第5話 パンツ交換
豪華な桐のデスクに革製のデラックスチェア。本棚にシンクがあって、棚にはティーセットが並んでいる。鉢植えの観葉植物もある社長室の様な部屋で、昼休みの今は郁斗と翠の二人しかいない。
翠が手慣れた調子でドアの鍵をかける。
立っている郁斗の前まで戻ってきて、
「はい。パンツ交換の時間です」
目を細めて楽しそうにそう告げてきた。
郁斗はしぶしぶ恒例行事となっている使用済みパンツの提供の為、翠が後ろを向いている間にパンツを脱いで渡した。
と――
翠が自分のスカート内に両手を突っ込んで、自分のパンツを脱いで郁斗の前に差し出してきた。
「はっ?」
いつもにはない謎の行動。いやらしいというより、不審さが勝る。
翠は何故か顔を赤らめて荒い息で興奮気味だ。
「はい」
にこやかな笑みで卑猥なブツを差し出してくる。
「で? 俺にどうしろと?」
「はいてみて」
「………………」
「私の使用済みパンツ、はいてみて。郁斗が私のパンツでドキドキになって興奮しているとこ、見たいの」
「俺がはくと思うか?」
「うん」
にっこりと微笑んできた。
「郁斗、もうずいぶん私と付き合って、私色に染まってきたもの。もう私にメロメロになっていい頃だもの」
「断る」
はっきりと断言した。が、
「ドキドキ」
「なにがドキドキだっ! 今度という今度は愛想が尽きた。別れるっ!」
翠がむすっとした顔を見せた。後、
「お願い……だから……」
すがるような瞳を向けてきた。
「そんな顔してもダメだ。顔だけいじらしく見せても頼んでいることは変質者のそれだ。俺はもうこれ以上お前色に染まりたくない」
「これ以上のことは頼まないから。パンツももう毎日くれなくていいから。だから……私のパンツ、一度だけ試してみて」
「………………」
これ以上の事を頼まれないというのは僥倖だった。
毎日パンツを渡さなくてもよくなるらしい。
だが、流石に翠のパンツを履くという行為は躊躇われた。
「……俺がコレを履いたとして、お前は下着、どうすんだ?」
試しにちょっとつついてみた。
「大丈夫」
翠はそういうと郁斗のパンツに足を通し、目の前でスカートの下から引き上げる。
「はい。私、午後の授業はこれで過ごすから。ノーパンじゃないから。露出狂の変態じゃないから」
翠はスカートをまくり上げて、男子パンツを履いている自分をアピールした。
後――
「ああっ……」
翠が感極まったという様子でよろよろと床に手を着いた。
「郁斗の目の前で郁斗のパンツ履いてるの、自宅で履くのと全然違う」
「自宅で履いてんのかよっ!」
「はい。次は郁斗の番」
「はいじゃねーよっ!」
「ドキドキ」
「ドキドキじゃねーよっ!」
郁斗は舌打ちをした。
「これで最後だ。これ以上は付き合わないからな」
言ってから翠が立ち上がって後ろを向いている間に、翠の真っ白な使用済みショーツを履いて制服のズボンを上げた。
「どう? 興奮する? たかぶる?」
翠が目を輝かせて顔を近づけてくる。
物凄くわくわくして興味津々という様子だ。
「股間、すっごい大きくなってる」
「仕方ねーだろっ。生理現象だ」
「興奮するでしょ? ドキドキでしょ?」
「しねーよ。すっげーきついんだよっ! 食い込んでいてーよ」
「我慢できないなら今すぐトイレに駆け込んで一発済ませてもいいのよ? 我慢しないで」
「やらねえよ。股間のあたり濡れてて気持ちわりーんだよ」
「すっごく失礼ねっ! そこはすごく興奮するって答える所よっ!」
翠がぷんすかと頬を膨らませる。
「俺……このままで午後の授業を過ごすのか?」
「もちろん」
翠は即答してきた。
「ああ……。このまま廊下を歩いたり教室で何食わぬ顔をしたりしてクラスメイトとおしゃべりするなんて……」
翠が夢見心地の表情を浮かべ――
郁斗は天を仰いで途方に暮れた。
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