ウンジャラホゲーッ!
「ウンジャラホゲーッ!」
まったく何を言っているのかわからない。俺も「何が何だかわかりません」「アイドンノー」などと言ってみたが、向こうにしてみたら、俺も「ウンジャラホゲーッ!」としか聞こえないだろう。だから言葉は大切なのだ。
ただ、ジェスチャーによって、俺は腹が減っていること、ここがどこかわからないこと、助けてほしいことは伝えることができた。原始的な作りのテントの前で焚き火をして料理を作っていたじいさんは、俺に何だかよくわからない材料が入った汁物の碗を出してくれた。
何にせよ食べないよりかは食べた方がいい。うまくもまずくもない。というのも、俺は生粋の日本人。出汁文化に慣れすぎているので、出汁っ気がない料理は何を食べても「ウンジャラホゲーッ!」なのである。
食事をご馳走になってありがたく、その気持ちを伝えたいと、頭を深々と下げながら俺は「ごちそうさまでした」とじいさんに言ったが、これもウンジャラ語になってしまうのだろうから深いことは考えない。
じいさんは手招きをして、俺をテントに入れてくれた、狭いテントでじいさんと2人きりで寝ることになったが、やはり夜になって寒くなってきた野外で寝ることにならなくてよかった。
翌朝起きると、また空に2つの天体が浮かんでいた。よく見ると1つは橙色と茶色の並々の模様で、もうひとつは煌々と輝いている。そちらが太陽で、もうひとつは惑星か衛星か何かなのかと見当をつけて今日はどうするかと思っていると、じいさんがウンジャラ語で何か伝えようとしてきた。
おれはさっぱりわからないので、わかったような顔だけしてふんふんうなずいていたら、じいさんはテントをたたみ始めたので、俺もそれを手伝った。
そして、荷物の整理が終わると、俺とじいさんはわけて荷物を持ち、旅立つことにしたのである。どこに行くのか、俺はさっぱりわからないままで。
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