第3話 春香
春香がお弁当を作ってきた日の二日後。
郁斗が朝教室にやってきて机に座ると、中に手紙が入っていた。
香水だろうか。いい芳香がするもので、封筒の中に「昼休み、保健室で待ってます」という春香からのメッセージが添えてあった。
ひとまず翠に見つからないように鞄にしまう。
どうしようか迷っているうちに昼休みになった。
無視するわけにはいかなかった。
翠には図書館で本を探してくると言い訳して教室を出た。
春香の思惑がわからないまま廊下を進んで階段を降り、一階の保健室にたどり着き中に入る。
正面に机。
左手に棚。
右手にベッドが二つ並んでいる真っ白な部屋。
その机の前に、ショートカットヘアの青い制服の後ろ姿があった。
他に人気はない。
その後ろ姿が振り向いた。
柔らかな表情をした吉野春香の正面が視界に入る。
「待っていました」
春香が女の子っぽい優しい旋律を奏でる。
続いて春香はリボンを取った。
「郁斗君。見て」
言葉にすると春香はブレザーを脱ぎ、その下の白いブラウスに手をかける。
「ちょ、ちょっと待て!」
郁斗が声を上げるが、
「黙って見て」
強くはないが有無は言わせないという口調で春香はブラウスのボタンを一つ、一つと、外してゆく。
春香が顔を染めながら横を向き、ブラウスを脱ぎ捨てる。
白いブラジャーに覆われた形良い胸が露になった。
続けて春香はスカートのホックに手をかける。
ストンと青のミニスカートを下に落とした。
真っ白なショーツ。
生まれたままの姿に上下の白い下着だけをまとった、少女の姿がそこにあった。
春香が腕で身体を抱くようにしながら、羞恥に頬を赤く染めている。
「私……魅力ない?」
郁斗は目が離せなかった。
見てはいけないと思いながらも、心臓を撃ち抜かれたように見つめてしまっていた。
「郁斗君……きっと白が好きだと思ったから、上下白にしたの。本当は……物凄い恥ずかしいの。それでも見て欲しくて……。勇気、出しました」
春香が壮絶な微笑を浮かべる。
「郁斗君。私を抱いて。私の初めての人になって。郁斗君には高瀬さんがいるけど、そんなのぜんぜん構わない。遊びでいいから、私の事抱いてほしいの」
想像だにしていなかった言葉だった。
突然で、突拍子もない行動だとは思う。
だが逆らいきれない威力があった。
春香が駆け寄って郁斗の胸に飛び込んできた。
下からすがるような瞳で見つめてくる。
流されそうになる。
欲望を抑えきれない。
春香の口が近づいて。
甘い息の匂いが鼻孔から脳内に流れ込んできて。
唇が重なる……
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