魔石が砕けてしまってるのかも」


 これまで眷族にしてきた皆は、損傷の程度は軽かったですし、何よりも魔石には傷の無い状態でした。

 そして、魔力的なパスは、魔石と繋がっているように感じます。


 パスを繋がなくても死体を動かす事は出来そうですが、それは眷属のみんなのように意思を持った動きではなく、操り人形のようにただ動かす状態になってしまう気がします。


『眷族に加えられれば、大きな戦力になると思ったのですが、残念ですな』

「まぁ、今の眷族を更に強化すれば大丈夫だと思うよ」

『ですが、空を飛ぶ能力の有無は、大きな違いになりましたぞ』

「うん、それなんだけど、ただ眷族にしただけじゃ飛べなかったような気がするんだ」

『ほほう、それはどうしてですか?』

「グリフォンは、羽で飛んでる訳じゃなくて、風属性の魔法を纏って飛んでるんだよね」

『なるほど、闇属性だけの眷族では、空を飛べなかったかもしれませんな』

「風属性を付与出来るなら、ネロでも空は飛べそうな気がするんだよね」

『そのためには、ケント様が風属性を手に入れる必要がありますな』

「そうだね。そろそろ次の人を帰還させないと。同級生たちの不満が爆発しそうだしね」


 闇の盾を出して、マリアンヌさんとドノバンさんの所へ出ました。


「お疲れ様でした、どうやら倒せたみたいですね」

「ケントさん、良くやって下さいました。今回もお手柄でしたわ」

「うむ、これで一安心だと思うが、念のために確認させよう」


 ドノバンさんの指示で弓兵が矢を撃ち込んでも、グリフォンだった肉塊が何の反応も示さないのを確認すると、城壁から大歓声が起こりました。

 同時に、カーン、カーンと警戒解除を知らせる鐘が高らかに打ち鳴らされました。


「勝ったぞぉぉぉ!」

「ざまぁみろ、グリフォンの野郎ただの肉の塊だぜ」

「俺様の魔法のおかげだな」

「その他大勢の一人が、馬鹿言ってんじゃねぇよ」

「そうだ、俺様が撃った弩弓のおかげだろう」

「馬鹿、あんなヘナチョコよりも、魔物使いの投槍だ。何だよあれ、凶悪すぎんだろ」

「槍もそうだけど、あの岩……なんだよあれ、反則だろう……」

「この前のオーク極大発生の時も、空から岩を降らせてたよな?」

「ストームキャットも操ってるんだろう? ヤバ過ぎだろう……」


 歓声が次第にざわめきに変わっていって、周囲の視線が僕へと集まってきました。

 何だか、とっても居心地が悪いんですけど……


「えっと、それじゃあ僕は、クラウスさんに報告に行ってきますね」

「ふふっ、ケント、Sランクの冒険者が畏怖の視線で見られるのは、当たり前のことだぞ。堂々としてろ、堂々と」

「そうですよ、ケントさんはヴォルザードを守った英雄なんですからね」

「はぁ、何だかピンと来ないんですけど、そういうものなんでしょうね」


 どうして良いのか分からなくなって、周囲の視線にペコペコと頭を下げてから、クラウスさんの執務室に移動しました。


 クラウスさんは机の前に腕組みして座り、ベアトリーチェはカーテンを開け放った窓辺で外を見詰めています。

 闇の盾を出して、直接執務室へと足を踏み入れました。


「クラウスさん、仕留めましたよ。勝ちました!」

「よし! 良くやってくれた!」

「おかえりなさい、ケント様」


 駆け寄って来たベアトリーチェをギューっと抱き締めましたが、今日ばかりはクラウスさんも笑顔のままですね。

 討伐までの経過を、ざっとですが報告しました。


「それで、グリフォンはお前の眷属に加えたのか?」

「いえ、それなんですが……」


 眷属化が上手くいかなかった経緯を話すと、クラウスさんも少し残念そうでしたが納得してくれました。


「まぁ、四人も犠牲者を出している魔物だからな、お前の眷属にしても街の連中からは反発されたかもしれねぇし、これはこれで良かったのかもしれないな」

「はい、とりあえず、風属性の魔法を手に入れて、アンデッド・ストームキャットのネロに付与が出来ないか試してみる予定です」

「それが出来れば、空を飛べるって訳だな?」

「飛べるというよりも、駆けるって感じになるかと思いますが、上手くいくかどうか……ですね」

「何はともあれ、良くぞグリフォンを仕留めてくれた。改めて礼を言うぜ。ケント、お前がヴォルザードに来てくれて、本当に良かったぜ」

「はい、僕もヴォルザードに来られて本当に良かったと思ってます」


 クラウスさんと握手を交わした後で、委員長やマノンにも無事を知らせに行きましょう。

 ヴォルザードの街には人が溢れ、お祭り騒ぎが始まっているようです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る