救世主

 瞬間接着剤とは、対象物を瞬間的に接着する接着剤である。代表的な瞬間接着剤としては、有機化合物のシアノアクリレートを主成分としたシアノアクリレート系瞬間接着剤がある。

 シアノアクリレート系瞬間接着剤は、対象物の片面に点状に付け、もう片方の対象物に押し付け広げられるとすぐに、空気中などの水分に瞬間的に反応して硬化し接着する。さらっとした水状のものや、ゼリー状のものがある。

 シアノアクリレートは一般にはモノマーの状態であり、水のような粘性の低い液体であるが、接着するものに付着しているほんのわずかな水分によってシアノアクリレートが瞬間的に重合を開始し、ポリマーとなって一瞬で接着される。汎用品も金属用品も主成分はシアノアクリレート100%と記されているが、実際には1%に満たない各種成分が添加されており、これが用途別の特性を生み出している。また、接着時に硬化促進剤(主成分はトルイジン)を使用することで通常よりも短時間で強力に接着することができる。


 Wikipediaで何でも調べるタイプの俺は、この世界に転生する前、まさに100円ショップに行く前に、Wikipediaでこの記事を調べて出力し、読みながら店に向かっていたのだった。長旅の中、ポケットに入れっぱなしにしていたのでボロボロになってはいたが、まだ読める。

 瞬間接着剤を大量に作って噴射できるようにして、そのケルナイとかいいう化け物どもにブシャーっとやれば、勝てるんではないのか。

 と、おれはじいさんに聞いてみた。じいさんは、「シュンカンセッチャクザイ?」という顔をしているので、おれは実際その物をポケットから出して、そこいらに置いてあった木材に接着剤を塗ってくっつけて浮かせてぶんぶん振り回していかに接着剤が強固な粘着力を持ちそれが武器になり得るかをみんなに見せた。

 一斉に村人全員が拍手喝采をした。

 「使徒だ。神の使徒だ!」

 「何という英知!」

 「大賢人の目に狂いはなかった!」

 「父よ、母よ、妹よ!」

 またそうやってほめる。そういうことされるとこっちもいい気になってしまう。ありがとうありがとうありがとう。

 すると、エルマが俺に問うてきた。

 「して、あなた様の御名は」

 「あー、えー。うーん。えーと。あ! あれあれ。あれ。私の名前は、アロン。アロン・アルファーという」

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