第107話 クラウスの見立て
カミラの執務室で魔王を演じた後、ヴォルザードに戻ってギルドに顔を出しました。
ヴォルザードには影響を及ぼさないつもりではいますが、馬鹿王子共の馬鹿騒ぎで思わぬ事態を招く可能性もありますので、一応クラウスさんの耳には入れておいた方が良いと思ったのです。
ギルドは朝の喧騒が終わり、のんびりとした時間が流れている感じです。
この時間、ドノバンさんは講習に参加しているはず……なんて思ってカウンターに足を向けると、僕を見つけたオットーさんに手招きされました。
「おはようございます、オットーさん」
「おはよう、この前は御馳走さんじゃった」
「いえ、オットーさんには、僕がヴォルザードに来た時から同級生の登録まで、色々とお世話になっていますから」
「うんうん、お前さんぐらいの歳で、そこまでの気遣いが出来るとは大したもんだ。まぁ三人も嫁を貰うには、その程度の事は出来んと駄目じゃろな」
「そうですね……頑張ります」
「ところで、今日は何の用事じゃ? ドノバンならば講習中じゃぞ」
「はい、ちょっとクラウスさんに報告に伺ったのですが……」
「うむ、二階にいらっしゃるから行ってくると良い」
「はい、そうさせていただきます」
カウンターの中で働いていらっしゃる皆さんに軽く頭を下げてから、階段に向って歩き出そうとした所でオットーさんに呼び止められました。
「おっと、そうじゃケント、忘れるところじゃった」
「はい? 何かありましたか」
「うむ、本部ギルドからギルドマスターが来るそうじゃ、目的は勿論お前さんじゃ」
「そうですか、僕からも伺いたい事があるんで良かったです。いつ頃お見えになるんですかね?」
「おそらく、今週中にはヴォルザードに到着するじゃろう。到着したら、アマンダの店に連絡するから来てくれるかな」
「はい、分かりました……あの、本部のギルドマスターって、二百五十歳を超えてるってクラウスさんが言ってましたけど、本当なんですか?」
「あぁ、そういう話は聞いた事があるが、ワシは直接会った事が無いから何とも言えんのぉ……まぁ、会えば分かるじゃろ」
「そうですね……」
ミューエルさんの師匠であるコーリーさんも、かなりの高齢のように見えますが、年齢を聞いた事が無いので、実際には何歳なのか分かりません。
たぶん本部のギルドマスターも、いかにも魔法使いといった風貌の……あれ? お爺さんなんでしょうかね、それともお婆さんなんでしょうか。
そんな事を考えながら歩いているうちに、クラウスさんの執務室の前に着いていました。
「誰だ?」
「ケントです、ちょっとよろしいでしょうか?」
「おう、入って来い」
ノックをしてお伺いを立てると、幾分棘を含んだ声が返ってきました。
「おはようございます。いつもながら突然すみません」
「まったくだ。この前は御馳走になったな……嫁入り前の娘と、親父の前でチュッチュしやがって……」
あぁ、機嫌が悪かったのは、夕食会での事をまだ根に持っていたんですね。
「すみませんでした。僕としてはリーチェの気持ちや行動を受け止めないといけないと思ったもので……」
「こいつ……いい性格してやがるじゃねぇか……」
「ありがとうございます。これもお義父さんのご指導のおかげです」
「ふんっ! それで、今朝は何の用だ、俺も暇じゃねぇからな」
いやいや、結構あちこちフラフラしているって噂は聞いてますよ。
「はい、リーゼンブルグの方で動きがありましたので、報告に来ました」
「ほう、ミノタウロスの群れが来たばかりなのに、また何か来やがったのか?」
「いえ、そのミノタウロスの一件をカミラが王都へ早馬で知らせたのを切っ掛けに、第一王子派、第二王子派の双方が動き始めたようです」
「ちっ、その馬鹿共は、本気で内戦をおっぱじめようってのか?」
「まだ確定ではありませんが、バステンが探ったところでは、その可能性が高いようです」
「戦場の予測は出来るか?」
「はい、これもバステンの予測ではありますが、カバサ峠が決戦場になる可能性が高いようです」
カバサ峠と聞いて、クラウスさんは少し顔を顰めました。
「ミノタウロスが、ヴォルザードではなくラストックに向った事からして、季節風の向きが変わってきているのは確かだな。その状況でカバサ峠なんかで流血の事態になったら……」
「はい、それについてはラインハルトも懸念しています。それと、国内で潰し合いをしている間に、バルシャニアが攻め込んでくる事も危惧しています」
「ほう、そこにまで目が届いていたか、さすが元騎士の眷属が居ると違うな」
「それで、ラインハルト達は最近のバルシャニアの状況が分かっていないのですが、リーゼンブルグに侵攻を仕掛けたりしてるんですか?」
「いや、最近は仕掛けて来ていないが、俺の生まれる何年か前には結構激しい戦いがあったそうだ」
「それ以後は、一度も侵略して来ていないのですか?」
「そうだな……俺の知る限りでは、そうした話は聞いていないが、行商人の噂では年々戦力を増強を続けているらしいぞ」
やはりクラウスさんは、バルシャニアに対してもアンテナを張っているようです。
「何だか一筋縄ではいかない国って感じがしますね」
「その通りだ。リーゼンブルグの王子がボンクラ揃いだと、あっさり国を乗っ取られても不思議じゃねぇし、そうなると次は……」
「ヴォルザードも他人事じゃないって訳ですね」
「バルシャニアは麻や綿花の栽培が盛んな国だ。これがどういう意味か分かるか?」
「織物とかの手工芸が盛んで……手先が器用とか?」
「勿論、それもあるが、もう一つの側面は……麻薬だ」
「あっ……」
クラウスさんの言葉を聞いて、真っ先に思い浮かべたのは、第二王子たちの乱行です。
「バルシャニア国内では、勿論麻薬の使用は禁じられているし、使えば死罪になるそうだが、国が裏で糸を引いて麻薬を生産しているという噂がある。当然リーゼンブルグでも麻薬の持ち込みは禁じているし、街道の国境では所持品の検査もあるが、抜け道を通って入り込んでいるらしいぞ」
「それって、リーゼンブルグの国内にばら撒いて、国を不安定にさせて、侵攻しようって魂胆なんですか?」
「その通りだ。そしてリーゼンブルグ西部の砂漠化だが、あれにもバルシャニアが一枚噛んでいるって噂がある」
「えぇぇ……本当ですか?」
「真偽のほどは分からんが、これからの季節のように西風が吹いている時に、砂嵐を後押しするように風属性の魔法を使わせている……なんて噂があるそうだ。もっとも、バルシャニアについての噂はそれこそ山のようにあるから、話半分で聞く程度が丁度いい」
「でも、その話半分……って感じになるようにバルシャニアが仕組んでいるとしたら……」
僕の問い掛けにクラウスさんは、ニヤリと満足気な笑みを浮かべました。
「いいぜケント、お前は異世界から来ただけあって、こっちの世界の常識に囚われていねぇ。こっちの世界の人間に、バルシャニアが攻めて来たって言えば、殆どの者は笑顔を浮かべて本気にしねぇ。それがバルシャニアの狙いだとすれば……リーゼンブルグという国が無くなって、魔の森の向こうはバルシャニアになるって事だ」
「それは、ヴォルザードにとって歓迎出来る事態じゃないですよね?」
「当然だ。いくら魔の森が間にあるとしても、隣国を侵略して大きくなろうとする国が出来る事は避けたい」
「でも、本当にバルシャニアはリーゼンブルグを攻めて来るんでしょうか?」
「さぁな、それはむしろ俺が聞きたいぐらいだ、どうせ探りを入れ始めてるんじゃねぇのか?」
「はい、今フレッドに行ってもらっています」
クラウスさんは、二度、三度と頷きながら、また満足そうな笑みを浮かべます。
「ヴォルザードで座っていながらバルシャニアの情報までも手に入れられる。いやはや、本当に味方に居てくれて助かるぜ、婿殿」
「もうヴォルザードは、僕が暮らす大切な街ですからね。出来る限りの事はするつもりです。でも、バルシャニアの狙いは何なんでしょう? そんなに領土を広げないといけない理由があるんですかね?」
「理由か……」
クラウスさんは、腕組みをすると暫く考えにふけりました。
「他国を侵略するような理由は、自分の国に無い物を得る事に尽きるだろう」
「バルシャニアに足りないもの……って事ですね?」
「そうなんだが、さっきも言った通り、バルシャニアは麻や綿花などの栽培が盛んな農業国でもあり、食料事情は悪くないはずだ。行商人達の噂を聞いても、極端な不作の年があったという話も無い」
「それじゃあ、リーゼンブルグに攻め入る理由は無いような気がしますけど」
「あるとしたら、バルシャニアの更に西の話だな」
「えっ、バルシャニアの更に西ですか?」
「ケント、バルシャニアの西にだって地面は広がってんだぜ」
クラウスさんの話では、ヴォルザードがあるのは大きな大陸の東寄りの場所で、北の高い峰を越えた先にも国があり、東にも別の国があり、バルシャニアの西には、更にいくつもの国があるそうです。
「バルシャニアの西には、山地を回り込むようにしてフェルシアーヌ皇国って国があり、その北西がキリア民国、南西がヨーゲセン帝国だ。このキリアとヨーゲセンの間で戦が起こっているらしい」
「その戦が、バルシャニアに影響を及ぼしているんですか?」
「バルシャニアの皇帝がキレ者だとしたら……だがな」
ヴォルザードの隣の、隣の、隣の、そのまた隣の国の話なんてなると、全然想像がつきませんよね。
「何だか、凄く遠い国の話みたいに感じるんですけど、そのキリアとヨーゲセンの戦いに何か原因になるような事があるんですよね?」
「キリアとヨーゲセンを比べると、キリアは四分の一ほどの大きさしかないし、その三分の一は山地の小さな国だ。一方のヨーゲセンは肥沃な土地を持つ農業国なんだが……戦はどうやらキリアが優位に進めているらしい」
「キリアが優位……それが、バルシャニアがリーゼンブルグを狙う理由なんでしょうか?」
「おぅ、ちゃんと忘れていなかったか。キリアが優位に立っている理由は二つある。一つは爆剤と呼ばれる物、もう一つが鉄だ」
クラウスさんは、僕に指を二本立てて見せた。
「爆剤……って何ですか?」
「爆剤については、俺も現物を見た訳じゃないが、噂では火属性の強力な魔術を誰でも使える薬剤だという話だ。現物はキリアの連中が秘匿しているんで表には出て来ないが、轟音、豪炎、暴風、人間がバラバラになって吹き飛ぶほどの威力があるって話だ」
「はぁ……火薬ですか……」
「なんだケント、爆剤を知ってるのか?」
「はい、詳しい製造方法を知ってる訳じゃないですけど、僕らの居た地球という星では、こちらの世界よりも戦のための道具が進歩している世界なんです」
「爆剤は、やはり危険なものなのか?」
「そうですね。僕らの世界と同じ経過を辿って進化するならば、魔術よりも強力な武器が生み出されていく事になるでしょうね」
火薬が火縄銃に使われるようになり、薬莢となり、拳銃、ライフル、マシンガンと進歩していった事、手榴弾、地雷、爆弾、ミサイルなどへと形を変えていった事を話すと、クラウスさんは口を半開きにして聞き入った後で、悪夢を振り払うかのように頭を振りました。
「そいつは、魔術が使えない人間にも使えるんだよな?」
「はい、そもそも僕らの世界には、魔術を使える人間は存在しませんから」
「て事は、詠唱も必要無いって事だな?」
「そうですね。詠唱は必要ないですけど、発明されたばかりだとすると、火薬の取扱いは色々と難しいと思われます」
「取扱いか……例えば、どんな感じだ?」
「火薬は瞬間的に燃える事で威力を発揮するんですが、当然火を近づければ必要無い所でも爆発しますし、静電気、乾燥している時にパチっと来る奴ですけど、あれでも爆発したりします。それに、火薬は水に濡れてしまうと爆発しなくなります」
「つまり、保管している場所に火矢を撃ち込まれでもしたら……」
「そういう事ですね」
またクラウスさんは腕組みをして考え込みました。
「だが、ケント、お前の世界では、その取扱いも楽になっているって事なんだよな?」
「そうですね。僕の国では一般の人は所持が禁じられていますけど、免許を得れば狩猟などに普通に使われています」
「万が一という時には、お前の居た国から、その武器を買う事は出来るか?」
「うーん……確か、外国への武器の販売は禁止されていたような……」
「それじゃあ、爆剤の製造方法を開示するってのはどうだ?」
「うーん……火薬は危険物なんで、詳しい製造方法とかは教えてもらえないと思います。ただ、一番基本的な火薬は炭と硫黄と……あれ、何だっけ、えーっと……火薬臭い……ガンスモーク……硝煙反応……そう、硝石! 炭、硫黄、硝石の混合物だったと思います」
「ケント、お前、よくそんな事を知ってやがるな」
「小説とか漫画とかに出てくるもんで……でも、純度とか配合とかが合わないと上手く爆発はしないと思いますよ」
「炭、硫黄、硝石か……もう少しキリアの様子を探ってからだが、必要ならば研究させるしかねぇな」
クラウスさんは、浮かない表情を浮かべていますが、領地を守る立場としては、必要とあらば対抗手段を持たないと駄目なんでしょうね。
「クラウスさん、火薬……爆剤については分かりましたが、鉄って、あの鉄ですよね?」
「あぁ、数年前にキリアで良質の鉄鉱石が出る鉱脈が見付かったそうだ。それで一気に鉄の生産量が上がっているらしい」
「その鉄を武器に使っているって事なんですか?」
「そういう事らしい。鉱脈が見付かった事で、生産する技術も上がっているらしく、様々な武器に使って威力や防御力を上げているらしい」
「火薬と鉄……バルシャニアはどうですかね。火薬の製法が秘密になっているとしたら、鉄ですか?」
「そうだな、バルシャニアに大きな鉱山があるという話は聞かないし、鉄などは交易に頼っているはずだ」
「あれっ? リーゼンブルグには鉱山がありましたよね?」
話を聞いてるうちに、頭の隅に何かが引っ掛かりました。
「おう、北東部の山間地、ガソに大きな鉱山があるぞ」
「そこの領主って……何とか辺境伯爵ですか?」
「カルヴァイン辺境伯爵だな。それが、どうかしたか?」
「バルシャニアは、国が裏で麻薬を取り扱ってたりするんですよね?」
「噂だが……ほぼ間違いはないな」
「それって、ファルザーラってやつですか?」
「ケント、そいつを何処で知った?」
ファルザーラの名前を出した途端、クラウスさんの表情が厳しく引き締まりました。
「ファルザーラは、リーゼンブルグの第二王子、ベルンストが取巻き共と一緒に使って乱行に及んでいたので、ラインハルトから名前を聞きました」
「ちっ、馬鹿王子が使ってやがるのかよ……」
「その取巻き達なんですけど……カルヴァイン辺境伯爵が差し向けた連中だと思います」
「何だと! それは間違いないのか?」
「人相の悪い連中で、とても騎士には見えませんでしたから、鉱山の荒くれ者から選ばれた連中かと……」
クラウスさんは、眉間に深い皺を寄せながら暫く考えに沈みました。
「ケント……」
「はい、何でしょう……」
「これは俺の勘だがな、カルヴァイン辺境伯爵とバルシャニアは裏で繋がってる可能性が高いな」
「でも、カルヴァイン辺境伯爵はリーゼンブルグの貴族ですよね。国を侵略されたら拙いんじゃないんですか?」
「領地や租税の割り合いを確約されれば、頭の上がリーゼンブルグだろうと、バルシャニアであろうと一緒だろう。いや……どさくさに紛れて、自分が上に立とうなんて考えてるのかもしれねぇぞ」
「叛乱って事ですか?」
「最悪の状況を考えれば、そうなるな。だが、バルシャニアにしてみれば、侵略が出来なかったとしても、自分達に都合良く動く人間を王に据えられれば充分だろうし、都合が悪くなったら消えてもらう体制を作っておきたいのかもしれんな。いずれにしても、カルヴァイン辺境伯爵は、ちょっと探っておいた方が良いな」
「リーゼンブルグが、かつて無いぐらい規模の大きな極大発生に襲われるかもしれないのに、どいつもこいつも自分の事しか考えてないのかよ」
ラインハルトを筆頭に、眷属のみんながラストックの防衛のために奮闘しているのに、肝心の王族や貴族が私腹を肥やす事にしか興味が無いなんて、本当に腹が立ってきます。
「ケント、まだ推測の段階で、そうと決まった訳じゃねぇぞ。それに、リーゼンブルグの王族に見切りを付けるのは、領民を守るためかもしれねぇしな」
「そうなんでしょうかね?」
「考えてもみろ、ここヴォルザードがあるランズヘルト共和国は、元々はリーゼンブルグだったんだぜ。それが今は独立しているのは、リーゼンブルグの王族どもに見切りを付けたからだろう」
「あっ……言われみれば、そうですよね。うーん……確かに、あの王族じゃ見切りを付けたくなるかも……」
国王は昼間から女性をはべらせて遊び呆けているし、王子達は王位継承にしか興味が無い状態では、貴族から見捨てられても仕方無いような気がします。
「だとすれば、カルヴァイン辺境伯爵がバルシャニアと裏で繋がっていたとしても、責められるべき行動とは限らないって事だ」
「なるほど……物事の善悪は、見る立場によって変わるって事ですか?」
「その通りだ。その上で俺達が考えるべきは、ヴォルザードにとって良い事か、それとも悪い事なのかだ。ケント、判断に迷う時は、自分の立ち位置をもう一度思い返してみろ。相手を思いやる気持ちは必要だが、究極の選択をしなければならない時もある。その時に自分の立ち位置を見失うなよ」
「はい、分かりました。僕が立つ場所は、ここヴォルザードです」
クラウスさんは、満足そうに二度、三度と頷きました。
「それにしても、カルヴァイン辺境伯爵は気になるな……少し探ってくれるか?」
「はい、バステンかフレッドに探ってもらいます」
「ありがたい、頼むな。それで……ケント、リーゼンブルグの馬鹿王子達の喧嘩は、どう収めるつもりだ? カバサ峠は、森を挟んではいるがヴォルザードからも遠くない。下手に争いが広がれば、命掛けで森を突っ切ろうとする難民が出かねないぞ」
クラウスさんとすれば、当然ヴォルザードへの影響は気になりますよね。
でも大丈夫で、心配なんか要りませんよ。
「はい、そっちは、僕と眷属のみんなで蹴散らしてやりますよ」
「ほう、ずいぶんと大きく出たじゃねぇか、相手は万単位の軍勢じゃねぇのか?」
「そうみたいですね。でも、僕らの敵じゃないですよ。きゃーん言わせてやります」
「おぅおぅ、随分と自信満々だけど大丈夫なのか? ヴォルザードとしても、今お前らを失うのは困るんだぜ」
「大丈夫ですよ。危ないと思った逃げて来ますから」
「ふはははは、いいぜ、それでいい。俺から言わせりゃリーゼンブルグの馬鹿王子共なんざ所詮は他人事だ。ヤバいと思ったらケツをまくって逃げて来い」
「はい、そうしますね」
状況が変わり次第また報告すると約束して、クラウスさんの執務室を後にしました。
うん、やっぱり現役バリバリの領主さんは頼りになりますね。
僕には学校の授業よりも勉強になる気がするのですが、授業サボっちゃ駄目ですかね。
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