第118話 支援物資

 訓練場の掃除を終えた後、ドノバンさんからギルドカードを渡されて、正式にSランクに昇格しましたが、特別に変わった事はありませんね。


「なんだ、盛大な式典でもやってもらいたかったのか?」

「いえいえ、目立たない方が良いですから、これで十分です……て言うか、Aランクのままでも構わないんですけどね」

「まったく、Sランクは全ての冒険者の憧れでもあるんだぞ。ちょっとはシャキっとしろ」

「そう言われましても、僕が偉そうにしていても格好付きませんよね」

「ふん、それもそうだな……」


 昇格祝いという訳ではないのでしょうが、お茶を一杯ご馳走になった後、捜査本部へと顔を出す事にしました。

 森田さんが居たら、お花代のお礼も言っておきたいと思ったのです。


 その捜査本部には、縮小に伴って机や椅子が片付けられて出来たスペースに、ダンボールなどの荷物が山積みになっています。


 ちょっと見回してみましたが、どうやら森田さんの姿は無いようで、もしかしたら代休を取っているのかもしれません。

 捜査員の皆さんから離れた場所から表に出て、須藤さんに声を掛けました。


「こんにちは、須藤さん。ずいぶん沢山荷物が置いてありますけど……」

「あぁ、国分君、これかい? これは政府からの支援物資だよ」


 僕の姿を見つけた内閣官房室の梶川さんが、にこやかな表情で歩み寄ってきました。


「やぁ、国分君、この前は魔道具と魔石をありがとう」

「こんにちは、梶川さん。本来の性能は発揮出来なくて申し訳ないです」

「いやいや、とんでもない! 研究者達は大興奮だよ」

「そうなんですか? でも、魔素が無い地球では、あまり意味が無いような気がしますけど」

「いや、そんな事はないんだよ。魔法というのは、既存の技術体系とは全く別のものだからね。たとえ魔素が無いとしても、代用出来る物質を作り出せれば、とんでもない技術革新が生まれる可能性だってあるからね」

「なるほど……僕には良く分からないですけど、お役に立てたなら何よりです」

「それで、魔道具のお礼という訳じゃないけど、うちの方で準備したんだけど……運べるかな?」

「運ぶのは問題ありませんが、何ですか、これ?」


 ダンボールの山を見て、即座に納得してしまいました。


「醤油、味噌、マヨネーズ、海苔……勿論お米も用意してあるよ。それと、インスタントラーメンに、カレールーだ!」

「おぉぉぉ! これは、みんな絶対喜びますよ」

「肉は、むこうにもあるよね? ジャガイモとか玉ねぎとか人参はどうかな?」

「はい、同じような野菜はありますので大丈夫です」

「うん、野菜とかは、下手に持ち込むと生態系に影響を及ぼすかもしれないから……と言っても、君たちが食べる程度の量では高が知れているだろうけど、なるべく悪影響は及ぼしたくないからね」


 二百人分とあって、支援物資の量もかなりの量になっています。

 お米が1トン、醤油や味噌などもダンボールでドッサリと置いてあります。


「それで……国分君、出来たら魔石をもう少し融通してくれないかな?」

「魔石は、魔素の塊だって言われてますし、地球への影響は大丈夫ですかね?」

「うーん……それを言われると辛い所なんだけどね。正直に言って、全く影響が無いとは言い切れないけど、あちらの世界の人々が大丈夫だから、まぁ大丈夫だろう……という感じかなぁ……」


 梶川さんとしても、少々苦しい言い訳という感じですが、これだけ物資を貰ってしまっては出さない訳にもいきませんよね。


「分かりました。とりあえず百個ほど置いていきますので、環境への影響とかも調べてもらえますか?」

「それは勿論、今も行っているところだよ」

「それと、此方に魔石を持ち込むってことは、向こうの魔素が減少するって事になりそうなので、あまり多くは持ち出さない方が良いのかと思ったのですが……」

「うーん……そうだね。あちらは魔術に依存している社会だし、そこで魔術が使えなくなると拙いよね。そう言えば、あちらの領主さんから科学技術とかに関するよう要望とかは聞いていないの?」

「はい、今の所は……無いと言った方が良いのかなぁ……」


 少し考えた後で、あちらの世界で火薬のような物が開発されたらしいという話を伝えました。


「うーん……なるほど、火薬が開発されたとなると、急速に兵器が進化してもおかしくないね。まぁ、それでも数十年単位は必要だし、現代兵器にまで進歩するには更に長い時間が必要だろうけど、あちらには魔術という技術があるから地球とは違った形、違った速度で進化する可能性もあるね」

「やっぱり日本から僕が兵器を持ち出すというのは……無理ですよね?」

「そうだね。それは難しいね。君たちの身体生命に危険が及ぶような状況が継続し、どうしても現代兵器の使用が必要……となっても難しいと思う」

「狩猟に使う散弾銃とかでも無理ですか?」

「うーん……銃器に関しては、それこそ弾の数まで厳しい管理が義務付けられているから、法律に抵触しない形では難しいね」

「そうですよねぇ……でも、こちらから持ち込んで、急激に兵器が進化するような事は避けた方が良いですかね」

「そうだね。必要な状況となったら、技術情報として伝える程度に留めておいた方が良いような気がするね」


 日本に戻って来られるようになって以来、ずっと気にしていた事を梶川さんに相談してみる事にしました。


「あの……蒸気機関とか内燃機関とかに関する情報とかは伝えた方が良いんですかね?」

「生活水準を引き上げるには役に立つと思うよ」

「でも、化石燃料を使うって、環境には良くないですよね」

「そうだね。その点、魔法は再生可能エネルギーという感じだし、環境には優しい技術と言えそうだね。まぁ、それだけに研究者達が大騒ぎになっているんだけどね」

「蒸気機関が使われるようになって、森林の伐採とか大気汚染が急速に進んだって習った覚えがあるんですけど……持ち込まない方が良いですかね?」

「うーん……そこは微妙だねぇ。蒸気機関の場合、蒸気を作るための火が必要だけど、そこを魔法で補うならば、環境への影響は最小限に留まるんじゃない?」

「そうか……でも、内燃機関は駄目ですよね?」

「そうだね。内燃機関については、化石燃料を爆発的に燃焼させる事でエネルギーを取り出しているから、魔法による代用というの難しそうだし、地球にあるような環境技術も伝えなけば確実に大気汚染を引き起こすだろうね」


 地球には、日本にはヴォルザードには無い便利な技術がたくさんあります。

 でも、それを考え無しに持ち込む事は、悪影響も持ち込む事になり、必ずしもヴォルザードのためにならないと思っています。


 ヴォルザードは、水は魔道具で賄えますし、下水も魔道具で浄化しています。

 冷蔵庫の役割を果たす魔道具もありますし、明かりの魔道具もありますし、ネットや携帯は無いけど、あまり不自由だと感じていないんですよね


 日本の技術を持ち込んで、急速な発展をすると、かえって世の中に歪みが生じてしまうような気がします。


「まぁ、その辺りの事は、領主様と良く相談して決めた方が良いよ」

「そうですね。戻ってから一度じっくり話をしてみます」


 今日は持ち出す物資の量が多いので、ザーエ達にも運ぶのを手伝ってもらいました。


 こちらの世界は魔素が無いからか、気持ち悪いとマルト達が言っていたので、物資のすぐ近くに闇の盾を出しました。

 それでも捜査本部に居合わせた人達は、ザーエ達の姿を見てどよめいています。


「国分君、あれは……」

「僕の眷属のアンデッド・リザードマンです。勿論、心配はいりませんよ」


 人力で運んだら結構な時間が掛かっていたと思いますが、ザーエ達はあっと言う間に片付けてしまいました。


「終わりましたぞ、王よ」

「みんな、ありがとうね」

「お安い御用です、王よ」


 作業を終えたザーエ達は、横一列に整列すると騎士の敬礼を披露してから影の世界へと戻って行きました。

 その姿に居合せた人達から感嘆の声が上がっていた時、ヌっとネロが顔を出したものだから、一斉に驚きの声が上がりました。


「にゃ、ご主人様、ここはどこにゃ? にゃんだか変な感じのするとこにゃ」

「こっちの世界は、ネロ達には住み難い場所だから、大人しく待っていて」

「分かったにゃ、影の中の方が快適にゃ」


 ネロが首を引っ込めて、闇の盾を消すと、捜査本部のあちこちから安堵の声が洩れました。


「異世界ヤバいな……一瞬アニメの世界に迷い込んだかと思ったよ」

「あんなのピストルぐらいじゃ倒せないだろうな……」

「ちょっと行ってみたいと思っていたけど、考え直した方がいいな」


 僕の横に居た梶川さんの頬にも、冷や汗が流れていました。


「国分君、さっきのデカい猫も君の眷属なの?」

「はい、最近加わったアンデッド・ストームキャットです」

「ヴォルザードって、あんなのが、ウロウロしている場所なの?」

「いえいえ、ストームキャットは天災級の魔物なので、滅多に現れませんよ」

「そんな魔物を眷属にしちゃってるわけ?」

「ま、まぁ……成り行きですね」


 須藤さんから、今日の分の手紙も預かったので、物資と一緒に守備隊の宿舎へ置きに行きました。

 ヴォルザードも夕暮れ時を迎えていて、仕事から帰る人も目立ち始める時間になっています。


 同級生達が暮らす守備隊の臨時宿舎を訪れてみると、何やら険悪な空気が流れていました。


「日本からの支援を打ち切られてたらどうする? 国分が日本に行けなくなったら支援なんか届かないぞ。そもそも、この宿舎だって国分が居るから借りられているようなものだ。もし国分が居なくなったら、我々に価値が無かったら追い出される可能性だって無くはないんだぞ」


 声を荒げているのは保健体育の加藤先生で、怒られている面子の中に八木の姿がある事からして、仕事に行かなかった面々なのでしょう。


「いきなり大人に混じって働くなんて無理ですよ」

「日本からの支援が無くても、リーゼンブルグから賠償金を引き出せば良いんじゃないですか?」

「そうだよ、あんな酷い目に遭わせやがったんだから、金払えって言ってやれば良いんですよ」


 口々に不満を洩らす同級生に対して、加藤先生は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて口を開きました。


「だったら、お前らでやってみせろ。リーゼンブルグから、自分達で賠償金を引き出してみせろ」

「そんなの……出来る訳ないじゃないですか」

「なんで出来ない」

「リーゼンブルグに行くには魔の森があるし……国分でもなきゃ一人じゃ行けませんよ」

「そうそう、国分でもなきゃ俺達が行ったとしても勝てる相手じゃないし……」

「と言うか、俺達、訳分かんないうちにヴォルザードに連れて来られちゃったんだし、連れて来た責任取って国分が……」

「いい加減にしろ!」


 八木が調子に乗ってペラペラと喋り出したところで、加藤先生がブチ切れました。


「何でもかんでも国分、国分、国分、国分……いつまで被害者面して他人に甘えているつもりだ! 貴様ら恥かしいとは思わんのか! 連れて来た責任だと? 八木、お前は確か最初の実戦に駆り出されて、オークの群れを見た騎士に見捨てられたんだったな? 国分が居なかったら、今頃はオークに食われ、消化され、糞になってたんじゃないのか?」


 加藤先生は、四十代後半で、頭も少々薄くなってきていますが、柔道の有段者だそうで、ガッシリとした体格をしています。

 その加藤先生が本気で怒鳴りちらしているのですから、ヘラヘラしていた八木も姿勢を改めて蒼ざめています。


「確かに国分は、お前らが羨むぐらいの魔術の才能を得た。だが、そのおかげで我々は助けられているんだぞ。感謝する事はあっても、責任取れなどとぬかすのは筋違いにも程がある。八木、そこまで責任取れと言うならば、俺が国分に責任持ってお前をラストックに送り届けるように言ってやる」

「ちょ……先生それは……」

「お前が、自分自身でリーゼンブルグの騎士共に掛け合って、賠償金をせしめて、一人で生きてみろ。それが出来ないならば、二度とそんな戯言を口にするな! だいたい貴様は文句言いながらも城壁工事に通ってただろう。ちょっと支援が受けられるようになったからと言って、楽しようとするな。国分に支援を打ち切らせるぞ」


 怒鳴られている同級生達には、どことなく不貞腐れたような空気を感じます。

 本人達としては、頑張ったつもりだけど上手くいかなかった……といった思いがあるのかもしれません。ただし八木は除く。


「とにかく、明日からは気持ちを入れ替えて、出来そうな仕事選んで、途中で放り出さずに頑張ってみろ」

「先生、明日は授業の日じゃないんですか?」

「ぬぅ、そうか……そうだったな。ならば明日は真面目に授業を受けて、明後日はギルドに行って仕事探すか、城壁の工事に参加するか、どちらにしてもダラダラしてるんじゃないぞ。分かったな」

「はーい……」

「ふぅ……よし、解散」


 加藤先生から解放された同級生達は、納得がいかないような表情で自分達の部屋へと引き上げていきました。


「まったく……少しは国分や浅川達を見習え……とは言っても、確かに城壁工事は辛いからな……」


 同級生達を見送った加藤先生は、首を回したり、肩を回したり、だいぶ疲れが溜まっているように見えます。


「先生、こんばんは」

「おぅ国分か、どうした手紙か?」

「はい、手紙も持って来たんですが、政府からの支援物資も預かって来ました」

「ほう、支援物資か……何を預かって来たんだ?」

「米とか、味噌とか、醤油とか……」

「おぉぉぉ……でかした国分! やっと、やっと白米と味噌汁にありつけるのか。おい、納豆は無いのか?」

「あーっ……納豆は無いですけど、海苔ならありますよ」

「そうか、次は納豆も頼むな」

「はい、伝えておきます。それで、物はここに出しちゃっても良いですかね?」

「そうだな、こっちに積んでくれるか?」

「はい、ザーエ、お願いできるかな?」

「畏まりました、王よ」


 ザーエ達が支援物資を積み上げ始めると、物音を聞きつけた同級生達が集まってきました。


「おい、あれ醤油じゃねぇの?」

「あっち、マヨネーズって書いてあんぞ!」

「おい、インスタントラーメンじゃねぇのか?」

「うぉぉぉ、あれカレーだろ? 間違いねぇよな?」


 みんな待ちきれないといった様子ですが、カレーもラーメンも調理しないと食べられないですよね。

 奪い合いとかにならないと良いのですが……


「先生、これは女子の分も一緒になっていますから、上手く分けて下さいね」

「分かった、国分、お前の所は良いのか?」

「あーっ……じゃあ、カレールーだけ貰っていきます。下宿の人に作ってあげようかと思うので」

「そうか、じゃあ必要なだけ持っていってくれ」


 取りあえず、カレールーを甘口と辛口、一箱ずつ貰っていく事にしました。


「よぉ国分、一緒に飯食おうぜ」

「うん、いいよ」


 先程の加藤先生とのやり取りを考えたら、声は掛けてこないだろうと思っていたら、いつも通りの軽い感じで八木が声を掛けてきました。

 神経が図太いのか、それとも何も考えていないのかは分かりませんが、こうした拘りの無いところは八木の良い所でもあります。


 宿舎を出て食堂へと向かう道すがらで切り出したのは、やはり先程の説教についてでした。


「また国分に頼り過ぎだとか説教食らっちまったよ」

「そうなの? てか、八木は仕事行ってないの?」

「んー……なんつーかさぁ、思い描いていた異世界と現実のギャップみたいな……?」

「要するに、やる気が出ない?」

「まぁ、そういう事だな。ダンジョンがあるとか聞いても、入れないんじゃ盛り上がらねぇだろう」


 愚痴ってくる八木は、本当にやる気が無さそうに見えます。

 まぁ、八木の場合はデフォルトで、やる気は無さそうですけどね。


「あー……まぁね。でも、今は極大発生の影響とかもあるから仕方無いじゃないの?」

「ダンジョンとかにも影響あんのか?」

「勿論あるよ。スカベンジャーって魔物が大量発生して人を襲っていたんだよ」

「何そのスカベンジャーって、どんな魔物なの?」

「普通の個体の大きさは30センチぐらい、上位種は倍とか三倍の大きさがあったね」

「30センチって、大した事ねぇじゃん。雑魚だろ雑魚。俺でも楽勝で倒せるぜ」


 八木は剣を抜いて振り回すようなジェスチャーをして、エア・スカベンジャーを滅多切りにして、剣を収める振りをしてみせました。


「数は全部で千八百匹以上いたけど、楽勝?」

「うぇぇぇ……千八百?」

「うん、それも足が十本ある巨大なゴキブリなんだけど」

「ぐぇぇぇぇぇ……無理無理、絶対無理、俺はダンジョンには行かないぞ!」

「まぁ、今回のはイレギュラーで普通の個体は死骸を漁るだけで、人は襲わないって話だけどね」

「いや、でもそんな巨大Gがウロチョロしている場所には行きたくねぇよ」

「でも、光ってる岩があったから持って帰って来たんだけど、鑑定してもらったら銀鉱石で、69万ヘルト……大体690万円ぐらいで売れたよ」

「はぁ? 何それ、てか、お前ダンジョンに行ったの?」

「うん、そのスカベンジャーの討伐でね。鉱石の方はオマケだね」

「何だよ、俺にも美味しい仕事を紹介しろよ」

「えぇぇ……だって今の八木じゃ討伐の仕事とか引き受けられないじゃん。せめてギルドの戦闘講習を受けて、単独でダンジョンに入れる許可がもらえるようになってからじゃないと無理だよ」

「講習かぁ……ぶっちゃけダルいんだよなぁ……」

「そう? でも、僕はマノンとは講習で知り合ったんだよねぇ……」

「そうだ、そんな事を言ってたよな。いやいや、騙されねぇぞ、前回講習に出て酷い目に遭ったんだからな。あの手加減しらない犬耳野郎、アホだろう」


 ほほう、八木でも学習はするみたいですねぇ。

 と言うか、よっぽどギリクに扱かれたみたいですね。


「でもさ八木、あの時は、こっちのメンバーしか参加してなかったんじゃないの?」

「ん? そうだな……そう言えば、新旧コンビと凸凹シスターズと俺だけだったな……」

「そこは抜け駆けしないとチャンスは回ってこないんじゃないの?」

「なにぃ……国分、貴様なんて的確なアドバイスしやがる。そうだよな、他の連中が一緒じゃチャンスが減るよな、そうかそうか……」

「あー……でも八木じゃ無理かなぁ……木剣の素振りが出来ないと水の曜日の講習は受けさせてもらえないし……次の講習まで四日ぐらいしかないもんね」

「馬鹿言ってんじゃねぇぞ。伊達に城壁工事で扱き使われてきた訳じゃねぇ。木剣の素振りぐらい楽勝だっつーの」


 ホントに八木って単純だよねぇ、駄目って言えば逆に食い付いて来るって思った通りだよ。


「そっか……じゃあ参加してみたら? 意外と可愛い子が参加してるかもよ。ほら、今は極大発生の影響で城壁の外に出られないし、その間に講習受けようって子も居るかもよ」

「国分……お前って奴は……可愛い子が居たら、魔物使いの知り合いだとか言っても良い? ほら、会話の糸口とか重要じゃんか」

「んー……駄目って言っても言うんでしょ? あんまり僕のイメージ悪くしないなら良いよ」

「おぉ国分健人、我が心の友よ……俺が可愛い子と仲良くなっても横取りするなよな」

「そんな事したら、委員長やマノンに何されるか……」

「おう、噂をすれば何とやらだぜ……邪魔者は消えるとするかねぇ……」


 食堂の前で委員長とマノンが手を振っているのを見て、珍しく気を利かせて八木は離れていきました。

 うん、ごめんね八木、水の曜日の講習は、いきなり素振りから始まって、すぐに立会いだから可愛い子と知り合うチャンスとか無いと思うけど……頑張って。


 委員長とマノンに歩み寄りながら、夕食の後で二人にレーゼさんからプロポーズを受けた話す決心しました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る