第二話 旗を揚げなければ人は来ず。

…ホァン…ホァン…ホァン…ホァン… ……

 転生が出来たようだ。ただ、まだ魂の状態でプカプカ浮いている。自分だけでなく、沢山のをした魂いる。場所は入り組んだ洞窟の部屋の一つ。下にはがお腹に赤ちゃんを宿しているのが視える。(…前世の常識が間違っていることが、ここでよく分かる。)この女性達の中から自分が生まれるための鬼の体を探すのだ。


 女性達は出産を待っているが、陣痛はなさそうだ。数はざっと数十人、一学級分はいる。女性達の周りには藁の布団と食事の用意もされている。


 見つけた!私の魂の波長に合った妊婦さんとその胎児がいた。近くに行くと、吸い寄せられるように胎児の身体へ入る。そして直ぐに、ボヨンと母親の身体から眩く光る世界へ出て、藁の布団の上に乗る。まだ意識はハッキリしないが、私は鬼の子として産まれたことは理解が出来る。


 これで晴れて鬼となったのだ。…流石に鬼の子。どうやら既に人間とは違うようだ。なるんとなく思考が出来る。か細いながらも体が立ちそうだ。


 フラフラしながら立ち上がり周りを見渡すと、なんと母親がもう近くにはいなった。なんとなく本能で分かる。これは育児放棄ではない。鬼は生まれながらにして狩りを行うのだ。用意された食事も母親達の産後の食事ではなく、子ども達の狩り前のものの様だ。とりあえず、藁の布団で身を包み、用意された食事をする。


 見渡すと、もう鬼の子は全員産まれたようだ。たが、まだ意識がハッキリしておらず、まだ状況を理解するまで時間がかかりそうだ。母親達は全員いない。私は前世の記憶や経験を保有してるために、理解するまでの時間を必要としなかったようだ。私はこの集団の中で一足先に行くために、体を鍛えは始めた。そして、今食べたばかりの食事がもう、体の一部となっていくのを感じる。


 こうしてみると子ども達の身体の色が多様だ。単色もいれば、多色・模様入りまでいる。遺伝か?魂の色も関係しそうだ。私は黒に近い灰色で、黒の線や模様がある。派手では無いが、格好良く好みの色だ。そして体の大きさは、人間の大きさにして大体3〜4歳程度はありそうだ。いわゆる西洋でいうゴブリンだろう。


 そうこうしてるうちに、もう子ども達の意識はハッキリしてきたようだ。


 「ヴァー…ファー…あー…。えー。皆!聞いてくれ」


 この声で一斉に私に注目しどよめく。皆が理解して活動を始める前に主導してまとめるのだ。


 「これから狩りに行かなくてはならない。分かるか?狩りだ。まずは、藁の布団で身を包んむんだ。」


 その掛け声で子ども達は理解をし、藁の服を着る。乱暴だが、本能が備わっているため言えば行動できるようだ。そして私に注目する。もうこの集団での中心は私で決まりのようだ。

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