第67話 自由への遠い道程
ゴトゴトとした振動と耳元で僕の名前を呼ぶ声で、意識が徐々に浮上してきました。
気を失う直前には猛烈な寒気を感じていましたが、今はポカポカと温もりを感じます。
「健人、健人、頑張って、死なないで、戻って来て……」
耳元で聞えている涙混じりの声は、委員長のものでしょう。
どうやら委員長に寄りかかるような形で抱き締められているようです。
お腹に当てられている委員長の手の平からは、治癒魔術が流れ込んで来ています。
そう言えば、後から刺されたから、背中も血でべったりなはずですよね。
「唯香……服が血で汚れちゃう……」
「バカ、バカ健人、服なんかより健人の方が大事に決まってるでしょう、バカ……」
委員長にギュっと抱き締められました。
あぁ、もうずっとこのままでいたいです、はい、駄目ですよね。
身体を起こす前に、目の前にある黒い腕輪に手を添えて解除しました。
「あっ……」
小さく驚きの声を洩らして、自由になった左腕を掲げた委員長を見て、周囲の同級生達がざわめき始めます。
「ちょ……唯香、腕輪が……」
「うそっ、委員長どうやって外したの?」
「マジ? 委員長、腕輪してないじゃん……」
委員長に手を借りながら身体を起こすと、軽く眩暈がしました。
傷は治ったものの、失った血液までは戻らないという事なのでしょう。
と言うか、足首の方まで流れた血が固まりかけていて、ニチャニチャと気持ち悪いですね。
「健人、無理しちゃ駄目だよ、まだ横になっていた方が……」
「えっと……ここはどの辺りなの?」
『魔の森に入ったばかり……でも追っ手の心配は無い……』
「フレッド、追っ手の心配が無いって、どういう意味?」
『跳ね橋を上げて……下ろせないように細工した……暫くは大丈夫』
「じゃあ、森の中央辺りで一度止めて。そこでみんなの腕輪を外すから……」
『了解……ザーエ達に伝える……』
気付くと馬車に乗ってる同級生達が怪訝な表情で僕を見ています。
「国分……お前、大丈夫か?」
「幻覚が見えてるとか……?」
「ヤバいって……まだ休んでろって……」
フレッドとの会話が独り言か、うわ言のように見えたのでしょう、思わず苦笑いしてしまいました。
委員長の隣を空けてもらって馬車の荷台に寄りかかりながら、これまでの経緯を簡単にクラスメイトに話しました。
「それじゃあ最初の5人も、2度目の50人も、全員生きてるんだな?」
「違う国かぁ……やっと異世界を満喫できるってか?」
「ゴメン……浮かれるのだけは勘弁してね」
先に救出した男子が騒動を起こし、現在は拘束されて強制労働をさせられている事を話すと、クラスメイト達は呆れ果てたように溜息を洩らしました。
でも、何にも言わなかったら君らも問題起こしてたんじゃないの……って思ったけど、口には出さずにおいたけどね。
担任の佐藤先生も頭を抱えていますね。
「それで、国分君、これからどうするつもり?」
「全員をヴォルザードに無事に送り届けて、それからカミラと交渉するつもりです」
「それは勿論、元の世界に戻るための交渉よね?」
「はい、それと持ち帰れるのであれば、賠償金のような形で貴金属などを取り立てようかと……」
「上手くいくかしらね?」
「分かりません。なにせ相手は、あのカミラですからね」
カミラの名前を出すと、同級生達は苦々しげな表情を浮かべました。
「国分、あのクソ王女はぶっ殺した方が良くねぇか?」
「いや、王女だけじゃないだろう、騎士共も皆殺しだろ」
「本当、あいつら絶対に許せないよ」
「55人は生きてるけど、船山は死んじまったんだろ? 仇を取ってやろうぜ」
一人から過激な意見が出ると、次々に賛同する意見が続きます。
みんなラストックの駐屯地での扱いは、腹に据えかねているようですね。
「てか国分、お前を刺した騎士はどうしたんだよ」
「えっ、気絶させて、縛り上げて、閉じ込めて来たけど……」
「えぇぇ……お前馬鹿じゃねぇの、串刺しにされたんだろう? 何でぶっ殺さないんだよ」
「うん、みんなの言いたい事は良く分かるんだけどね……」
現状ではカミラ以外に召喚、送還術の情報を持っている人間が居るのか確認が取れていない事や、交渉を円滑に進める為にも、極力流血の事態は避けてきた事、魔の森が活性化していて騎士が居なくなると街の人々が危険に晒される事などを話しました。
「うーん……交渉を円滑にって言うけど、逆に舐められるんじゃねぇの?」
「そうかなぁ……あれだけの事をされれば、いつでも殺せるのを殺さなかったって思わないかな」
「普通ならな……でも、あいつら普通じゃねぇじゃん」
「確かに……」
とにかく交渉を円滑に進める事を重視してきたんですけど、場合によっては逆効果になりかねないのでしょうかね。
「てかよぉ……そもそも、ちゃんと帰れるのか?」
「ゴメン、それも救出を優先してたんで、まだ分からないんだ」
「これからどうなっちゃうんだろう……」
思わず洩らしたという感じの女子の呟きに、馬車の空気が一気に沈んだ感じがしました。
「でも、ヴォルザードに行けば、まともな食事も出来るし温かい風呂にも入れるよ」
やっぱり食事と風呂の力は偉大だと感じますね、俯いていた同級生達が一気に顔を上げました。
「おぉぉ……マジか、やっと不味い飯から開放されんのか」
「お風呂……温かいお風呂に早く入りたいよ」
「あっ、ヤバい……作戦を前倒ししたの連絡してないや……」
「おぉぉぉい! まさか飯無いのか?」
「お風呂、ねぇ、お風呂は?」
「待って、待って……すぐ連絡するから、待って!」
飯と風呂が無いかもしれないと聞いた途端に詰め寄ってきたクラスメイトの迫力は、ロックオーガにも負けないくらいでしたよ。
「マルト、ドノバンさんに状況が変わって作戦を前倒ししたから、夕方までにはヴォルザードに同級生を連れて行くって伝えて来て」
「わふぅ、分かりました、ご主人様」
座った僕の足の間に、ひょこっと頭だけ出して答えたマルトに、クラスメイト達は目を丸くしていますね。
魔力の回復を助ける丸薬でドーピングして、自己治癒を掛けてたおかげで気分も良くなってきました。
「それじゃあ、順番に腕輪を外していくよ」
「おお、やった! これで本当の自由だ!」
クラスメイトの腕輪は馬車に乗っている間に外し、森の中央付近で止まった時に残り全員の腕輪も外しました。
「何だよ、魔の森とか脅かすから魔物がウジャウジャ出るかと思ってたよ」
「ホントホント、これなら普通の森と変わらないじゃん」
腕輪を外すのを待つ間、同級生達は森を見渡して拍子抜けしたような表情を見せていますが、魔物が少ないのはラインハルト達が掃討しておいてくれたからなんだよね。
「あんまり遠くに行かないでよ、この辺りには昨日サラマンダーが出たばっかりだからね」
「サラマンダーって……まさか火を吐くとか?」
「鷹山の魔術の数倍の威力で、無尽蔵かと思うほど吐き続けるってよ」
「マジかよ……そんなの居るのかよ……」
全員の隷属の腕輪を外し終えると、みんな心の底から解放された気持ちになるようで、一行の空気も穏やかになった気がします。
後はヴォルザードへ無事に到着出来れば、一安心です。
ザーエ達の脚力ならば、昼ちょい過ぎには到着出来そうです。
全員の隷属の腕輪を外し終えたので、再びヴォルザードを目指して馬車を進めます。
ラインハルト達が道を整えてくれたおかげで、大きな振動も無く馬車はスムーズに進んで行きます。
出発して少し経った頃、ラストックの監視に残しておいたハルトが報告に来ました。
「ご主人様、あいつら起き始めたよ」
「了解、フレッド、ちょっと見て来て」
『了解……』
一番最初に眠らせたのはカミラ達なので、恐らくもう起きて対策を講じ始めるはずです。
「国分、大丈夫なのか? 追っ手とか……」
「うーん……たぶん大丈夫だと思うよ。もう森の半分は過ぎてヴォルザードの方が近いからね」
「それなら良いけど、もし連れ戻されたら……ねぇ」
「それだけは無いようにしないとね。でも、日本に戻るには送還魔法を使わせなきゃいけないし、その送還魔法が正しいものなのか、どうやって確かめるかとか……まだ考えなきゃいけない事がたくさんありそうだよ」
同級生達の奪還には、ほぼ成功したけど課題が無くなった訳じゃありません。
その事実を突きつけられた同級生達は、一様に考え込んでしまいましたね。
それを見て口を開いたのは、担任の佐藤先生でした。
「国分君、これまで本当にご苦労様でした。ここまでの計画を実行に移すには膨大な準備が必要だったでしょうし、たくさんの苦労があったと思います。ありがとう、改めてお礼を言うわ、ありがとう」
「先生……」
「国分、ありがとう、マジで俺駄目かと思ってた……」
「私も、本当に死んじゃうかと思ってた、ありがとう」
「マジで助かった、もう一生恩に着るぜ、サンキューな」
「みんな……」
みんなから面と向かってお礼を言われて、ポンコツ扱いだった自分がやっと認められたような気して胸が熱くなりました。
「健人は、ずっと、ずーっと私を影から支えてくれていたんだよ、ありがとう健人」
「唯香……」
委員長からは、お礼と一緒に頬にキスを贈られて、一瞬静まり返った馬車が次の瞬間には様々な叫び声に包まれました。
「えぇぇぇ……い、委員長!」
「きゃぁぁぁ、さっきから名前で呼び合って怪しいと思ってたけど……」
「待て待て待て、助けてもらった事には感謝するけど、聞いてないぞ国分!」
「そうだ、俺は認めん! いや、俺らは認めんぞぉぉぉ!」
男子の怨嗟の叫び、女子の冷やかす声、殺意のこもった視線、生暖かい視線、色んなものが降り注いで来ても委員長は、我関せずとばかりに僕の左腕を抱え込んで、離れようという気はサラサラに無いようです。
こんな状況は、日本に居た頃の鷹山にだって無かった事で、ちょっとした優越感に浸ってしまうと同時に、このままヴォルザードに着いた後の事を考えると胃が痛くなってきました。
『ケント様……カミラは大荒れ……でも追撃は無し……』
『分かった、今後の対応策とかも探ってみて……』
『了解……ケント様……ハーレムは目前……』
『ぐぅ、血の雨じゃないと良いんだけど……』
フレッドが探った所では、カミラに追撃を進言した者もいたそうです。
ですが、何しろ体制も整っていなければ、相手が誰でどれほどの規模かも分からなければ追撃の規模も決められず、結局は断念する事になったようです。
これで追っ手の心配は完全に無くなり、後はヴォルザードまで行くだけです。
つまりはマノンと委員長の直接対決の時が、刻一刻と迫っている訳で……ホント胃が痛いです。
「国分君……良いかしら?」
「は、はい、何でしょう先生」
「これまでは、あなた一人に負担を掛けてきたけど、これからは私達も力になるから、何かする時には相談なさい」
「はい、よろしくお願いします」
これまでも、ラインハルト達や、クラウスさんにドノバンさんなど相談出来る人は居ましたが、僕らの実情を把握している大人がいなかったので、肩の荷が軽くなった気がします。
ヴォルザードに着いて、みんなが暮らしていけるように手配をすれば、少しはゆっくり出来るかもしれません。
パウルに刺された以外は思った以上に順調に作戦が進み、もう少し進めばヴォルザードの城壁が見えてくるだろうと思っていた時でした。
ヴォルザードに残しておいたヘルトが、馬車に飛び込んできました。
「ご主人様、大変です! ゴブリンの大群がヴォルザードに近付いています」
「大群って、まさか……」
「はい、ぱっと見ただけで千匹以上は居ると思います」
「ミルト、フレッドを呼んで来て、ムルトはアマンダさんの店の警護に行って、ラインハルト、先に戻って少しでも食い止めて!」
「分かった!」
「行ってくる!」
『了解ですぞ!』
まさか、このタイミングで極大発生した魔物が来るなんて思ってもみませんでした。
「アルト! ザーエ達に急ぐように伝えて、コボルトのみんなには車列を囲んで守らせて!」
「分かりました、ご主人様!」
アルトが飛び出して行くと、車列のスピードが上がりました。
『ケント様……お呼びですか……』
「フレッド、ゴブリンの極大発生がヴォルザードに近付いているんだ、先行して街を守りながら、僕らが門に近づけるようにして」
『了解……お任せを……』
僕らが乗っている馬車は、先頭から四台目の位置を進んでいるので、街道の先が見渡せません。
「カーメ、ゴブリンの群れは見える?」
「王よ、右前方です」
「えっ……あれって森の下草じゃ……」
「違います、凄い数です……」
御者台の後ろから伸び上がるようにして見やると、木立の根本を埋め尽くすように深緑の物体が蠢いています。
とても千や二千の数とは思えません。
それでさえも森に遮られていて、見えているのは一部に過ぎないでしょう。
他の馬車でもゴブリンの群れに気づいた人が居るらしく、前方からは悲鳴が聞こえてきます。
「マルト、他の馬車のみんなに、しっかり掴まっているように言って回って」
「分かりました、ご主人様」
マルトが飛び出して行った少し後には、車列は更に速度を上げました。
「ケント様、街道が塞がれそうです!」
「ミルト、ラインハルトを呼び戻して街道のゴブリンを薙ぎ払わせて!」
「分かりました、ご主人様」
ザーエ達が速度を速めましたが、ヴォルザードとの間にゴブリンの群れに入り込まれてしまったようです。
「ご主人様、言って来たよ」
「マルト、先頭を引いてるのは誰?」
「先頭は、ザーエだよ」
「少し速度を落とすように言って、今の速度でゴブリンの死体とかに乗り上げると、馬車が引っくり返る心配があるからって」
「分かった、言って来る」
マルトが伝令に出た直後、車列はガクンと速度を落としました。
速度が落ちた事で、前方の馬車からまた悲鳴が上がりました。
悲鳴に混じって、遠くから早鐘の音が風に乗って聞えてきます。
もうヴォルザードまでは、残り僅かな距離のはずですが、委員長も青い顔をしています。
「健人、大丈夫なの?」
「ゴメン、正直に言って分からない。ただ、城壁の外に居たら状況は悪くなる一方だと思うから、群れを突っ切ってでもヴォルザードに辿り着く」
「ご主人様、群れにぶつかるよ、前はラインハルトが薙ぎ払ってる!」
「分かった、アルト、横と後、突破されないように固めて」
「了解です、ご主人様」
前方から、どがぁ! ぐしゃ! っと凄まじい衝突音が聞えたかと思うと、車列の横にも深緑の波が押し寄せて来ました。
アルト達が黒い旋風のように動き回ると、鮮血が舞い深緑の壁が崩れるのですが、直ぐに後に居るゴブリンが近付いて来ます。
「ギギィィィ、ギギギャギャァァ!」
「グギャグギャァァァ、ギピィィィ……」
興奮したゴブリン達の叫び声が、地鳴りの如く響いて来て、精神的に圧迫されます。
「いやぁぁぁぁ、死にたくない、死にたくない!」
「助けてくれ、食われるのは嫌だ!」
「駄目だよ、あんな数……もう終わりだよ……」
前方の馬車からも、後方の馬車からも悲鳴が聞こえて来ます。
今の所は取り付かれてはいないはずですが、どこかの馬車に取り付かれても確認出来そうもありません。
車列は更に速度を落として、いまやジョギングをするぐらいの速度になってしまっていますが、それでもまだ止まってはいません。
僕も光属性の攻撃魔術を打ち込んでいますが、焼け石に水鉄砲で水を掛けている気分です。
「壁だ! 街が見えるぞ!」
「おーい。おーい、助けてくれぇぇぇ!」
前から聞えた声に促されて目線を上げると、確かに木立の向こうにヴォルザードの城壁が見えます。
「先生! ちょっと出て来ますから、みんなを纏めていて下さい」
「ちょっと国分君、何処に行くつもりなの?」
「道を作って来ます」
馬車から影の世界に潜って、一気に先頭まで移動します。
車列の先頭では、ラインハルトが愛剣グラムを振るっていますが、薙ぎ払ったそばからゴブリンが押し寄せて来てしまいます。
そこで、ラインハルトが薙ぎ払ったタイミングに合わせて、闇の盾を道の両側に立ててゴブリンの侵入を防ぎました。
『ケント様!』
『ラインハルト、進んで、前へ!』
『了解ですぞ、ぬぉぉぉぉぉ!』
道が確保出来た事で、車列の速度が上がりました。
車列が通りすぎた後は、街道を閉ざすように闇の盾を出し、後方から襲われるのを防ぎます。
アルト達は自由に盾を通り抜けられるので、外に取り残される形になっても大丈夫です。
速度を上げた車列が森を抜けると、森と城壁との間にはゴブリンが溢れ返っていました。
ヴォルザードに迫ったゴブリンは、城壁の上から攻撃を受けて倒されるのですが、後続のゴブリン共は仲間の死骸を貪るために押し寄せて来ます。
これだけの数のゴブリンが移動すれば、当然食料は不足するのでしょう。
そこへ血の匂いがすれば、その肉が仲間であったものでも気にもしないようです。
ゴブリン共の叫び声、肉を貪り骨を齧る音、辺りに立ち込める濃密な血の匂い、阿鼻叫喚の地獄絵図のようです。
森を出ると周囲からの圧力が強まり、ラインハルトが薙ぎ払い、僕が闇の盾で壁を築いても、思うように進んでいけません。
広範囲に闇の盾を展開しているせいなのか、それとも腹を刺された影響か、魔力が底を尽きそうな感じです。
もうヴォルザードは目の前なのに、あと一手が足りない感じです。
このまま闇の盾を解除したら、下手をすればゴブリンの群れに飲み込まれてしまうかもしれません。
もうコーリーさんから貰ったブースターを使うしかないと思った時でした。
車列と城壁の間を埋めるゴブリンの群れの真ん中で、火球が炸裂しました。
その後も、風の刃が、水の槍が次々と降り注いできます。
城壁の上には、鷹山を始めとした同級生達が立ち並び、切れ間無く攻撃魔術を撃ち込んでいました。
でも、このままでは車列が前に進めません。
闇の盾を維持したままで、城壁の上へと移動しました。
「近藤! 街道の脇を狙って撃って、今のままだと前に進めない!」
「国分か! 分かった、みんな聞いたか、街道の両側を狙ってくれ! 1班撃て! 2班は詠唱!」
街道の両脇からの圧力が減ったので、ラインハルトが前さえ薙ぎ払えば進めます。
城門の前ではフレッドが奮戦し、ゴブリンの接近を食い止めています。
「ザーエ、後の馬車が入れるように門の左側に止めて!」
「心得ましたぞ、王よ!」
この状況で城門を開ける訳にはいかないでしょうから、街に入るには通用口を通るしかありません。
ラインハルトが辿り着いたところで、門前を半円形に闇の盾で取り囲みました。
「アルト、盾の中に残ったゴブリンを残さず始末して!」
「分かりました、ご主人様」
先頭の馬車に続いて、次々に馬車が走りこんで来ます。
フレッドとアルト達の活躍で、盾の内側に取り残されていたゴブリン達は、瞬く間に掃討されました。
そのタイミングを城壁の上から見計らっていたのか、通用口が開いて守備隊のバートさんが顔を出しました。
「こっちだ! 早く門の中へ入れ! 急げ、急げ、急げ!」
馬車を飛び降りた同級生達は、我先にと城壁の中へと駆け込んで行きます。
全員がヴォルザードに入ったのを確認し、通用口が固く閉ざされたのを見て、門前を囲んだ闇の盾を消しました。
ヴォルザードには辿り着けましたが、盾を消した途端にゴブリン達が押し寄せて来ました。
生き残るためには、この深緑色の津波を何とかしなければなりません。
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